2008年5月10日(土)「P2」

P2・2007・米・1時間37分(IMDbでは米版98分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(Panavision 、Technovision)/ドルビー・デジタル、dts

(米R指定、日R-18指定)

公式サイト
http://p2-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内あり)

クリスマス・イブの夜、アンジェラ(レイチェル・ニコルズ)は、書類を作り直すことになって1人、残業することに。やっと仕上げて帰ろうとすると、皆帰った後で、出入り口が閉まっている。車は故障してエンジンがかからず、諦めてタクシーを呼ぶが、ドアが開かず乗ることが出来ない。警備員に空けてもらおうとすると、その姿が見えない。そのとき、アンジェラは何者かに襲われ気を失ってしまう。

71点

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 なかなか恐い。と言っても、普通に恐いというより、残酷描写と、サイコで粘着質な犯人と、怯えたり怒るヒロインの顔が怖い。パターンとしては、逃げ道のない状況から戦いながら逃げるというもので、ありふれている。最近で言えばケイト・ベッキンセールが出た「モーテル」(Vacancy・2007・米)と同じ。ただ、本作は、残業でビルに閉じこめられ、外に出られなくなるというのが新しい(「ダイ・ハード」(Die Hard・1988・米)に似ていなくもないが)。出来で言えば「モーテル」の方がアイディア満載でよくねられていて、段違いに上だと思う。予算は遥かにこちらの方が低予算だろうけれど。

 たぶん、シンプルな構成と着想は良かったのに、意外な展開というのがなく、観客が想像するように転がって行くのと、せっかくの美人ヒロインの泣き顔や怒り顔が、あまり見たくない感じにゆがむこと。叫びや怒りのオーディションはやらなかったのだろうか。もっと怯えた顔や、叫ぶ顔がキレイな女優さんがいたのではないだろうか。もちろんメイクや撮り方もあるのたろうが、度を越さないというか、見ても嫌な感じがしない表情が良いと思うけど。確かに胸は大きいが、これが監督の趣味か。

 しかも、予告で犯人の顔を見せちゃってるし。だから驚きがない。あ、コイツが襲ってくると先にわかってしまう。これはいかんなあ、いくら犯人がわかってからが長いといっても。

 主人公の行動が、どうにも観客のひとつ後を遅れてくる感じ。たとえば、逃げる時は監視カメラの死角にはいるとか、カメラを壊すという行動に出るのが遅過ぎ。さらには、火をつけて火災報知器を鳴らせばいいのに、やらないし……。そして、エレベーターの箱って、水が溜まるほど気密性が高いのだろうか。犯人はエレベーター内に立てこもるアンジェラを水攻めにするのだが……。胸の大きな美女は、やっぱりびしょ濡れにしないと、という発想か。

 そして、ラストがいまひとつ納得できないというか、やり過ぎ。相手は逃げられないのだから、ここまでやる必要はないと観客が思ってしまう。もう充分だろうと。必要なかった。そこもいかんなあ。

 主役のアンジェラを演じたレイチェル・ニコルズは、主にTVで活躍してきた人。最近では「エイリアス」シーズン5に出ていたらしい。素顔はとても清楚な感じの美女なのに、本作では怒りに顔がゆがみ、泣き叫ぶ顔が不細工に映っていて、ずいぶんと損をしていると思う。ただ新作は何本か控えていて、ステップにはなったようだ。映画ではリメイクの「悪魔の棲む家」(The Amityville Horror・2005・米)に、たぶんベビー・シッター役で出ていた。近々公開の「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」にも出ているらしい。

 警備員を演じたウェス・ベントリーは、目つきがイってる感じで、良かった。話題になった「アメリカン・ビューティ」(American Beauty・1999・米)では、隣家の厳しい軍人の親に育てられた青年を演じていた。「サハラに舞う羽根」(The Four Feathers・2002・米/英)で主人公ヒース・レジャーの親友を演じ、つい最近、ニコラス・ケイジの見どころのない「ゴーストライダー」(Ghost Rider・2007・米)で魔界の叛逆者を演じていた。まさに本作の警備員にはピッタリだったのかも。普通にしていればすごいハンサムな人。

 監督は、本作がデビュー作というパリ生まれのフランク・カルフーン。ももと役者で、「ハイテンション」(Haute Tension・2003・仏)にも出ていたらしいが記憶にない。この作品でライターのアレクサンドル・アジャとグレゴリー・ルヴァスールと出会い、本作で2人がプロデュースと共同脚本も手がけることになったらしい。

 本作では銃の代わりにスタンガンが登場し、それがかなり恐い。血も出まくり。存酷なシーンでプレスリーの“ブルーハワイ”を使ったのは黒澤監督の言うコントラプンクトなんだろうけれど、それほど効果的だった気はしない。うまくいっていたのはリチャード・ドナー監督の児童虐待感動作「ラジオ・フライヤー」(Radio Flyer・1992・米)くらいではないだろうか。

 公開初日の2回目、銀座の劇場は30分前くらいに着いたらロビーにオヤジが5〜6人。20分前くらいに15〜20人になって狭いロビーがいっぱいになってきたため、自然にドア前に列ができて、それから案内があった。

 10分前に入場となって、全席自由の場内へ。休憩時間が10分しかないので、のんびりしていられない。この時点で35人くらいの入り。スクリーンが低いので、混むとスクリーンの下、つまり字幕が見えなくなる劇場だが、最終的には130席に3割ほどの入りでほっとした。ほとんど中高年(さすがオヤジ劇場)で、若い人は5人に1人くらい。女性は10人に1人くらいで、ほとんどオバサン。

 暗くなって始まった予告は……タイ映画がぞくぞく公開されるらしい。どうだろう。出来の良い作品なら良いが、一山いくらで買った作品だと……。

 ビデオ作品で、家で見てもどうかと思うほどの出来だった「スターシップ・トゥルーパーズ2」(Starship Troopers 2:Hero of the Federation・2003・米)の続編「スターシップ・トゥルーパーズ3」が、今度はポール・バーホーベンのプロデュースで作られたらしい。ただやっぱのビデオ発売になったもので、しかも2005年の作品をいまころ劇場公開するとは……。IMDbで「3」は「2」よりはましな評価だったから、少しはまともかもしれない。イギリス作品に替わっているし。残酷シーンが多いらしく「2」同様R-15指定。

 「マーキュリーマン」は、CG使いまくりのタイ映画。なかなか凄そうだし、タイのレベルもわかるから見たい気もするが、日本語吹替だしなあ。

 マシュー・マコノヒーとケイト・ハドソンが再び共演する宝探し映画「フールズ・ゴールド」はおもしろそう。ただ予告をやっているのに前売り券はまだ売っていなかった。5/31からだというのに。ひょっとして前売り券無しか。

 ケビン・コスナーの久々の新作「Mr.ブルックス」は、デミー・ムーアやウィリアム・ハートが出ている大作らしいのに、小劇場での公開とは。そんなに酷いのか。

 とにかくタイトルの出るのが遅い。TV・CMのように短いものならいいが、劇場予告は長いのだから先にタイトルを出せ。そして最後にも出せ。覚えられない。一体何のための予告なんだろう。

 スクリーンがシネスコになったらややピン甘に。後半では合った。レンズが替わった時の対処をきちんとして欲しいなあ。近くにいた若い奴はも席に着くなり靴を脱ぐし、マナーなんてまったく関係ないようだ。


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