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2008年5月4日(日)「NEXT ネクスト」

NEXT・2007・米・1時間35分(IMDbでは96分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(Panavision Genesis、 HDTV)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://next-movie.gyao.jp/
(入ると画面極大化。音にも注意。全国の劇場案内あり)

ラスヴェガスで小さなマジック・ショーを見せているマジシャンのクリス・ジョンソン(ニコラス・ケイジ)は、本当に2分先の未来が見える超能力を持っていた。そして、最近ある女性のイメージを見るようになっていた。時間と場所だけがわかり、クリスはほとんど毎日そのダイナーに同じ時間に通っていた。そしてついにその女性リズ(ジェシカ・ビール)がダイナーに現われる。クリスは別れた男に絡まれているリズを救い、お礼としてフラグスタッフまで車に乗せて行ってもらうことになる。しかし、テロ事件を解決するためクリスの特殊能力が使えると考えたFBIと、それを知ったテロ・グループの両方から追われることになる。

74点

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 たぶんじっくり考えるとつじつまの合わない事がいろいろと有るのだろうが、少なくとも見ている間はひょっとしたらあるかもしれないと思わせるおとぎ話を堪能できた。スピード感たっぷりで、ハラハラドキドキ、銃撃戦も多っぶりあり、見どころも多い。ただ、2分先の未来が見える超能力というのが受け入れられないと、楽しめないかもしれない。

 演出的には、現在起こっていることと、主人公が見た2分先の未来とを混在させ、観客を驚かせる。あたかもタイムマシンで過去をやり直すかのように時間をさかのぼる。しかも何度も。まるでタイム・スリップSFアクションの「リバース」(Retroactive・1997・米)のよう。

 面白いのは、主人公が見える2分先の未来は、自分に関してだけということ。他人の未来は見えないのだ。そして、未来は見た時点での未来であるため、見るたびに変わるということ。これが足かせになって、いくら非現実的な話とは言え、作者の自由自在にはできないようになっているのだ。

 ただ、謎の女性リズだけは例外で、彼女のことは見えるらしい。そして、どうやら2分という制限もない。それがちょっと引っかかるところではあった。加えて、ロシアから強奪されてLAに持ち込まれた核爆弾の話が完結していない。クリスとリズの話はほぼ完結しているけれど。これが気になる人は、本作の評価も低いだろう。

 原作は映画「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米ほか)や「トータリ・リコール」(Total Recall・1990・米)、「マイノリティ・リポート」(Minority Report・2002・米)で知られるSF作家モフィリップ・K・ディックの短編小説「ゴールデンマン」。

 脚本は「トータリ・リコール」の脚本や「マイノリティ・リポート」の製作総指揮を手がけてたゲイリー・ゴールドマン、「コン・エアー」(Con Air・1997・米)や「60セカンズ」の脚本で(Gone in 60 Seconds・2000・米)ニコラス・ケイジと仕事をしたジョナサン・ヘンズリー、つい最近スーパーマン役者ジョージ・リーブスの死の謎に迫った「ハリウッドランド」(Hollywoodland・2006・米)の脚本と製作総指揮を手がけたポール・バーンバウムの3人。

 監督は、アラスカでのサバイバルを描いた傑作アクション「ザ・ワイルド」(The Edge・1997・米)のリー・タマホリ。面白かった「007/ダイ・アナザデイ」(Die Another Day・2002・米/英)も手がけている。本作の前に、続編ながらなかなか骨太アクションの「トリプルX ネクスト・レベル」(xXx: State od the Union・2005・米)を撮っているが、なぜか日本ではビデオ発売という扱い。面白いのに。やはりアクションがうまい人だと思う。

 本作は企画の時点でゲイリー・ゴールドマンが、すぐにニコラス・ケイジに見せたという。ニコラス・ケイジは「ウィッカーマン」(The Wicker Man・2006・米)や「ゴーストライダー」(Ghost Rider・2007・米)など結構イタイ作品に出るなど、かなりのチャレンジャー。スターぶらず、チャレンジ精神にあふれているところがいい。本作の主人公の座右の銘は「善人はバカをみる」。

 相手役はジェシカ・ビール。「悪魔のいけにえ」(The Texas Chainsaw Massacre・1974・米)のリメイク「テキサス・チェーンソー」(The Texas Chainsaw Massacre・2003・米)では、キレイで色っぽいだけだったが、ウェズリー・スナイプスの吸血鬼映画「ブレイド3」(Blade: Trinity・2004・)や、SFアクションの「ステルス」(Stealth・2005・米)でアクションも行けることを証明し、つい最近、帰国兵士のその後を追ったドラマ「勇者たちの戦場」(Home of the Brave・2006・米ほか)でシリアスもできるところを見せた。それでか、本作はアクションだがジェシカ・ビールは普通のヒロインとして出ている。本作ではトヨタのピックアップが愛車。

 ニコラス・ケイジを利用しようとするFBIエージェントは、ジュリアン・ムーア。強く印象づけられたのはシリーズ2作目の「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」(The Lost World: Jurassic Park・1997・米)だったように思うが、確かこれもシリーズ2作目の「ハンニバル」(Hannibal・2001・米)で前作でジョディ・フォスターが演じたFBIエージェントを演じていた。どちらかと言えば強い女のイメージが強い人。本作でも結構強い。そしてFBIの射撃訓練も見せてくれる。手前のダミー人形を手で押し倒しながら奥のターゲットをダブル・タップするというもので、ジュリアン・ムーアはうまかった。よほど練習したのだろう。ラスト、この技を実際の場面で使って見せる。使っていた銃はグロック。

 テロリスト側の殺し屋らしい男は、ドイツ生まれのトーマス・クレッチマン。「戦場のピアニスト」(The Pianist・2002・仏ほか)で音楽好きのドイツ軍将校を演じていた人。第三帝国の崩壊を描いた傑作「ヒトラー 〜最期の12日間〜」(Der Untergang・2004・独ほか)でも側近のSS将校を演じていた。使っていた銃はUSP。サイレンサーも使っていた。ライフルはPMGっぽかったが……。

 冒頭、ニコラス・ケイジが逃げ込むガレージにいたおやじさんが、「コロンボ」のピーター・フォーク。最期に見たのはウェズリー・スナイプスのボクシング・アクション「デッドロック」(Undisputed・2002・米)だったような気がする。1927年生まれだからもう80歳を過ぎた。すがに歳をとったなあ。

 銃器を担当したのは、IMDbではヴィンセント・ジョセフ・フラーティになっていたが、映画のクレジットではマイケル・パパックだった。どいうことなのか。

 銃はほかにも、テロリスト組織の女殺し屋がサイレンサー付きのワルサーP99やMP7を使う。そしてテロリスト一味はミニ・ウージーやMP5K、ベレッタM12などを使用。対するFBIの特殊部隊は、M4A1カービン。フラッシュ・ライトやレーザー・サイト、ナイト・ビジョンなどを装備。突入する時は全員ガード・ポジションで、シューティング・グラスも装着しているし、リアルだなあと思っていたら、公式サイトのプロダクション・ノートによれば、軍隊や警察に勤務したことがある人材を派遣するキャスティング会社から銃の扱いになれた俳優を送り込んでもらったという。なるほど。

 時計や女性をコラージュしたタイトルは、Yu+Co。エンディング・クレジットも凝っていて、普通とは逆に下から上にあがっていくというもの。なかなか。

 公開9日目の初回、前日に席を確保しておいて、15分前くらいに付いたら銀座の劇場はすでに開場済みで、25人くらいの人。10分前くらいから案内のスライドが上映され、徐々に人が増え出して、予告が始まってもゾロゾロ入ってきて、最終的に540席に4割くらいの入り。これはちょっと少ないのではないだろうか。もっと入ってもいい映画だと思う。

 やはり中高年が多く、どちらかというと白髪が目立っていた。父親に連れられた中学生くらいの男の子もいたが、若い人は数人程度。男女比はほぼ半々くらいだった。

 半暗で始まった予告で気になったのは……ジュリアン・ムーアが主演する「ブラインドネス」。人類の90%が失明するという恐そうな映画。日本人俳優の伊勢谷友介、木村佳乃も出演しているらしい。

 ジョディ・フォスターがひきこもりの作家を演じる「幸せの1ページ」。ひきこもりをジェラルド・バトラーが引き出してくれるらしいが、わかったのは、作家のジョディ・フォスターはMacを使っていたということくらい。

 「ゲゲゲの鬼太郎」は恐いオープニングは同じだが、新バージョンになった。本気なのかオチャラケなのか……。

 「おくりびと」は、山崎努だし、なんとなく「お葬式」(1984)の雰囲気で、脚本が小山薫堂。葬儀屋の話らしい。

 上下マスクのバットマン最新作「ダークナイト」は、とにかく何回見ても絵がスゴイ。期待してしまうなあ。8月公開らしい。


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