The Spiderwick Chronicles


2008年4月27日(日)「スパイダーウィックの謎」

THE SPIDERWICK CHRONICLES・2008・米・1時間36分(IMDbでは米版97分、アンレイテッド版107分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、桜井裕子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(日本語吹替版もあり)
(米PG指定)

公式サイト
http://www.sw-movie.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

森の中に立つ荒れ果てた大きな屋敷に、4人の家族が車で越してくる。母親のヘレン(メアリー=ルイーズ・パーカー)、長女のマロリー(サラ・ボージャー)、その下の双子の兄弟サイモンとジャレッド(フレディ・ハイモアの2役)だった。ヘレンは離婚したばかりで、この屋敷を相続したのだった。父親派でいつも問題を起こしてばかりの短気なジャレッドは、偶然隠されたリフトを発見し、それで屋根裏部屋に上がり、古いクランクの中から絶対に読むなと書かれた1冊の本を発見する。それは大伯父のアーサー(デヴィッド・ストラザーン)が一生をかけて書いた妖精図鑑だった。そしてそれを開いた時、悪い妖精たちが現われそれを奪い取ろうとするが……。

73点

1つ前へ一覧へ次へ
 やはり3D-CGを駆使してありえない世界をリアルに描いたファンタジー。思ったよりは過激で、相当恐いシーンもあり、ちょっと大人向きのおとぎ話だったが、ちゃんと王道を行くしっかりしたおとぎ話。不思議で、冒険がいっぱいで、最後にはめでたし、めでたしで終るという。そして、ちょっとハッピーな気持ちになれた。

 子供と大人の対立や、家族の団結、兄弟の協力、そして他人への思いやり、自然への気遣い……など、児童文学に欠かせない要素はしっかり盛り込まれている。親として安心して子供に見せられる物語だろう。ただちょっと暴力表現が過ぎる気はするが……。そして、通常のおとぎ話にはない、親の離婚の話を取り込むことで、大人にも考えさせられるお話になっている。

 登場する妖精たちは本当にリアル。かつての人形や光学合成を使った特殊効果とは違って、本当に存在感がある。生きてそこにいるかのようだ。もうCGには不可能はないのかもしれない。そして、CGがあったからこそ本作が映画化出来たのだろう。

 ただ、気になったのは、この物語の根幹をなすネタ、悪い妖精たちの動機がどうにも理解できない。なぜ彼らは妖精図鑑を手に入れて、自分たち一族以外を絶滅させて世界を征服したいのか。この説明がない。妖精図鑑にはそれぞれの種族の特徴が記されており、弱点も書かれているから悪い奴らはそれを手に入れたいというのはわかる。しかし他の種族を滅ぼして何の利益があるのか。また世界を制覇して、自分たちしか生き残っていなくて何の得があるのか。

 さらに、原作通りなのかもしれないが、なぜ主役となるジャレッドは双子でなければならなかったのか。本作を見る限りは必要がなさそうに思える。たった1カ所、冒頭で間違えて悪い妖精たちにサイモンがさらわれるシーンだけ。それ以降、双子を活かしたシーンもないし、それのデメリットも描かれていない。1人2役だから同じ画面に同一人物がいるための合成をあちこちにしなければいけないわけで、無駄な予算がかかったのではないだろうか。なぜ? この映画の物語なら双子の必要はないのに……。編集でカットし過ぎてこうなってしまったとか。

 主人公を演じたフレディ・ハイモアは、あちこちで引っ張りだこの模様。一時のダコタ・ファニングのよう。マコーレー・ルキンなどのようにつぶされてしまわなければいいが。「アーサーとミニモイの不思議な国」(Arthur et les Minimoys・2006・仏)と似たようなファンタジーだが、なぜ同じような作品を続けて選んだのか……こちらの方が出来が良いから、まあいいか。もうすでに16歳の高校生。2匹のトラ映画「トゥー・ブラザーズ」(Two Brothers・2004・英/仏)のときはまだ小学生、12歳だったのに。

 姉のマロリーを演じたのはサラ・ボルジャー。見ていないが「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」(In America・2002・アイルランド/英)で上のお姉ちゃんを演じていた少女。少年スパイ映画「アレックス・ライダー」(Stormbreaker・2006・英/米/独)で、同級生のカワイコちゃんを演じていた。この2作の間で一気の大人っぽくなっていて、女の子の成長は早いなあと改めて感心した。

 美人のママは、メアリー・ルイーズ・パーカー。あの傑作「フライド・グリーン・トマト」(Fried Green Tomatoes・1991・米)に出ていた人で、ニコール・キッドマンの退屈なドラマ「ある貴婦人の肖像」(The Portrait・1996・英)、そしてつい最近は「ジェシー・ジェームズの暗殺」(The Assassination of Jesse James by the Coward Ford・2007・米)でジェシー・ジェームズの妻をほとんどセリフ無しで演じていた。

 悪党のボス、マルガラスを演じたのは、ちょっとしか出ていないが、強面俳優のニック・ノルティ。TVで活躍し、古くは海洋アクション「ザ・ディープ」(The Deep・1977・米)、エディ・マーフィと共演した「48時間」(48 HRS.・1982・米)、戦場カメラマンを描いた傑作「アンダー・ファイア」(Under Fire・1983・米)、国境を警備する警察官の活躍を描いた「ダブルボーダー」(Extreme Prejudice・1987・米)……など一貫してアクション、男のドラマが多い人。最近で良かったのは、ニール・ジョーダのクライム・サペンス、けだるい雰囲気の「ギャンブル・プレイ」(The Good Thief・2002・仏/英ほか)か。「ホテル・ルワンダ」(Hotel Rwanda・2004・英/米ほか)は見ていないので何とも……。

 最初に現われる妖精、シンブルタックの声を担当していたのは、マーティン・ショート。日本ではあまりウケないタイプのコメディアンで、ジョン・ランディスのコメディ「サボテン・ブラザーズ」(!Three Amigos!・1986・米)、お笑いミクロ決死圏「インナースペース」(Inner Space・1987・米)、スティーヴ・マーティンのハートフル・コメディ「花嫁の父」(Father of the Bride・1991・米)なんかに出ていた人。最近は日本であまり公開されていない感じ。

 大伯父さんのアーサーを演じていたのはデヴィッド・ストラザーン。つい最近「ボーン・アルティメイタム」(The Bourne Ultimatum・2007・米/独)ですぐに殺人を命令するCIAの局長を演じていた人。あれでは恐い感じだったが、本作では人の良さそうな感じ。うまい。

 ちらりと出るだけの離婚して別な女性と暮らしている夫役は、アンドリュー・マッカーシー。二枚目で、青春群像劇「セント・エルモス・ファイヤー」(St. Elmo's Fire・1985・米)、モリー・リングウォルドの出世作「プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角」(Pretty Pink・1986・米)、傑作ラブ・ファンタジー「マネキン」(Mannequin・1987・米)、そしてコメディの「バーニーズ/あぶない!?ウィークエンド」(Weekend at Bernie's・1989・米)、シャロン・ストーンが光っていたテロ・アクション「イヤー・オブ・ザ・ガン」(Year of the Gun・1991・米)など活躍していたが、最近はとんとお目にかからなくなっていた。

 監督はマーク・ウォーターズ。ジェイミー・リー・カーティスの母親とリンジー・ローハンの娘の体が入れ替わってしまうコメディ「フォーチュン・クッキー」(Freaky Friday・2003・米)を監督した人。その後再びリンジー・ローハンのコメディ「ミーン・ガールズ」(Mean Girls・2004・米)を撮ったりしている。本作はコメディの要素もあるが、新分野に挑戦というところか。この後の作品の出来が注目されるところか。

 原作は製作総指揮も兼ねるホリー・ブラックの「スパイダーウィック家の謎」(文渓堂)。全5巻あるらしい。続編は作られるのだろうか。その原作の絵を担当したのがトニー・ディテルリッジという人で、この人も製作総指揮を兼ねている。

 妖精のデザインは原画担当のトニー・ディテルリッジなのか、プロダクション・デザイナーのジェームズ・D・ビッセルなのか、それともアニメーションを担当したティペット・スタジオのアーティストなのかわからないが、雰囲気としてはジム・ヘンソン系のデザインっぽかった。まあ、これが西洋人の好みなのかもしれないが、顔のパーツが中心にきゅっと集まったような感じ。特にシンブルタックはその印象が強い。花びらの妖精スプライトはちょっと日本風で与勇輝っぽく、とても優雅で美しかったが。

 公開2日目の2回目、字幕版の初回、前日に座席を確保しておいて30分前に着いたら銀座の劇場はすでに開場済み。6人くらいが座っていたが、全席指定なので全体に来るのが遅い。最初は若い人が多い感じだったが、遅くなって中高年が増えてきて、半々くらいに。男女比は6対4で男性が多い感じ。最終的に654席に2.5割くらいの入り。少ない。もっと入っても良いと思うが。

 下は父親に連れられた小学生くらいから。17席×2列のプレミアム・シートは1つも埋まらなかった。前日に確保する必要もなかったかも。まっ、いっか。

 スクリーンはシネスコで開いていて、予鈴が鳴って、本鈴の後、半暗になってからビスタになった。気になった予告は……「パコと魔法の絵本」は冗談なんだか、マジメなんだかも予告からは良くわからなかった。監督は「下妻物語」(2004)「嫌われ松子の一生」(2006)の中島哲也。ということは、たぶん独特の世界観になるんだろうなあ。なんだか役所広司が凄いことになっているらしい。

 これまたさっぱりわからない予告だが、浦沢直樹原作の「20世紀少年」を堤幸彦監督が実写映画化するらしい。しかも全3部作の1部なんだとか。

 暗くなってシネスコになったら、ちょっと微妙に中央付近がピンボケに。そのままジョージ・ルーカスとスティーヴン・スピルバーグが登場し、日本向けのビデオ予告。「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」は日本向けの特別映像だとか。確かに新予告ではあったけれど、ほとんど前のものと変わらない印象だった。でも、おもしろそう。

 わずかにピンあまのまま本編に突入。中央部分だったので字幕はハッキリ見えたので助かった。


1つ前へ一覧へ次へ