The Bucket List


2008年5月11日(日)「最高の人生の見つけ方」

THE BUCKET LIST・2007・米・1時間37分

日本語字幕:手書き書体下、桜井裕子/ビスタ・サイズ(with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/bucketlist/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

クイズオタクで自動車修理工のカーター(モーガン・フリーマン)は検査で癌が発見され入院することになる。同じ頃、一代で財を築いた大金持ちの実業家エドワード・コール(ジャック・ニコルソン)も血を吐いて、自身の経営する病院に入院する。病室はカーターと同じだった。エドワードの病院はエドワードの経営方針により1病室2床の決まりで、個室はなかったのだ。そしてエドワードは医師からあと6カ月の命と告げられる。やがて話をするようになった2人だったが、あるときエドワードはカーターが書いていたメモを見つける。それは死ぬまでにやっておきたい「棺おけリスト」だった。ただのリストだとカーターは言うが、エドワードはそれを2人で片っ端からやろうと言う。金はいくらでもあるし、もどっても皆に別れを告げたり、もうどうでもいい経営のことなどをやらなければならないだけだと。

75点

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 ちょっと来た。あやうく涙が流れそうになった。「いつか眠りにつく前に」(Evening・2007・米/独)の男版というか、別な最後の瞬間を描いた作品。ガンによる病死ではあるが、こんな最期であればいいだろうなと思う。しかし、これは普通の人には無理だろう。自動車修理工であるモーガン・フリーマンにしても、立派な家に住み、たくさんの幸せな家族に囲まれている。ジャック・ニコルソンは大金持ちだ。病室でも世界の美食を楽しみ、いざとなれば世界中プライベート・ジェットでどこでも出かけて行く。大多数の人はもっと過酷な現実があると思う。しかし、映画なんだから、こんな最期があっても良いじゃないかという、これはそんなお話。なにより、感動のストーリーだが、笑える。

 とにかく素晴らしいのは、一代で財産を築いた男らしい傲慢さをもった実業家エドワード・コールをジャック・ニコルソンが実に本当らしく演じていること。こんなヤツいるなあという感じ。しかもいいのは、ただ傲慢なだけではなくて、本当は人間味があって、苦労を知っているだけに優しい面も弱い面もある雰囲気を微妙に醸し出していること。これが名優ということなんだろう。たぶん最初は誰でも嫌うだろうが、だんだんに彼を好きになって、ラストでは彼のために涙を流す。そんなキャラクターを作り上げている。やっぱり有名なのはロジャー・コーマンの「リトル・ショップ・オブ・ワラーズ」(The Little Shop of Horrors・1960・米)だろうか。この映画がきっかけでコーマン映画に多く出るようになったらしい。ほかにも「イージー・ライダー」(Easy Rider・1969・米)、「チャイナタウン」(Chinatown・1974・米)、「カッコーの巣の上で」(One Flew over the Cuckoo's Nest・1975・米)、「シャイニング」(The Shining・1980・英)など、名作がたくさんある。アフリカでライオン撃ち用のビッグガンを撃って、あまりの反動でひっくり返るが、本当なら象撃ちライフルではないのか。.460ウェザビー・マグナムとか。たぶん「ライオンは眠っている」の歌を流したかったんだろう。読んでいる本のタイトルは「サムライ」。最高のコーヒーはコピ・ルワク。

 もちろんモーガン・フリーマンはいい。ボクはとても好きな役者さんなのだが、本当に普通の感じが何とも言えずイイ。ヘンに力が入っておらず、エキセントリックでもない。普通の演技こそがむずかしいと思うし、どこかに癒すような感じというのか、安心させる感じというのか、父のような威厳というのか、いいなあ。やっぱり「ドライビングMissデイジー」(Driving Miss Daisy・1989・米)の運転手、イーストウッドの「許されざる者」(Unforgiven・1992・米)の相棒、「ショーシャンクの空に」(The Shawshank Redemption・1994・米)の調達係、「ブルース・オールマイティ」(Bruce Almighty・2003・米)の神さま、「ミリオンダラー・ベイビー」(Million Dollar Baby・2004・米)の雑用係などで確かな存在感を表していた。個人的には「ベティ・サイズモア」(Nurse Betty・2000・米)とか「ダニー・ザ・ドッグ」(Danny the Dog・2005・仏ほか)なんかも好きなんだけど。

 非常にクールで無表情、ビジネスライクな、それでいて、やぱり内では熱いヤツの秘書トマスを演じたのは、ショーン・ヘイズ。「キャッツ&ドッグス」(Cats & Dogs・2001・米/豪)で邪悪な猫のティングルスの声を出していた人。なかなかとぼけた感じでイイ。

 なんと、劇中モーガン・フリーマンの息子を演じているのは、実際の息子アルフォンソ・フリーマンなんだとか。

 ユニークな脚本を書き上げたのは、ジャスティン・ザッカム。1999年くらいから活躍を始めているようだが、これまでほとんど注目されることになかった人。本作がいきなりメジャー作品となったことで、今後活躍の領域が広がって行くことだろう。それにしても、いままで評価されていなかった人がいきなり高尚な傑作をものにするとは、神が降りた感じなのだろうか。

 監督は傑作青春映画「スタンド・バイ・ミー」(Stand by Me・1986・米)のロブ・ライナー。この作品の後も正統派おとぎ話「プリンセス・ブライド・ストーリー」(The Princess Bride・1987・米)、メグ・ライアンのラブ・ストーリー「恋人たちの予感」(When Harry Met Sally...・1989・米)、再びスティーヴン・キングの原作を映画化した「ミザリー」(Misery・1990・米)、ジャック・ニコルソンと組んだ基地内の殺人事件を描いた「ア・フュー・グッドメン」(A Few Good Men・1992・米)、少年の冒険談「ノース/小さな旅人」(North・1994・米)など、傑作を連発している人。最近どうしたのかなあと思っていたら、これだ。

 公開2日目の3回目、前日に座席を確保しておいて、20分前に着いたら銀座の劇場は入場制限中。出て行く人が多く、ごった返していた。混乱を避けるためらしい。それほど混んでいた。5分ほどして入場。中高年が多いが、女性は若い人が多い感じ。10分前から案内を上映。ただ場内が明るいので暗い絵は良く見えない。

 最終的に2F席は100%埋まった。満席。男女比は4対6で女性の方が多かった。真ん中の前席2列が来るのが遅い。たぶん早くに座席を確保した人たちだ。ほとんどが予告が始まるころ席に着いた。来るのが遅い。予告が見にくいではないか。

 気になった予告編は、ジャッキー・チェンとジェット・リーが共演する上下マスクの「ドラゴン・キングダム」。アメリカの若者がそこへ紛れ込んで……如意棒がどうしたこうしたで……ようするにアドベンチャー映画らしい。7/26公開とか。

 上下マスクの「カンフー・パンダ」は新予告に。使っている曲は布袋寅泰の「キル・ビル」のじゃない? 「カンフー・ファイティング」のバージョンもあるようだけど。同様に上下マスクの「ナルニア国物語:第2章カスピアン王子の角笛」も新予告に。やっとTV・CMに追いついた。


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