Shourin-Shoujo


2008年5月3日(土)「少林少女」

2008・フジテレビ/ギャガ・コミュニケーションズ/S・D・P/ROBOT/クロックワークス・1時間47分

日本語字幕:手書き風書体下/シネスコ・サイズ/ドルビー・デジタル



公式サイト
http://www.shaolingirl.jp/blog/
(全国の劇場案内もあり)

中国の少林拳武術学校を卒業し、9年ぶりに日本へ帰ってきた桜沢凛(柴咲コウ)が、実家である道場に帰ると、建物は荒れ放題で廃屋と化していた。かつてのそこで教えていたおじいちゃんの弟子たちは散り散りバラバラ。ようやく中華食堂を経営しているかつての先生岩井(江口洋介)を見つけ、アルバイトの女子大生ミンミン(キティ・チャン)から一緒にラクロスをやらないかと誘われ、一緒に少林拳をやってくれるならと合意する。ところが、その大学の学長は強い格闘家と対決したがっていて、凛の「気」からただ者ではないと知り、策略を仕掛けてくる。

65点

1つ前へ一覧へ次へ
 まるでマンガ。実写ではなく漫画だったら面白かったのかもしれない。笑いは起こらず最後までシーンとしたまま。まったく合わなかった。悲しい……。

 セリフは全編がアフレコのようで、違和感があって臨場感なし。「UDON」(2006)が楽しめた人は本作も楽しめるかも(似たようなキャラが出てるし)。ブルース・リーと「マトリックス」(The Matrix・1999・米)と「キル・ビル」(Kill Bill: Vol.1・2003・米)をパロったカンフー・シーンを撮りたかっただけ?確かにアクション・シーンは、マンガチックなところを除けば悪くないが……。

 良かったのは、オープニングのタイトルと、ラクロス部のキャプテンを演じた山崎真実と、唯一笑えて演技が自然な岡村隆史のみ。お金はかかっているのに、使いまくりのCGもふくめて他に見るべき所がなかった。使いたくない言葉だが「下らない」「ウソ臭い」「悪ふざけ」。しかも最後はスター・ウォーズのフォースかよっ!

 とにかく、ちゃんと練り込んで作ったものとは思えなかった。場当たり、思いつきで演出して行ったようなまとまりのない感じ。感情も全く伝わってこなかった。ツッコミどころ満載の脚本もどうにも納得できないもので、なんでこうなってしまったのか理解に苦しむ。小さなエピソードの積み重ねもなく大味で唐突。

 日本版「少林サッカー」(少林足球・2001・香)を狙ったのだろうが、それから少林寺拳法はともかくサッカーのことが何も伝わってこなかったように、本作は少林寺拳法とラクロスをモチーフとしていながら、少林寺拳法のことも、ラクロスのことも、何も伝わってこなかった。ひょっとしたら何も知らないで作っているのではないかと思えるほど。

 劇中のツッコミのセリフがすべてこの映画に当てはまるのが悲しい。帰国してすぐ誰彼かまわず「一緒に少林拳やらない」と誘って子供から「気持ち悪い」と言われるが、まさに主人公は気持ち悪いキャラ。柴咲コウが演じているから少しは薄められているもののこんなヤツいない。

 大学の会議で「流行りのスポーツに力を入れろ」→ラクロスとビーチ・バレー→映画はラクロスと少林拳。つまりラクロスがモチーフになっているのは流行っているというか注目度が高いからで、興味があったわけではない→何も伝わってこない、という構図。

 ラクロス部員が少林拳に誘われて「意味わかんない」って、まったくそのとおり。どうして、そうなるんだ。

 一番成長の甚だしい年ごろで9年も経っているのに、みんなひと目で誰だかわかる(写真が出るが似ても似つかない)とか、中華食堂のコックなのに信じられないほどの長髪と長いヒゲで不潔感たっぷりだったり(こんな店には行きたくない)、部員に誘われたくらいで学生じゃないのに大学の部活(愛好会レベルか?)に入れるし、少林拳は出来るかもしれないが普通の中華店の店主がラクロス部のコーチになるし、コーチがダメだと言っているのに試合の後半に自分が出るとキャプテンに宣言すると試合に出れるし、先生のくせに女の子1人で戦いに行かせるし……ああ、キリがない。

 脚本は「テニスの王子様」とか「BLEACHブリーチ」などアニメが多い十川誠志。劇場実写では「交渉人 真下正義」(2005・日)を手がけている。もう1人は「とっとこハム太郎」など、やはりアニメの十川梨香。アニメの感じがしたわけだ。アニメだったら面白かっただろうに。

 監督は「踊る大捜査線」シリーズの本広克行。「踊る……」の感じだったら面白かったはずが、なんでこうなるんだろう。残念。

 製作はフジテレビの亀山千広。どういう役目なのかわからないが、エグゼクティブ・プロデューサーは漢字で周星馳と書くチャウ・シンチー。「少林サッカー」の監督・製作・脚本・主演をした人。なぜ?

 アクション監督は野口彰宏。「黒帯KURO-OBI」(2006・日)のアクション監督も務めたというデータもあったが、allcinemaのクレジットは西冬彦。3D-CGアニメの「エクスマキナ」(2007・日)ではモーション・キャプチャー・アクターを務めたらしい。

 岡村隆史は主役を演じた「無問題」(無問題・1999・香/日)以来、久ぶりに良かった。適材適所というか、ピタリとはまった。コミカルな役でいて、締めるべきところはしっかり締める。格闘シーンなどなかなかのカッコ良さ。「無問題」に出ただけのことはある。

 ラクロス部キャブテンを演じた山崎真実は、出番はあまり無いものの、目立っていた。かわいらしさとイロっぽさが同居している感じがグー! 2004年のミスマガジン読者特別賞を受賞したそうで、グラビア・アイドルとしての活動が多いらしい。でも女優としてもっと活躍して欲しい感じ。

 ほかに「黒帯KURO-OBI」やフジのTVドラマ「SP」に出ていた鈴木ゆうじや西冬彦(本作ではプロデューサーも務めている)が出ていた。たぶん岡村隆史に代わって柴崎コウの顔を蹴っているヒゲの人が西冬彦。

 ラストにはちゃんと「終」の文字。オープニングのかつての香港カンフー映画風タイトルと合わせて、雰囲気充分。これはいい。

 公開8日目の初回、35分前くらいに着いたら新宿の劇場は長蛇の列……と思ったら、隣の劇場でやっていた「相棒」の列だった。こちらは中年男性が2人のみ。あらら……。

 GWとは言いながら小雨の中、20分ほど前に開場した時で6〜7人は1週目としてはあまりに少ないのでは。まあ、この出来だとしようがないのかもしれないが。口コミで噂が広まったか。

 最終的には406席に2.5割ほどの入り。話題作の割には少ないのでは。ファミリーもいたが、多くは中年層。女性は1/3ほどだった。

 BGMが止まり、カーテンが左右に開いて、暗くなって始まった予告編で気になったのは……大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人の「アフタースクール」は、ティーザーなのか内容が全くわからなかった。「ハプニング」はシャマランだからなあ。予告だけは思わせぶりで、また肩透かしのパターンかも。

 フレディ・ハイモア主演の上下マスク「奇跡のシンフォニー」は新しい予告になってようやく内容がわかってきた。なかなか感動的な話のよう。サラウンドで音もよく回っていた。とにかくフレディ・ハイモアがかわいい。劇場窓口で前売り券を買うと、ギター・ストラップがもらえるらしい。

 「クラッシュ」(Crash・2004・米)のポール・ハギス監督の上下マスク「告発の時」は、実話の映画化だそうで、やっぱりトミー・リー・ジョーンズが良い感じ。

 アニメ「崖の上のポニョ」は新予告に。ポニョの顔がハッキリ出る。子供が歌う主題歌もかわいく、いい感じ。崖が感じのところを見ると、結構大人向けなのだろう。TVではCGを使わずにとか宣伝していたが、見る方としては「CGだろうと手描きだろうと、そんなの関係ねえ」なのだ。ようは面白ければいい。

 スクリーンがシネスコになって、三谷幸喜の「ザ・マジックアワー」は新予告に。ギャング映画だから銃も出てくるんだ。


1つ前へ一覧へ次へ