Mr.Brooks


2008年5月24日(土)「Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼」

MR. BROOKS・2007・米・2時間00分

日本語字幕:丸ゴシック体下、川俣勝利/ビスタ・サイズ(1.85、Clairmont)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R-18指定)

公式サイト
http://mrbrooks.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

1代で実業家として成功し、慈善家としても知られ、今年の顔に選ばれたアール・ブルックス(ケビン・コスナー)は、実は多重人格で心の中にマーシャルという人格(ウィリアム・ハート)があり、いも殺人をそそのかしていた。彼は殺人依存症であり、女子大生の娘ジェイン(ダニエル・パナベイカー)にも、美しい妻エマ(マージ・ヘルゲンバーガー)にも知られていなかったが、彼こそが連続殺人鬼の“指紋殺人鬼”だった。彼を追うのは敏腕女刑事のトレーシー・アトウッド(デミ・ムーア)。そして2年ぶりに殺人を犯した翌日、ブルックスの会社に写真を持ったスミスと名乗る男が現われる。

74点

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 うーん、血まみれ、残酷……観客の正常な感覚までマヒしてきそうな感じ。見終わった後、妙にすさんだ気持ちになり、なんかケンカしたいような、苛立った感覚が……。恐ろしい。こんな話だったとは。まったく病んでいる。映画としては、実に良くできていると思う。

 人を殺すことに快感を覚える人がいるという事実。これがリアルで、恐ろしい。どんでん返しもあり、先が読めない。話はどんどん枝分かれして広がって行き、一体どうなるのかと思っていると、それらをまとめて解決する策が……これがまたスゴイ。こうなるか。やられた。

 まず、脚本が良くできている。そしてキャストが豪華。完成度も高い。IMDbでも7.6点という高評価。なのになぜミニ・シアターでの限定公開なのか。それがわからない。ケンカしたいようなすさんだ気持ちにさせるのがいけないのか。

 出演人も豪華。主演は製作も兼ねたケビン・コスナー。最近出は西部劇の「ワイルド・レンジ最後の銃撃」(Open Range・2003・米)酷い邦題……や超常ミステリー感動作「コーリング」(Dragonfly・2002・米)など、いい作品にも出ているのに、日本ではパッとしない感じ。なぜだろう。億悪役もたくさん演じている人だが、「ポストマン」(The Postman・1997・米)あたりのヒーロー役が災いしたのか。確かに「守護神」(The Guardian・2006・米)は肩透かしだったけど。アメリカでの評価は高いようだが、日本では大ヒット作「海猿」(2004・日)の後だっただけに比較されてしまった。

 心に住む男、多重人格の1人がウィリアム・ハート。1950年生まれということで今年58歳だが、もっと歳を取った感じ。つい最近、傑作アクションの「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)で大統領役を演じていた。穏やかな感じが何とも凄い。

 殺人鬼を追う敏腕女性刑事トレーシーを演じたのは、久々に見た感じがするデミ・ムーア。妊娠ヌードや、ブルース・ウィリスとの離婚とか、いろいろお騒がせな人。最後に見たのは「チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル」(Charlie's Angels: Full Throttle・2003・米)の黄金のデザート・イーグル2挺拳銃の悪役だったろうか。なんだか、すっかり男勝りの役が多くなった感じ。「ゴースト/ニューヨークの幻」(Ghost・1990・米)では普通の美女役だったのに。

 Mr.ブルックスの奥さんエマ役はマージ・ヘルゲンバーガーという人。TVの医療ドラマ「ER」とか刑事ドラマ「CSI」などに出ている。劇場映画では「バッド・ボーイズ」(Bad Boys・1995・米)やSFアクションの「スピーシーズ」(Species・1995・米)、スティーブン・セガールの「沈黙の断崖」(Fire Dowb Below・1997・米)などに出ている。

 トレーシー刑事が離婚調停中の相手の女弁護士シェイラを演じたのは、大ヒットTVドラマ「24」でミシェルを演じたレイコ・エイルスワース。SFホラーの続編「AVP2」(AVPR: Aliens vs Predator - Requiem・2007・米)は残念だったが……。

 監督と脚本も手がけたのはブルース・A・バンス。もともとは脚本家で、「スターマン/愛・宇宙はるかに」(Satrman・1984・米)や「スタンド・バイ・ミー」(Stand by Me・1986・米)とか「メイドメイン・ヘブン」(Made in Heaven・1987・米)など思わず涙の感動作を多く手がけてきた人。自らプロデュースもしている。同じく脚本家のレイノルド・ギデオンとの仕事がほとんど。本作もレイノルド・ギデオンと共同で脚本を書き、製作もしている。監督としては2作目になるらしい。次作が注目だ。

 Mr.ブルックスが犯行に使う銃は、たぶんステンレスのワルサーPPK/S。それにサイレンサーをつけ、さらに手ごと冷凍用のジップロックみたいなビニール袋に入れて撃っている。薬莢を残さないし、返り血もかからないというわけだが、オートマチックをこのようにして撃つと、ジャムする可能性が非常に高くなる。1発で終らなかった場合大変に危険だろうと思うが……。

 公開初日の2回目、渋谷の劇場はそれほど混むとは思えないところながら、全席指定制。入ったことがない劇場だったので、席を選べといわれてもわからない。入ってから、たとえガラガラで別の席が良かったと思っても移動できない。あとで遅れて入ってくるかもしれないからだ。うむむ。15分前くらいに着いたら、階段のところに3人ほどの列。10分前に入れ替えとなった。

 最終的には全席指定の264席に50人くらいの入り。老若比は半々で、女性は1/4くらい。スクリーンも見やすいし、スクリーンも明るく、音響設備もTHXで素晴らしいが、場所が駅から遠くホテル街にあるため行きにくいのが残念。

 半暗になって案内が上映された後、予告編。気になったものは、あまりなかった。日本映画はなんだかビデオのようだったし……。ドルビー・デジタルの水しぶきのデモがあってから本編の上映。


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