Micael Clayton


2008年4月13日(日)「フィクサー」

MICHAEL CLAYTON・2007・米・2時間00分(IMDbでは119分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(レンズ、クレジットはwith Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定)

公式サイト
http://www.fixer-movie.com/
(入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

弁護士700人を抱えるNYの大手バック&イーデンス法律事務所で、事件の後始末やもみ消しを担当するフィクサーのマイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)は、クライアントである巨大製薬会社U/ノースの農薬に関する薬害訴訟を手がけていた共同経営者でもあるアーサー・イーデンス(トム・ウィルキンソン)が、法廷で裸になるなど精神的におかしくなっている問題の処理をまかされる。アーサーに会うと、彼は原告側の若い女性アンを愛していて、U/ノースを訴訟する手助けをすると言い出す。そしてU/ノースは和解の方が得策と考え、和解案を提示するが……。

73点

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 いかにもありそうな話で、怖い。薬害裁判とその裏で行われている汚い手。大きな話としては、巨大製薬会社と法律事務所、そして原告の関係が描かれる。さらには特に優れた知識や技術があるわけでもなく、先のことを考えて投資したレストランがつぶれその負債までも抱え、おそらくは離婚して息子と離れて暮らしており、しかも所属法律事務所が合併しそうで、それによってクビになるかもしれないという不安にさいなまれている中年男、マイケル・クレイトンをじっくりと描いている。

 たぶん日本版のタイトルからは薬害訴訟がメインのように思ってしまうが(ボクも予告からそれを想像していた)、英語タイトルが示すように、マイケル・クレイトンの人生のたぶん一番大変な時期をメインに描いている。その時の大きな事件が薬害訴訟だったというわけ。日頃、汚い連中相手にうんざりするような後始末ばかりを担当する男が、負債をチャラにする大金をもらって、たまたま知る事になる不正の事実を握りつぶすのか。それとも、仕事どころか未来をも失うことになりかねないが、正しいことをやるのか。結構身につまされる状況、そして究極の選択。ここがスゴイ。

 ただ、話が複雑で、字幕だけではよく理解できない。英語がわかるともっとわかりやすいのだろう。人の名前もなかなか覚えられない。誰が、誰? これはDVDの吹替版でもう一度じっくり見た方が良いかもしれない。

 また現代の普通の事件を描いているので、絵が地味で、銃撃戦があるわけでもなく(爆発はあるが)、ちょっと単調で120分は長い。途中1〜2回、眠気に襲われた。

 主演のジョージ・クルーニーは、製作総指揮も兼ねている。作りたかった映画なのだろう。ほかに「コールド・マウンテン」(Cold Mountain・2003・米)のアンソニー・ミンゲラ監督も製作総指揮に名を連ねているし、ジョージ・クルーニーの盟友「さらば、ベルリン」(The Good German・2006・米)のスティーヴン・ソダーバーグ監督も製作総指揮に加わっている。

 法律事務所の片方の共同経営者で、躁鬱病になってしまう弁護士イーデンスを演じているのは、トム・ウィルキンソン。実話の超常現象裁判「エミリー・ローズ」(The Exorcism of Emily Rose・2005・米)で牧師を演じていた人。男性ストリップ映画の「フル・モンティ」(Full Monty・1997・英)でも脱いでいたらしい。本作では脱ぎかけるだけだけど。

 法律事務所のもう一方の共同経営者は、本作のプロデューサーでもある映画監督のシドニー・ポラック。あまり多作な監督ではなく、1990年代は役者や製作総指揮などが多かったが、久々撮った「ザ・インタープリター」(The Interpreter・2005・米)はなかなか面白かった。さすがに貫録があって、本作のような役はピッタリという感じ。

 製薬会社の幹部で、会社のためというか、会社での自分の地位を守るためというか、間違った判断を下してしまう仕事人間の法務部長カレンを演じたのは、「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」(The Chronicles of Narnia: The Lion, the Witch and the Wardrobe・2005・米)で白い魔女を演じていた人。キアヌー・リーヴスのSFホラー「コンスタンティン」(Constantine・2005・米/独)でも、天使ガブリエルを演じて怖かった。

 監督・脚本はトニー・ギルロイ。見ていないのだが、スティーヴン・キング原作の「黙秘」(Dolores Claiborne・1995・米)の脚本で高い評価を得、巨大病院をめぐる恐ろしいミステリー「ボディ・バンク」(Extreme Measures・1996・米)、さらにオカルト系のサスペンス「ディアボロス/悪魔の扉」(Devil's Advocate・1997・米)、誘拐アクションの傑作「プルーフ・オブ・ライフ」(Proof of Life・2000・米)の脚本を手がけ、傑作スパイ・アクション「ボーン・アイデンティティー」(The Bourne Identity・2002・米)で評価を確実なものとし、シリーズ3作の脚本を手がけるとともに本作で監督デビューすることになった。今後も目が離せない人である。

 冒頭、賭けカードのシーンでチラリと映るのはたぶんP226の新型グリップ付き。しかし銃撃戦はなく、爆発があるのみ。しかし、なかなか怖く良い。ただ前半のゆっくりペースに比べて、後半はちょっと急ぎ過ぎの印象も。字幕では付いていくのが大変。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由。55分前に着いたら中年男性が1人。35分前くらいに案内があって整列。30分前くらいに窓口が開いて、当日券と交換して階段下へ。この時点で30人くらい。それほど混んでいないのに、ズルしてでも前に出ようとするオヤジが1人。オバサンでも、ネーチャンでもニーチャンでも、時々こういう人がいる。出させないようにしっかりブロック。オランダでは渋滞する道路の信号をなくしたら渋滞が解消されたというが、日本じゃちょっとでもズルしようとするヤツがいて絶対に成立しないと思う。日本人は民度が低いのかなあ。

 20分前くらいに開場して、最終的に183席ほぼ満席は、さすがアカデミー賞受賞作品というところ。ほとんどが中高年やや高めで、男女比はほぼ半々。

 スクリーンはシネスコで開いており、予鈴の後、本鈴で半暗になって、ビスタに縮小して予告。気になったのは、「隠し砦の三悪人」は「椿三十郎」と違って新解釈というか、樋口監督版といった感じで、悪くないかも。ただ嵐の松本潤の あのヒゲはどうだろう。

 「スパイダーウイックの謎」の予告は以前のパターンのままで、なぜTV-CMよりも見せ場が少なく、地味なんだろう。TVはもっと見せているのに。見せないのならTVでも控えるべきでは。

 久々に蒸気機関車のドルビー・デジタルのデモがあってからの上映。


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