Hitman


2008年4月12日(土)「ヒットマン」

HITMAN・2007・仏/米・1時間33分(IMDbでは100分、独版92分)

日本語字幕:手書き風書体下、伊原奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、with Arroflex、Super 35)/ドルビー、dts(IMDbではドルビー・デジタルEX、dts)

(米R指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://movies.foxjapan.com/hitman/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

身寄りもなく、幼い頃から謎の施設で暗殺者として育てられたエージェント47(ティモシー・オリファント)は、組織があるクライアントから受けた依頼によって、公衆の面前でロシアの大統領候補ミカイル・ベリコフ(ウルリク・トムセン)を4kmの距離から射殺する。しかし組織から目撃者がいたためそれも射殺せよとの指令を受け、指定の場所に向かうと娼婦のニコ(オリガ・キュリレンコ)がいて、同じ組織のエージェントから狙撃される。からくも脱出したものの、あるタレコミにより、エージェント47はインターポールとロシア連邦保安庁(FSB)から追われることになる。

73点

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 「トゥーム・レイダー」などで知られるイギリス、アイドス社の人気シューティング・ゲームの映画化。原作ゲームは知らないが、どうやら設定だけいただいて、オリジナルのストーリーを構築したということらしい。おかげで映画にしても無理はなく、ゲームを知らなくても充分に楽しめる。ただ、ゲームのファンには物足りないかもしれない。

 いままで多くのゲームの映画化があったが、本作がもっともゲームとの関連性が薄いかもしれない。その分、映画として良く出来ていて、なかなか楽しめる。しかもセリフで説明するのでなく、行動や事件によって物語が語られていく感じが良い。主人公同様、口数の少ない映画で、構造はいたってシンプル。それでいて、娼婦のニコとの関係が微妙に漂っていて良い。安直に抱いてしまわないところがミソ。普通のハリウッド映画だったらすぐ手を出しているところ。でも、ちゃんとニコ役のオリガ・キュリレンコは大胆にナイス・バディを披露して、観客サービスをしてくれているのでご安心を。感謝。

 銃撃戦はたっぷりあるが、あまり過剰な演出はなく、ほどほどに派手で良い。それも、血糊をデジタルに頼らず(使っているかもしれないが)、ちゃんとどす黒い怖いほどのリアルな血糊を飛ばし、柱や壁、近くにいる人の顔に飛ばし、殺しの残酷さをしっかり演出している。セリフでも「鼻腔を通して命中した」から生きているはずはないと言っているが、まさにスナイパーの教科書どおりの設定。眉間などを狙うと頭蓋骨が厚いので角度によっては弾丸が逸れてしまうことがあるのだ。

 また、シンプルながらちゃんとストーリーがあって、クライマックスがあり、エンディングも鮮やか。ちょっと乙女チックというか、あまい終り方かもしれないが、ボクは気に入った。血なまぐさい話だが、やっぱりファンタジーということか。

 エージェント47を演じたティモシー・オリファントは、つい最近「ダイハード4.0」(Live Free or Die Hard ・2007・米)でサイバー・テロ・グループのボスを演じた人。なかなかクールな感じがする人で、殺人マシーンを演じるにはピッタリ。ちょっと前スティーヴン・キング原作の下品ホラー「ドリームキャッチャー」(Dreamcatcher・2003・米)で、4人の幼なじみのひとりを演じていた。さらにはニコラス・ケイジとアンジェリーナ・ジョリーの「60セカンズ」(Gone in 60 Seconds・2000・米)や人気ホラーの第2作「スクリーム2」(Scream 2・1997・米)にも出ていたらしい。1968年生まれというからもう40歳。見えないなあ。使っている銃はたぶんパラ・オーディナンスのP14.45にボ・マー・サイトを載せたもの。サイレンサーはちょっと細いかも。スナイパー・ライフルは、ブレイザーR93タクティカル(.338ラプアか)らしきものと、ワルサーWA2000らしきものも使っている。

 ヒロインを演じたオリガ・キュリレンコは、ウクライナ生まれの28歳の美女。日本の原作小説を映画化したフランス映画「薬指の標本」(L'Annulaire・2004・仏)でスクリーン・デビューした。見ていないのだがサスペンスの「蛇男」(Le Serpent・2006・仏)、全18編のオムニバス「パリ、ジュテーム」(Paris, je t'aime・2006・仏)などに出演、本作でハリウッド・デビューということになるらしい。2008年の年末公開予定の007映画「ボンド22」Quantum of Solaceでボンド・ガールを演じるらしい。とてもキレイ。自分を買った男が顔は殴らないから顔に入れているというドラゴンのような刺青が似合っている。そして、なかなかの脱ぎっぷり。

 エージェント47を追うインターポールのマイケルを演じたのはダグレイ・スコットという人。日本原作のホラー「ダーク・ウォーター」(Dark Water・2005・米)でジェニファー・コネリーの離婚調停中の夫を演じていた。また面白かった暗号解読スパイ映画「エニグマ」(Enigma・2001・英)では解読に挑む数学者を演じていた。ジョン・ウー監督の「M:I-2」(Mission: Impossible II・2000・米)では、テロ集団のボスを演じていた。一転してドリュー・バリモアの正統派ファンタジー「エバー・アフター」(Ever After・1998・米)では主人公の貧しい少女が憧れるフランスの王子を演じていた。正も悪もどちらも演じられる独特の味を持った人。使っているのは、レーザー・サイトを付けたH&KのUSP。部下のジェンキンスもライトをつけた同じ銃を使っている。

 ロシアのFSBの捜査官ユーリを演じているのは、シーズン1は面白かったアメリカTVドラマ「プリズン・ブレイク」(Prison Break・2005〜・米)で強烈な悪役ティー・バッグを演じて注目されたロバート・ネッパー。基本的にはTVで活躍してきた人のようだが、意外に映画も出ている。見ていないがデニス・クエイドのサスペンス「D.O.A.」(D.O.A.・1988・米)や、キーファー・サザーランドのアクション「レネゲイズ」(Renegades・1989・米)、日本では劇場公開されたシリーズ3作目のビデオ作品「スピーシーズ3 禁断の種」(Species III・2004・米)に出演している。ただ「プリズン……」がとにかく強烈で、ほかはあまり印象に残っていない。本作は「プリズン……」のイメージなので、違和感はない感じだったが。

 他にも追ってのエージェントがベレッタM92のバランサー付きやスナイパーにはドラグノフを使い、武器商人がMP5Kのレール付き、ドラム・マガジンのRPDを使う。FSBはAK、UZIやMP5で、しまいにはガンシップを呼ぶ。やってくるのは攻撃ヘリのMi-24ハインド。インターポールのブタが使っていたのは、たぶんP90。

 監督はフランス生まれのサヴィエ・ジャンという人。劇場映画は他にも撮っているが、日本公開されたのは本作が初めて。ジャン=クロード・ヴァン・ダムの「マキシマム・リスク」(Maximum Risk・1996・米)や「ダブル・チーム」(Double Team・1997・米)で助監督見習いをやっていたらしい。今後楽しみな新人かも。

 脚本はスキップ・ウッズ。大どんでん返し映画「ソードフィッシュ」(Swordfish・2001・米)の脚本も手がけた人。どうりでうまいわけだ。脚本を担当した新作2本が撮影中だ。

 製作総指揮は、アクション俳優のヴィン・ディーゼル。最近はプロデューサー監督としても活躍しているらしい。またスカッとするアクション保みせて欲しいものだ。

 公開初日の初回、40分前に着いたら新宿の劇場はアナログ音声の悲しい劇場での上映でガッカリ。誰も待っていなかったし、ドアも閉まっていた。35分前くらいにドアが開き、20分前に開場となったが、この時点でわずかに5人ほど。1人若い男性だったが、あとは中高年の男性。女性は0。ゲームの映画化なのに若い人が少ない。

 それでも、15分くらい前から増え出して、最終的には272席に4割ほどの入り。女性は5〜6人いただろうか。もっと若い人が入ってもいいと思うが、この劇場ではこれ以上混むとスクリーンが良く見えなくなる。

 ブザーが鳴って暗くなって始まった予告編は……魔裟斗も出ている香港日本合作の「軍鶏 Shamo」は予告は中国語でしかもPG-12なのに、公開は日本語吹替版になるらしい。残念。

 驚いたことスクリーンがビスタから一端シネスコになって、なんと「幸せになるための27のドレス」の予告を、レンズを変えずに左右マスクの圧縮のまま上映。絵がすべて縦長。信じられないミス。映写技師は何をやっているんだろう。字幕も蹴られて全く見えない。

 やっとレンズが変わって、左右マスクの3D-CGの「ホートン ふしぎな世界のダレダーレ」は、どうやら完全に子供向けのよう。夏休み公開。


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