Untraceable


2008年4月12日(土)「ブラックサイト」

UNTRACEABLE・2007・米・1時間40分

日本語字幕:丸ゴシック体下、太田直子/シネスコ・サイズ(HDTV、Panasonic、Sonyほか)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R-15指定)

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/untraceable/index.html
(全国の劇場案内もあり)

FBIポートランド支局の敏腕サイバー捜査官ジェニファー(ダイアン・レイン)のもとに、警察からあるサイトの調査依頼が来る。アクセスしてみると、子猫の虐待を生中継しているサイトだった。ジェニファーはサイトを閉鎖する処置をしたが、すぐに復活をとげ、しかもロシアにあるサーバを不正利用しているらしく、元をたどることが出来なかった。子猫が死ぬと、次に鼻血と小さな切り傷から血を流す男性が、抗血液凝固剤が投薬される状態で縛られてライブカムに映る。アクセス数に応じて投薬量が増える仕掛けだった。国内からしかアクセスできない設定だったが口コミでアクセスは増え続け、何も出来ないままやがて男性は出血多量で死ぬ。そして、さらに別の男性が拉致され……。

73点

1つ前へ一覧へ次へ
 怖い。確かにインターネットはこんな犯罪が起きてもおかしくない状態だろう。言論の自由という問題もあるが、危険なサイトを野放しにしていてはいけないのではないかと思わせる。監督はそんな問題提起をしたかったのかもしれない。日本でも警察内にサイバー犯罪専門チームがあるらしいが、FBIほどのリサーチ力と権限とを持っているのだろうか。確かに「小学校を襲撃する」などと書き込んだ者が逮捕されたりはしているようだが……。

 そして恐ろしいのが、我々一般大衆。悪意はなくても、見るなといわれるとちょっとだけ除いて見たくなるもの。その好奇心が犯罪の共犯となってしまう。たぶんそれぞれは軽い気持ちだろう。それで人が死ぬという実感は全く無いはず。これを止める事が出来るだろうか。ハリウッド映画らしく望みを感じさせるエンディングではあるが、それを鵜呑みに出来ないと言うか、逆を想像してしまうというか、監督はそちらのほうを意図していたのかもしれない。

 日本でも珍しくR-15指定になるほど、殺害方法が残酷。よくもこんなに酷い殺し方を考えたものだと感心するほど。設定がリアルで、観客もそれに加担しているように気になるから、「ソウ」(Saw・2004・米)よりエグイかも。そして「ソウ」のような凝り過ぎたための無理がない。シンプルだが残酷な仕掛け。

 犯人が犠牲者を誘う手も怖い。インターネットを使い、入手困難チケットかとかレアなアイテムを特別に譲るというもの。次に狙われるのが誰かわからず、非常に怖い。いつ主人公や良い側の人が襲われるのか不安になる。ここがうまい。映画でなく現実でも、こんな手には引っかかる人が多いかもしれない。うまい話には気をつけないと。犯人は車に積んだGPSや携帯電話にまでハッキングしてくる。そしてスタンガンを使う。

 サイバー捜査官ジェニファーは、離婚調停中で、幼い娘と暮らしており、年老いた母もいて、自分は夜勤という設定。使っている銃は右のヒップにハイライドしたグロック。FBIだから.40S&Wか。これをダイアン・レインがリアルに演じている。注目されたのはサンセット・キスの「リトル・ロマンス」(A Little Romance・1979・米)からだろうか。強烈な印象を残したのは「ストリート・オブ・ファイヤー」(Streets of Fire・1984・米)。そのヒロイン役の彼女が「ハリウッドランド」(Hollywoodland・2006・米)の若い男優を囲うマダム役を演じるとはショッキングだった。

 ポートランド警察の刑事エリック・ボックスを演じたのは、人気TVドラマ「24」のシーズン2で、娘を虐待するとんでもない悪い父親を演じていたビリー・バーク。劇場映画ではリー・タマホリ監督のサスペンス「スパイダー」(Along Came a Spider・2001・米)で学校のガードマンを演じていた。どちらかというと悪い役が多いので、本作でもどこかで事件に絡んでいるのではと思ってしまう。使っていた銃はP226のようだったが……。

 ほかに警察の特殊部隊はMP5を、FBIの特殊部隊はM4カービンやMP5を使っている。エンド・クレジットにFBIアドバイザーとあったので、考証もしっかりしているのではないだろうか。

 監督はグレゴリー・ホブリットという人。リチャード・ギアの法廷もの「真実の行方」(Primal Fear・1996・米)や、後味の悪かったデンゼル・ワシントンのホラー「悪魔を憐れむ歌」(Fallen・1997・米)、過去の父と無線がつながるという「オーロラの彼方へ」(Frequency・2000・米)、コリン・ファレルのWWIIミステリー「ジャスティス」(Hart's War・2002・米)を監督している。ちょっと普通ではない話というのが得意なようだ。

 脚本は原案も兼ねるロバート・フィヴォレントとマーク・R・ブリンカー。2人は大学時代の友人で、本作がデビュー作らしい。ということは、まとめたのがアリソン・バーネットか。女優のジョアン・チェンが監督したラブ・ストーリー「オータム・イン・ニューヨーク」(Autumn in New York・2000・米)の脚本も手がけている。

 タイトルのクレジットはバラバラの文字が組み合わさってまたバラけていくような演出で、文字は白なのだがそのうち何文字かが赤。デザインしたのはyU+Co.。最近では「アメリカン・ギャングスター」(American Gangster・2007・米)や「ビー・ムービー」(Bee Movie・2007・米)、「魔法にかけられて」(Enchanted・2007・米)などを手がけている。さすがうまい。

 公開初日の2回目、新宿の劇場は25分前くらいに着いたら、ロビーに20人くらいの人。案内無いまま15分前くらいに前回が終了して勝手に中へ。全席自由で、10分前くらいに763席の3〜3.5割が埋まった。最終的にはもうちょっと行ったか。老若比はほぼ半々で、男女比は7対3くらいで男性が多かった。

 チャイムの後、案内があって暗くなって始まった予告は……またまた「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(The Blair Witch Project・1999・米)、「クローバーフィールド」(Cloverfield・2008・米)に続くシロート撮り映画がやって来るらしい。「REC/レック」キー・ワードは女の子、ビデオ、スペイン、ゾンビ。どれも評価が低いのに、なぜまたやるんだろう。とにかく揺れまくる画面は見るだけで疲れる。ただIMDbでは7.8と超高評価(「クローバー……」も7.8だったが)。

 上下マスクのクライヴ・オーウェンのアクション「シューテム・アップ」は、いわゆるドンパチ映画。キャッチ・コピーは「弾丸(たま)んねー」だし、チラシなどの待ってる弾丸も正体不明だし、かなり悲しいことになりそう。

 すごかったのは押井守監督の「スライ・クロラ」。ついに絵付きの予告になり、それが素晴らしい。実写と見まごうばかりの3D-CGらしき戦闘機。これは見たい。前売りにはストラップが付くらしい。

 予告はちょっとピンが甘かったが、シネスコになって本編が始まったらピンがきた。良かった。


1つ前へ一覧へ次へ