Cloverfield


2008年4月5日(土)「クローバーフィールド HAKAISHA」

CLOVERFIELD・2008・米・1時間25分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(HDTV、Panasonic、Sonyほか)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://www.04-05.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

かつてセントラル・パークと呼ばれていたところで回収されたビデオ・テープ、暗号名「クローバーフィールド」の映像。それは6月27日に起きた事件を、朝から最後までずっと収めていた。その日、ロブ(マイケル・スタール=デヴィッド)は副社長に昇進し、日本に行くことになったお祝いのパーティが行われようとしていた。弟のジェイソン(マイク・ヴォーゲル)は、その様子を収めるため、ビデオ・カメラを友人のハッド(T・J・ミラー)に任せる。ところが、パーティが盛り上がった時、摩天楼のビル街で爆発が起こり、一帯の電気が消える。全市民がマンハッタン島から脱出する中、ロブは恋人のベス(オデット・ユーストマン)を救うため、中心部を目指す。

73点

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 臨場感はスゴイ。じわじわくる恐ろしさ。自分も一緒に逃げているような気になる。ただし、全編手持ちカメラで、しかもシロートが撮ったという設定なので、画面揺れまくり。軽いめまい状態になる。この点ではスクリーンは小さい方が良い。

 そしてシロート撮り風で85分は長過ぎる。カメラを持っているものが倒れて、揺れが止まるとホッとするほど。また、ストーリーがほとんどない。設定上もかつてセントラル・パークと呼ばれていたところで回収されたビデオ・テープということになっているので、ある事件のごく一部を切り取ったにすぎない。どうしてそうなったかとか、その後どうなったかなどは一切描かれていないし、事件に対する分析も解釈も説明も全くない。それで、ここまで見せるのだから、スゴイといえばスゴイ。

 あえてたとえるなら、「9.11事件」+「ハリウッド版ゴジラ」の一部を「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」風に切り取ったもの、という感じ。こちらはちゃんと事件は起きるし、とんでないモンスターが現われるし、かなりお金もかかっている。お金を払って見る価値はある。納得できるかどうかは別として、ハラハラ、ドキドキはする。結末は、好き嫌いは別れるだろうが、予想がつく。ただ、ここで終るか!?

 SFXもスゴク、揺れまくるカメラにも関わらず、非常にリアルに合成されている。まさにその場にいたかのようで、実際に起きたかのよう。そして、このモンスター、雰囲気が「新世紀エヴァンゲリオン」の使徒のよう。目的もわからないし、どこから来たかもわからないし、ただ殺戮するだけ。参考にしているのではないだろうか。

 プロデューサーは人気TVドラマ「エイリアス」や「LOST」のクリエーター、J・J・エイブラムス。古くはメル・キブソンが50年後に目覚めるという「フォーエヴァー・ヤング/時を越えた告白」(Forever Young・1992・米)や、いろいろと話題にはなったマイケル・ベイのSFアクション「アルマゲドン」(Armageddon・1998・米)の脚本を書いた人。とても企画が面白い人ではないだろうか。

 監督はマット・リーヴス。TVドラマ「フェリシティり青春」シリーズの脚本家で、監督としてもプロデューサーとしても基本的にはこれまでTVで活躍していたらしい。ドキュメンタリー・タッチを重視し過ぎているため、演出というのを感じることは出来なかったが、すべては作り物で、この臨場感だから、演出はうまいのかも。今後の作品を見ないと何ともわからない。

 脚本はドリュー・ゴダード。やはり「エイリアス」や「LOST」のブロデューサーで、脚本も手がけている。他に脚本家としては吸血鬼ハンターのTVドラマ「バフィ〜恋する十字架〜」(1997〜2003)や、そのスピンオフTVドラマ「エンジェル」(2003〜2004)も手がけている。アクション系が得意の人らしい。

 出演者は、ほとんどスターがいない。たぶんドキュメンタリー・タッチで作っているから、それを活かしたかったのだろう。予算のほとんどはリアルなSFXに使われているのかもしれない。ほぼTVドラマで活躍していた人。たぶんどの人も日本ではほとんど知られていないのでは。本作のアメリカでの評価が高かったようなので、これからどんどんスクリーンに登場するかも。

 中で目立っていたのは、ロブの恋人ベス役のオデット・ユーストマンか。美女好きのマイケル・ベイ監督の「トランスフォーマー」(Transformers・2007・米)にちょい役で出ていたらしい。

 ドキュメンタリー・タッチの割に音響はスゴイ。デジタルの高音質でサラウンド感がスゴイ。音が回る感じや、爆発の迫力はぜひ劇場で体感した方が良い。

 明かりの消えたトンネル内で、ビデオ・カメラのモードをナイト・ビジョンに切り替えると、襲ってくるクリーチャーが見えるというのはなかなか恐ろしくて新しい手法。面白かった。

 たぶん、85分と短かったから1つのビデオ・テープで完結しても良かったのだろう。100分を越えるくらいになると、違う人の写したビデオ・テープも追加して、「羅生門」(1950・日)方式というか「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)方式にするとかしないと辛いかも。結局、シロートが撮った旅行のビデオとか、子供の運動会のビデオとかって、当事者以外は退屈で見ていられないもんなあ。よほど編集がうまいか、よほど凄いものが写っていない限り。

 本作には凄いものが写っているんだけれど、確かにキャラクターを描くにはずっと1つの視点でないとダメだろう。しかし事件の方をメインにするなら視点はいくつあっても良いわけだ。本作の場合は事件がメインなのだから、多くの視点にしてもっと長くし、ストーリーが進むほどに収束していくようにしても面白かったかも。

 公開初日の初回、新宿の劇場は45分前に着いたら若い男性が2人だけ。あれれ。40分前くらいに案内があって、整列。陽の当たるところに列を作らされたので暑い。この時点で7〜8人。35分前くらいに開場になって、全席自由の場内へ。列は30人くらいになっていて、3/4は高校から大学くらいで若い。女性も若かったが2〜3人のみ。

 さすが客層が若いだけあって、平気で場内で携帯をかけている。ロビーで使え。常識的にわかりそうなものだが……。そして入口近くに喫煙スペースがあって、換気設備がしっかりしていないので、煙草の煙がストレートに場内に入ってくる。なんだかなあ。

 最終的に406席の7〜7.5割ほどが埋まった。なかなか優秀。埋まるのが遅かったけど。下は中学生くらいからいた。

 暗くなって始まった予告は……ポール・ハギス監督の「告発の時」はPG-12で、スティーヴン・キングのホラー「ミスト」はR-15、殺し屋の「ヒットマン」がPG-12と、年齢規制のオンパレード。まあ子供はほとんど見ないものばかりだから関係ないと思うが。

 とにかく期待してしまうのはシリーズ最新作の「インディー・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」。面白そう。期待してしまう。ただ、66歳のハリソン・フォードの体がどこまで動くのか。劇場窓口で前売り券を買うと、シリーズのすべてがわかるという「コレクターズ・ブック」がもらえるらしい。


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