Curse of the Golden Flower


2008年4月13日(日)「王妃の紋章」

満城尽帯黄金甲・2007・香/中・1時間54分(IMDbでは香港版111分)

日本語字幕:手書き書体下、樋口裕子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arri)/ドルビー・デジタル(IMDbではSDDSも)

(米R指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/ouhi/index2.html
(入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

唐の時代が終った928年、重陽節(菊の節句)を前に王(チョウ・ユンファ)が遠征から帰り、第二王子の傑(ジェイ・チョウ)も辺境の地からもどってくる。しかし王妃(コン・リー)は血の繋がっていない第一王子の祥(リウ・イェ)と不義の関係にあり、それを知った王により10日ほど前から持病の薬にトリカブトを混入して飲まされていた。薬を調合していたのは侍医の蒋(ニー・ターホン)で、その娘の嬋(リー・マン)が薬係だった。さらに、祥は嬋と恋人同士であり、義理の母との関係を断ち切るためにも、王位継承権を傑に譲り、外地に出たがっていた。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 恐るべき豪華絢爛な血みどろ愛憎劇。最初は極彩色で美しく見えた宮殿の内装も、後半には赤が艶やかな赤ではなく血の赤にしか見えなくなる。見終わったあと、ずっしりと重く、暗澹たる気持ちになる。

 とにかくチャン・イーモー監督作品だけに、セットや衣装は豪華で、絵はありえないほど美しい。またモブシーンでは何千という人が画面を埋め尽くし、アクション・シーンでは舞いのように美しい殺戮がこれでもかと展開される。

 印象としてはチャン・ツィイーの「女帝 エンペラー」(The Banquet・2006・中)と同じ印象。あちらも五代十国時代(907年だったが)の皆殺し映画だった。本作も皆殺し。どちらも人間関係どろどろで、それでいて美しくアクションもたっぷり。裏読みすると、チャン・ツィイーをフォン・シャオガン監督に取られたチャン・イーモー監督が、かつてのお気に入りのコン・リーで同じような題材を撮ってみせたというところか。バック・スクリーンにもどろどろの人間関係があったりして……なんてことはないか。

 役柄はともかく、毒と解っていて飲む王妃役のコン・リーは素晴らしい演技。「SAYURI」(Memories of Geisha・2005・米)、「マイアミ・バイス」(Miami Vice・2006・独/米)、「ハンニバル・ライジング」(Hannibal Rising・2007・英/チェコほか)などすべてエロティックで、悪女。こんなイメージが定着してしまったよう。本作もそのセンで。

 気の弱い長男を演じていたのはリィウ・イエ。優柔不断な感じが絶妙。真田広之がでたチェン・カイコー監督の「PROMISE プロミス」(無極・2005・中/日/韓)で大将軍の部下を演じていた人。

 王妃の本当の息子、次男を演じたのは、ジェイ・チョウ。日本の漫画の映画化「頭文字[イニシャル]D THE MOVIE」(Initial D・2005・中/香)で主人公の藤原拓海を演じていた人。切れ長の目で、派手さはないが、どこか説得力のある人。本作でもそんな感じ。

 末っ子の三男を演じたのは、チン・ジュンジエ。本作が劇場映画デビュー作になるらしい。とても整った顔立ちで、インテリ風のイメージ。今後の活躍に期待。

 とにかく目立っていたのは、侍医の娘を演じたリー・マン。美人。1988年生まれというからたぶん今年20歳。17歳の時にチャン・イーモウ監督に見出されての抜擢とか。つまり本作が劇場映画デビュー作。コン・リー、チャン・ツィイーに続く第3のイーモウ・ガールとなるか。注目だ。

 とにかく女性の衣装は胸をコルセットで締め上げて露出するような挑発的なものばかり。これで走られると、もう……。そんな衣装を担当したのは、イー・チョンマンという人。美術監督の方が多い人だが、衣装デザインではスー・チーのアクション快作「クローサー」(So Close・2002・香/米)や、見ていないが金城武の「君のいた永遠(とき)」(Tempting Heart・1999・香)などを手がけている。

 極彩色のプロダクション・デザインは、フォ・ティンシャオ。ほかにチャン・イーモウの「LOVERS」(House of Flying Daggers・2004・中/香)とアート・ディレクターを務めた「HERO」(英雄・2002・中/香)なども手がけている。素晴らしい。

 アクション監督はチン・シウトン。「LOVERS」、「HERO」、「少林サッカー」(Shaolin・2001・香)のアクション監督の他、自身も監督としてマギーQの「レディ・ウエポン」(赤裸特工・2002・香)、リー・リンチェイ時代のジェット・リーの「冒険王」(冒険王・1996・香)、「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」(倩女幽魂・1987・香)シリーズを手がけている。2000年代に入ってからはアクション監督の方が多いようで、最新作は「どろろ」(2007・日)。

 監督は「LOVERS」、「HERO」などの、カメラマン出身のチャン・イーモウ。コン・リーやチャン・ツィイーを世に出した人。「始皇帝暗殺」(荊軻刺秦王・1998・中/仏ほか)や「PROMISE プロミス」のチェン・カイコー、「女帝 エンペラー」(The Banquet・2006・中)のフォン・シャオガンらと並ぶ中国の名監督。

 音響はサラウンドが良く回り、音質も良好。ただ画質は一部で粗いところがあり、ちょっと気になった。せっかくいい色なのに。そしてコピー防止のドットもなあ……。

 公開2日目の2回目、銀座の劇場は40分前くらいに着いたらロビーには30人くらいの人。中高年というよりは高齢者がほとんど。35分前くらいに案内があって整列。25分前くらいに入れ替え。

 全席自由で、5分くらい前から「築地魚河岸三代目」のビデオっぽい予告。最終的に435席の8割くらいが埋まった。これはなかなか。男女比は4対6で女性の方が多かった。

 半暗になって始まった予告は……R-18指定という「P2」というホラーは見たい。残業していたら、いつの間にかビルが閉まってたった1人取り残されてロックされ取り残される。携帯も使えない。ところが1人と思ったら、怪しげな男もいたと……。都会ではいかにもありそうな話で、面白そうだが、上映劇場がなあ。

 予告だけで泣けてくる「あの日の指輪を待つきみへ」は、とても見れそうにない。シャーリー・マクレーンがいい。リチャード・アッテンボロー監督恐るべし。

 スクリーンがシネスコになってから、左右マスクで、なんと女座頭市? 綾瀬はるか? 「ベクシル2077日本鎖国」(2007)の曽利文彦監督? またタイトルが良くわからない。どうにも予告の役をはたしていない。調べたらタイトルは「ICHI」らしい。面白そう。どんな時代劇になるんだろう。期待。

 左右マスクで、見ていないが「40歳の童貞男」(The 40 Year Old Virgin・2005・米)や、神さまコメディ「ブルース・オールマイティ」(Bruce・2003・)ニュース・キャスターのスティーヴン・カレル主演のスパイ・コメディ「ゲット・スマート」は、どうなんだろう。日本人好みのパターンかどうか。どうやら元ネタはかつてのTVドラマ「それ行けスマート」らしいが。「オースティン・パワーズ」(Austin Powers: International Man of Mystery・1997・米)みたいだったら良いんだけど。

 ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン、ロブ・ライナー監督というだけで気になるが、「最高の人生の見つけ方」は面白そう。余命6ヶ月の2人男の話だが、やりたいことリストを片っ端からやっていく。それが明るくて実に楽しそう。邦画だったらこうは行かない。そして予告だけでも感動させる。名優2人が見せる。


1つ前へ一覧へ次へ