Mist


2008年5月11日(日)「ミスト」

MIST・2007・米・2時間05分(IMDbでは126分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/ビスタ・サイズ(with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R-15指定)

公式サイト
http://www.mistmovie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

町を嵐が襲った翌日、映画ポスターの作家デヴィッド(トーマス・ジェーン)は、食料や壊れたものの買い出しに、隣家の弁護士ノートン(アンドレ・ブラウアー)を乗せ自家用車で町のスーパーへ行く。しかし、山から濃い霧が降りてきて、消防車やパトカー、軍が出動する騒ぎとなる。やがてスーパーもキリに包まれると、血を流した男性ダン(ジェフリー・デマン)が走り込んできて、霧の中に何かいるから出てはダメだと告げる。

73点

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 うーん、描こうとしたのは大いなる悲劇か、99%まで努力したが最後の1%で諦めてしまった者たちへの罰か。神を信じなかった者たちの運命か。あまりに過酷。落ち込む。これは元気が良い時に見ないと、いろんなことをやる気力を失ってしまうかもしれない。恐怖を盛り上げるリアルな残酷シーンも満載だ。気持ちが悪くなるほど。

 話としては、NHKで放送した同じスティーヴン・キングの「ランゴリアーズ」とか「世紀の嵐」(悪魔の嵐?)に似ている感じがした。何かがやって来る恐怖と、それから逃れようとする人々の協力や葛藤。大変に良く出来たドラマが展開する。映画としての出来は決して悪くないというか、大変良いと思うが、久しぶりの休日などにお金を払って自分から積極的に見たい作品かというと、かなり疑問を感じる。たまにこういう作品も良いかもしれないが……。

 モンスターというか謎の生物も蜂みたいだったり、蜘蛛みたいだったり、しかも巨大で、生存本能だけで生きているようで、エイリアンっぽくて恐い。デザインしたのはグレゴリー・ニコテロという人。K.N.B.エフェクトの創設メンバーで、最近手がけたのは「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」(The Chronicles of Narnia: The Lion, the Witch and the Wardrobe・2005・米)シリーズ。古くはサム・ライミ監督の突き抜けたカルト・ホラー「キャプテン・スーパーマーケット」(Army of Darkness・1993・米)なども手がけている。本作のフランク・ダラボン監督とは「グリーンマイル」(The Green Mile・1999・米)で組んでいるらしい。

 視覚効果監督はcafeFXのエヴェレット・バレル。「ヘルボーイ」(Hellboy・2004・米)、「ブレイド3」(Blade: Trinity・2004・米)、「シン・シティ」(Sin City・2005・米)、「パンズ・ラビリンス」(El Laberinto del Fauno・2006・メキシコほか)を手がけている人。濃密なキリの感じや、虫に刺され腫れ上がった顔などの恐ろしい演出はこの人の手によるのだろう。クリーチャーたちも、まると本当にそこにいるようだった。いったいどうやって撮ったんだろうか。3D-CGを使っているにしても、ちゃんと登場人物たちとやりとりしているし。メイキングを見てみたい。グレゴリー・ニコテロとは親友らしい。

 監督・脚本・プロデュースはフランク・ダラボン。言わずと知れた「ショーシャンクの空に」(The Shawshank Redemption・1994・米)や「グリーンマイル」の名監督。スティーヴン・キング作品の映画化が多い人。キング作品ではないが、古い映画館を復興する「マジェスティック」(The Majestic・2001・米)も雰囲気は似ていて、良かったけど。

 フランク・ダラボン監督作品ということでか、フランク・ダラボン作品に出たことのある「フランク・ダラボン組」役者も多い。ヒロインの女性教師は「マジェスティック」のヒロイン、ローリー・ホールデン。たまたま護身用に唯一銃を持っている。それがコルトのエジェクター・シュラウドのついたステンレスらしい2インチ・リボルバー。ディテクティブあたりだろうか。ラバー・グリップが付いていたような。弾は装填してなく、スピード・ローダーが2個(12発)。これが重要なものになる。

 駆け込んでくる鼻血のおじさんは「グリーンマイル」の看守のひとりを演じたジェフリー・デマン。「マジェスティック」にも「ショーシャンクの空に」にも出ている。

 最初、主人公と対立し強がって見せるが実は弱いという、パニック映画に良くいる人物ジムは、「ビルとテッドの地獄旅行」(Bill & Ted's Bougus Journey・1991・米)のコミカルな死神を演じたウィリアム・サドラー。「ダイ・ハード2」(Die Hard 2・1990・米)では凶悪なテロリストの軍人を演じている。もちろん「ショーシャンクの空に」、「グリーンマイル」にも出ている。

 主役のトーマス・ジェーンは、「パニッシャー」(The Punisher・2004・米/独)でパニッシャーを演じた人。

 その息子ビリーは、「バベル」(Babel・2006・仏ほか)でブラッド・ピットの息子を演じたネイサン・ギャンブル。とてもかわいい少年。

 宗教というか神の名を使い自分の思い通りにしようとする恐ろしい女性、ミセス・カーモディを演じたのは、「スペースカウボーイ」(Space Cowboys・2000・米)や「ミスティック・リバー」(Mystic River・2003・米)など、クリント・イーストウッド作品に良く出ているマーシャ・ゲイ・ハーデン。ブラッド・ピットのラブ・ストーリー「ジョー・ブラックをよろしく」(Meet Joe Black・1998・米)の式を取り仕切る姉役は見事だった。

 スーパーの副店長で、1994年に州のピストル射撃チャンピオンになったことがあるというオリーを演じたのは、トビー・ジョーンズ。ドリュー・バリモアの正統派おとぎ話「エバー・アフター」(Ever After・1998・米)や、ジョニー・デップが“ピーター・パン”の原作者を演じた「ネバーランド」(Finding Neverland・2004・英/米)に出ていたらしいが、ここまで大きな役は少なかったのでは。いい味を出している。ちなみにシリーズ第2作「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(Harry Potter and the Chamber of Secrets・2002・米)で屋敷しもべのトビーの声を出していたのだとか。

 主人公のお隣さんで、嫌らしい敏腕弁護士を演じているのは、アンドレ・ブラウアー。つい最近、残念だった続編映画「ファンタスティック・フォー:銀河の危機」(4: ERise of the Silver Surfer・2007・米ほか)で、あまりたよりにならない将軍を演じていた人。

 レジ係の美女サリーを演じていたのは、アレクサ・ダヴァロス。なかなか面白かった「ピッチブラック」(Pitch Black・2000・豪/米)の続編「リディック」(The Chronicles of Ridick・2004・米)でリディックに憧れていた少女を演じていた。本作では虫に刺されてとんでもない顔に!

 公開2日目の初回、新宿の劇場は35分前に着いたら誰もいなかった。驚いたことに、若い男女が後から来たが、後ろに並ばず、わざわざ横に陣取る。まあ2列に並ぶこともあるだろうから……でもこれは普通じゃないのでは?

 雨の日だったが20分前になるまで開場しなかった。整列にも来ないしなあ。この時点で7〜8人だったから、しようがないか。全席自由で、ここも混むとスクリーン下の字幕は読みにくくなる。15分前くらいから増え出してきて、最終的には406席の5.5割ほどが埋まった。なかなか優秀。20〜30大くらいの若い人が多く、中高年は1/3くらい。男女比は6対4くらいで男性の方がやや多かった。

 観客は「ショーシャンクの空に」や「グリーンマイル」を期待してきたのではないだろうか。まったくテイストの違う作品だし、デートには全く向かないのではないかと思う。見終わった後、黙ってしまうかも。まあ、話すことが多いかもしれないけど……。

 暗くなって、いきなり本編からの上映。予告編なし。これはつまらない。冒頭、主人公が描いている映画のポスターは、イーストウッドの「アウトロー」風。


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