10,000 B.C.


2008年4月26日(土)「紀元前1万年」

10,000 B.C.・2008・米/ニュージーランド・1時間49分

日本語字幕:手書き書体下、アンゼたかし/シネスコ・サイズ(マスク、Arri、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(日本語吹替版もあり) (米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/10000bc/
(入ったら音に注意)

太古の昔、山奥で暮らす狩猟部族ヤゴル族には、青い目少女が一族を救うという伝説があった。1人の少女が村にやってくる。名をエバレット(カミーラ・ベル)といい、母親が死んだため巫母と呼ばれる予言者が育てることになる。少女が大人になった頃、謎の一団が現われ、エバレットと村人の大半を連れ去ってしまう。エバレットの夫デレー(スティーヴン・ストレイト)は、仲間とともに一団を追う。たどりついた所は、砂漠の果てのピラミッド建造現場だった。

72点

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 すごい。たぶん3D-CGを使っているのだろうが、どうやって撮っているのかわからないほどで、ありえない設定なのにリアル。これはできるだけ大スクリーンで見た方がいい。

 ただ、ストーリーはR.P.G.のように小さな冒険を重ねながら、それが次第に大きな目的につながって行くという良く出来たものなのに、感情がなかなか伝わってこず、ドラマチックさも感じられない。むしろ話ができ過ぎている感じさえする。事件の記録のようで、客観的に見てしまう。ただ1万年前だとマンモスはいるとして、ピラミッドはどうなんだろうか。

 感覚的には監督のローランド・エメリッヒが以前に監督した「スターゲイト」(Stargate・1994・仏/米)と「インデペンデンス・デイ」(Independence Day・1996・米)を足して2で割ったような感じ。スケールの大きなモブ・シーンと、古代神殿での戦い。でも、もっと言うと、メル・ギブソンが全編マヤ語で撮ったアクション・アドベンチャー「アポカリプト」(Apocalypto・2006・米)とほとんど同じ。舞台が変わっただけで、驚くほど良く似ている。ただし脚本、演出ともに「アポカリプト」の方がはるかに優れていると思う。

 音はサラウンドで迫力があり、良く回る。マンモス(ちょっとカップヌードルのCMみたいだが)やサーベル・タイガー、ダチョウのバケモノなどは合成したような違和感がほとんどなく、まさに生きているかのよう。存在感がある。そして古代の神殿、ピラミッドの建設現場も、本当に大きなセットを作ってそこで撮影したかのようだ。これは見る価値がある。

 ただ、エンディングはどうなんだろう。妻を救出したらそれで終わりでいのに、余計なエピソードが追加されている感じ。だから映画はスッキリ終らずもたつく。しかも結果は同じ。これが中盤に起きるのなら意味はあると思うが、ホラー映画やアクション映画で昔流行ったパターンを安直にくっつけるなんて、製作者の感覚を疑ってしまう。

 監督・脚本・製作もやっているのは、ローランド・エメリッヒ。初めて見たのは「スペースノア」(Das Arche Noah Prinzip・1983・西独)というSFだった。当時の西ドイツで学生が作った話題になっている作品として、確かレイトショーか何かで限定公開された。以後、SFアクション系が多い人だが、密集体形が好きな人でもある。「インデペンデンス・デイ」(Independence Day・1996・米)や「GODZILLAゴジラ」(Godzilla・1998・米/日)もそうだった。ボクが一番感動したのは「パトリオット」(The Patriot・2000・独/米)だが、重要な役を演じたヒース・レジャーが薬物中毒で死亡(自殺説も)してしまい、ちょっと複雑な感じ。ただ、良く組んでいたプロデューサーのディーン・デヴリンは本作には絡んでいない。ディーンが最近手がけたのは傑作複葉機映画「フライボーイズ」(Flyboys・2006・英/米)。仲たがいでもしたんだろうか。

 もう1人の脚本はオーストリア生まれのハロルド・クローサー。ベースは作曲家だ。TVが多いようだが劇場映画ではローランド・エメリッヒ監督の「デイ・アフター・トゥモロー」(The day After Tomorow・2004・米)や「エイリアンVS.プレデター」(AVP: Alien vs. Predator・2004・米/加ほか)、そして本作も手がけている。本作では製作総指揮も担当。

 主人公のデレーを演じたのはスティーヴン・ストレイト。劇場映画のデビュー作はディズニーのファミリー映画「スカイ・ハイ」(Sky High・2005・米)だそうだが、聞いた記憶がない。日本公開されていたとは。他は日本劇場未公開なので、本作が日本デビュー作に近いのでは。ただ、レゲエ系の髪形のせいか今ひとつパッとしない感じだったが。

 やっぱの印象に残ったのは、青い目の少女エバレットを演じた美女、カミーラ・ベル。スティーヴン・セガールの「沈黙の陰謀」(The Patriot・1998・米)に出ていた。実の娘の藤谷文子が出たヤツで、スティーヴン・セガールの娘を演じていた。スピルバーグの「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」(The Lost World: Jurasic Park・1997・米)にも出ていたらしいが、記憶にない。

 一緒に旅に出るティクティクを演じたのはクリフ・カーティス。「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)に出ていたフランスのサイード・タグマウイと似ているので良く間違えるのだが、こちらは「ダイハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米)でFBIの幹部を演じていた人。ニュージーランド生まれなんだとか。

 人々をさらっていく悪いグループのリーダーは、アフィフ・ベン・バドラ。恐ろしい容貌でとても印象に残る。特に顔を灰色っぽく塗っているのが恐い。まるで死人のような感じ。ヴァンサン・カッセルとチェッキー・カリョがすごかったフランスのアクション映画「ドーベルマン」(Dobermann・1997・仏)に出ていたらしい。またジェット・リーの「ダニー・ザ・ドッグ」(Danny the Dog・2005・仏/米/英)にも出ていたとか。いい味の人なので、どんどん活躍して欲しい。

 ビックリしたのは、ナレーションを担当しているのが、往年の名優、オマー・シャリフ。1932年生まれだそうだから、なんと76歳。最近では冒険活劇の「オーシォン・オブ・ファィヤー」(Hidalgo・2004・米)に出ていたが、やはり代表作といえば「アラビアのロレンス」(Lawrence pf Arabia・1962・英)と「ドクトル・ジバゴ」(Doctor Zhivago・1965・米)あたりだろう。

 公開初日の初回、新宿の劇場は45分前くらいに着いたら2つの列が。長い方は「エヴァンゲリオン」の前売り券だかの整理券だとか何とか。15人くらいの列が本作の列だった。ほとんど中高年で、若い人は1〜2人、女性はオバサンが2人。

 35分前くらいに開場になって、この時点で20人くらい。プレミアム・ペア・シート以外全席自由。下は父親に連れられた小学生くらいの男の子から、マナーの悪いジジイまで。ジジイは、前の席に足をガンガン当てるヤツとか、もっとも驚いたのは客席でタバコを吸ってるジジイ。今どき、信じられない光景だった。まっ、おバカな奴は年齢に関係なくいるわけだが、でもなあ。携帯を切らないヤツも多いし、室内で帽子をかぶったままのヤツもいるし。ヤレヤレ。

 最終的には1,064席の3.5割くらいの入り。話題作の割には少ない感じ。

 チャイムが鳴って、明るいままカーテンが上がって、CMのあと、シロート撮り風スペインのゾンビ・ホラー「●REC」。またまた疲れる映画がやって来る。シロート撮りでお金を取っていいんだろうか。

 クライヴ・オーウェンの上下マスク「シューテム・アップ」は、派手なガン・アクション映画。ただチラシのビジュアルがおかしいのと、「弾丸(たま)んねー」ってキャッチが逆に気になる……。

 押井守監督の「スカイクロラ」はとにかく凄いビジュアルで、劇場窓口で前売りを買うと、デフォルメ・キャラ付きストラップがもらえるらしい。上下マスクの「ナルニア国物語」は新予告になったが、場内が明るいままで、細部がほとんどわからない。暗くして欲しかった。

 スクリーンがシネスコになってやっと場内が暗くなり「僕の彼女はサイボーグ」> これは見たい。絵もいい。カァク・ジェヨン監督は凄いなあ。

 「スピード・レーサー」も新予告に。絵がキレイ。極彩色の世界。なぜか日本語公式サイトはない模様。


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