Rambo


2008年5月24日(土)「ランボー 最後の戦場」

RAMBO・2008・米/独・1時間30分(IMDbでは91分)

日本語字幕:手書き風書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル(IMDbではdts、SDDSも)

(米R指定、日R-15指定)

公式サイト
http://rambo.gyao.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

ビルマにほど近いタイで暮らすジョン・ランボー(シルヴェスター・スタローン)の前にアメリカのコロラド州から来た医師グループが、ボートでビルマのカレン族の元に医療品を届けるためにボートを出してくれと現われる。ランボーはビルマは戦争地域で危険だから帰れと言うが、リーダーの医師マイケル(ポール・シュルツ)の妻サラ(ジュリー・ベンツ)の真剣さに、ついボートを出す。ところが、しばらくして支援団体の男が現れ、グループが10日経っても戻ってこないため、傭兵を雇ったので、彼らをグループを降ろしたところまで運んでくれという。責任を感じたランボーは、傭兵たちと行動を共にすることにするが……。

73点

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 わかりやすい。というかシンプル、もっというと単純過ぎ。制止も聞かず危険地帯に入ったグループを助け出すだけ。ほかにヒネリもないしサイド・ストーリーなどもない。90分だし。直球勝負。ただ、凄絶な血まみれの殺戮あるのみ。不快だが勧善懲悪と言うか、これがアクションの王道か。小難しい理屈などはない。

 見終わっても何も残らないが、いかにもアメリカらしい映画と言う感じはする。言ってわからんような悪党どもは、力でねじ伏せるしかない。逮捕などではなく、息の根を絶つんだと。劇中ランボーが医師団に聞く「武器は持ってきたか」。医師は「もちろん持ってきていないさ」と答えると、「それじゃ何も変えられない」と。そんな段階じゃないし、そんに甘い考えが通じる相手ではないと。

 軍政側のやり方は、「ブラッド・ダイヤモンド」(Bloos Diamond・2006・米)のRUF(革命統一戦線)と同じ。村を襲い、子供をさらって洗脳し兵士に仕立て上げる。また、捕虜たちに地雷原を走らせて、兵士たちで賭けをする。まあ、とにかく徹底して悪い。敵を殺すのに罪悪感を感じたり、ためらいがないようにだろう。ヒネリはないがストーリー的には「ティアーズ・オブ・ザ・サン」(Tears of the Sun・2003・米)と同じ。残酷さとリアルさはこちらの方が上。

 日本では現政権と国交があることから、軍事政権の主張通り1989年以降ミャンマーと呼んでいるが、アメリカなどは軍事政権を認めていないのでそれまでの呼称ビルマを使い続けている。もちろん映画でもビルマであり、写る看板などもBurmaとなつているが、なぜか字幕はすべてミャンマー。なぜそこまで政治的な判断を持ち込むのか。映画なんだから、これくらいは政治的な表記にかかわらず、オリジナルの表記・読みを使えば良いのではないか。はっきりとビルマと言っているし、Burmaと表示されているのに違和感があり過ぎる。

 ランボーが医師たちを連れて海賊のテリトリーを抜ける時に見つかって、ワルサーP38なんかを持っている海賊3人を、ベルトに挟んだ状態から抜き撃ちで、2発ずつタップで倒すとき、ガバメントらしいM1911オートを使う。トム・クルーズの「コラテラル」(Collateral・2004・米)に対抗したのか、なかなか速い。9mmじゃなく45オートらしいし、その点で上を行っているか。ほかに使うのはアーチェリー。ボウガンではなくアーチェリーの方が筋肉を使う感じだ。お約束の、セレイションのある大型ナイフも使うが。

 政府軍はだいたいAK。折りたたみストックのモデルが多かったようで、AKMSあたりか。車載やボートに積んでいたのはM2重機関銃。ものすごい威力で、撃たれると手足が飛んだり、頭が飛んだり、至近距離では胴体が切断されたりする。すぐ目の前のドライバーなんかは後ろから撃たれてミンチになる。これはCNNなどのイラク戦争の報道映像で(ネガポジ反転されていたが)放送された映像などの影響を受けてのことではないだろうか。恐ろしい。銃声も半端なく大きく、ドキッとするほどまがまがしい。耳を聾するほどだ。普通のエンターテインメント作品とはハッキリ違うリアルさ。しかもハイスピッド・シャッターで、「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)のように克明に描いている。

 傭兵たちは、どうやって持ち込んだのかは不明だが、M4カービンやSG551、レール付きFNCのようなカービンなどで武装。クレイモアも持っている。捕虜たちをトレーサーで機銃掃射するさまはさらに恐ろしい。

 グレアム・マクダヴィッシュ演じる元SASという威張ったスキンヘッドの男ルイスは、ストレートな形の奇妙なポンプ・ショットガンを使用。どちらかというとヒールなので、あまりSASらしさを発揮していないところが残念。どこかで見たことがあると思ったら、「トゥームレイダー2」(Lara Croft Tomb Raider: The Cradle of Life・2003・米ほか)に潜水艦艦長役で出ていたらしい。

 マシュー・マースデン演じる通称スクールボーイと呼ばれているスナイパーが使うのは、バレットM82A1(銃身が短かったようだが)。ナイト・スコープも使用し、中央のクロスが赤く光る。サイレンサーも使用するが、ものすごい音が鳴り響く。もちろん50口径なのでスゴイ威力で、至近距離なので頭なんかは簡単にぶっ飛ぶ。恐ろしい。いけ好かない傭兵たちの間で唯一の良いヤツ。「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米)で、たしか手を骨折して参戦できない兵士を演じていたような。大蛇映画の続編「アナコンダ2」(Anacondas: The Hunt for the Blood Orchid・2004・米)、最近では「バイオハザードIII」(Resident Evil: Extinction・2007・仏ほか)にも出ていたらしい。

 ほかにもドラゴンのような誘導ミサイルも登場する。

 医師団のリーダー、マイケル・バーネットを、実に嫌らしく不快に演じて見せたのは、人気TVアクション「24」のシーズン3でジャック・バウアーの上司をこれまた嫌らしく演じていたホール・シュルツという人。劇場映画では未解決連続殺人事件を描いた「ゾディアック」(Zodiac・2006・米)にも出ていたらしい。

 その妻の金髪美人サラはジュリー・ベンツ。こちらもどこかで見たことがあるなあと思ったら、サラ・ミシェル・ゲラーのTV「バフィー〜恋する十字架」(Buffy the Vampire Slayer・1997〜2000・米)のシリーズに同じ役名で何度か出ていたらしい。その後、ダコタ・ファニングのUFOドラマ「テイクン」(Taken・2002・米)にも出ている。劇場映画は少ないようだが、今後どんどん出て欲しい。

 監督と脚本はもちろんシルベスター・スタローン。1946年生まれというから、すでに62歳。それでこのアクションはスゴイ。ちゃんと自分でやっているし、筋肉もりもりの体は本物で、動きにも切れがある。「沈黙シリーズ」とやらをだらだらと続けている方にお見せしたいほどだ。危険なシーンはともかく、ちょっとした走るシーンも吹替だったり、太ってしまって切れが無くなり、顔アップは必ず影が入るようになっていたり……なんてことは全くない。まだまだアクション・スターなのだ。素晴らしい。ただ、残念なことに「ロッキー」シリーズと「ランボー」シリーズ以外はあまりパッとしない。

 公開初日の初回、銀座の劇場は50分前に着いたら25〜30人くらいの列。ほとんど中高年で、若い人は3人くらい。女性は1/4〜1/5くらい。45分前に会場となったがも窓口が1つだけで、入場に時間がかかる。この時点で50〜60人くらい。

 初回のみ全席自由で、17席×2列のプレミアム・シート(特に見やすいわけではない)も自由。最終的には654席に7割ほどの入り。まあまあというところか。若い人が少し増えて1/3〜1/4くらいに。ただ、下があきらかに父に連れられた小学生くらいの男の子、ファミリーで来ていた中学生くらいの女の子もいたが、R-15って親同伴でも見れないのではなかったか。関係者らしい6〜7人の一団もいた。本編が始まると横のドアから出て行くので、光が入る。こっそりと後ろから出て欲しい。

 予鈴、本鈴で、半暗になって始まった予告で気になったのは……キャメロン・ディアスとアシュトン・カッチャーのラブ・コメ「ベガスの恋に勝つルール」は、ベガスで知り合った若い二人が勢いで結婚して、別れようとしたらスロットで300万ドルが当たってしまい……というお話。どうだろう。

 宮崎駿アニメの「崖の上のポニョ」は新予告に。まったくストーリーはわからないが、歌がかわいいことはわかった。「魔法にかけられて」()のパトリック・デンプシー主演の「近距離恋愛」という作品は、幼なじみの男女のラブ・ストーリーらしいが、彼女が結婚することになったら男は彼女が好きだったことに気付いて……という、なんだか良く聞くようなストーリー。「恋人たちの予感」(When Harry Met Mally・1989・米)だって似たようなストーリーだったしなあ。

 暗くなって、スクリーンがシネスコになり、ドルビー・デジタルの水のデモがあって……驚いたことにフレームがズレた。スクリーンの下1/3くらいに水平に黒い線が出ている。「セックス・アンド・ザ・シティ」の予告が終ってもズレっぱなし。その間中気付かないなんて、映写技師は何をやっているんだろう。ハラハラドキドキのなか、本当にギリギリで正常に戻った。うーん。

 帰る時、出入り口のところで、来場者プレゼントの「ランボー缶バッチ」をもらった。


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