21


2008年5月31日(土)「ラスベガスをぶっつぶせ」

21・2008・米・2時間02分(IMDbでは123分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(Panavision Genesis、HDTV)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/21/index.html
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

MITの学生ベン・キャンベル(ジム・スタージェス)は、MITを卒業後ハーバード医科大に入学するための試験には合格したものの、30万ドルという高額な学費が払えず、奨学金を申し込むがなかなか認めてもらえない。そんな時、ミッキー・ローザ教授(ケヴィン・スペイシー)の研究グループに招かれる。彼らは数学の知識とチームワークによって、カード・ゲームのブラックジャックで必ず勝つ“カウンティング”によって大金を稼ぐプロジェクトを進めていた。夢を実現するため、ベンは学費分を稼いだら止めるという約束でチームに加わるが、やがてギャンブルにハマり、ついには違法行為を取り締まるコール(ローレンス・フィッシュバーン)らに目をつけられる。

74点

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 実話に基づいた物語。さすがアメリカだなあと思う。スゴイ数学の知識と計算能力を持ったヤツがいて(賢い奴は桁外れに賢い)、カジノで64万ドル稼いだと。日本では、フィクションでも成立しにくい話。そのためか、いまひとつ現実味がないというか、ノリ切れない感じも。後味は悪くないのに……。

 違法行為を取り締まる側の犯罪組織まがいの暴力による取締、摘発もすごくて、ちょっと引いてしまうほど。「カウンティングは違法じゃないが、オレのところではやるな。他所でやれ」と殴りつけられると、さすがに恐い。これが後の展開で効いてきて、サスペンスを盛り上げることになるわけだが。

 ゲームは「ブラック・ジャック」。カードの合計が21になれば勝ちだ。原題の「21」は当然それを指している。映画によれば、ブラック・ジャックはギャンブルをやらなければ“カウンティング”で確実に勝てるらしい。

 ただ、2時間程度の映画では“カウンティング”の仕組みが良くわからない。ハイ・カードが+1ロー・カードが−1、ミドルが0で、場に出たカードを記憶して、点数を計算して有利かどうか判断してお金を掛けるらしいが、理解できなかった。字幕だから難しいのか、もともとオリジナルのセリフでもちゃんと説明されていないのか、とにかく凡人にはできない方法らしい。違法ではないものの、禁止されているカジノが多いのだとか。

 恐いというか、リアルなのは(実話だから当然だが)、最初はギャンブルはやりたくないと拒否していながら、学費分だけ稼いだら止めるつもりで参加すると、ホテルでの贅沢な時間や買い物、高級なスーツを着て、上客(ハイローラー)として顔が売れ始めると、人が変わってくること。ロボット・コンテストの仲間は二の次となり、ケンカ別れまでしてしまう。華やかな広い世界と地味な狭い世界。この対比がうまい。負ければ取り返そうとして大きく賭ける。そしてそれを失う。さらに取り返そうとして……こうして人はギャンブルにハマって行くのだろう。

 主役のベン・キャンベルを演じたのはジム・スタージェス。主にTVで活躍してきた人で、日本劇場公開作品はないようだ。たぶん、ほとんど初主演作品といってもいいのではないだろうか。だからこそなのか、普通の頭のいい大学生という感じが良く出ていた。MITでロボコンに出場しようというインテリらしい感じ。そしてさすが役者だなあと思うのは、カジノで儲けて、ブランド物のスーツを買い、ビシッと決めれば本当にハイローラーに見えてしまうこと。実にカッコいい。ギャンブルにハマってしまう感じもグッド。

 ミッキー・ローザ教授を演じたケヴィン・スペイシーは、本作ではかなり恐い感じ。ある意味「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects・1995・米)っぽいかも。さすがにうまい。本作ではプロデューサーもやっている。公式サイトによれば1997年に自身の製作会社トリガー・ストリート・プロダクションを作り、若手育成に力を注いでいるのだとか。うーん、違うなあ。

 ベン・キャンベルが憧れる美人学生を演じたのは、ケイト・ボスワース。つい最近「スーパーマン・リターンズ」(Superman Returns・2006・豪/米)でスーパーマンの恋人ロイス・レーンを演じていた。このときケヴィン・スペイシーと共演している。劇場映画の初出演は「モンタナの風に抱かれて」(The HorseWhisperer・1998・米)。ブロンドの人だが、本作では黒髪にしてMにかの学生らしくしている。

 恐い不正取り締まり係のコールを演じたのは、「マトリックス」(The Matrix・1999・豪/米)シリーズのローレンス・フィッシュバーン。「地獄の黙示録」(Apocalypse Now・1979・米)あたりから映画に出ているベテランだが、ボクはホラーSFの「イベント・ホライゾン」(Event Horizon・1997・英/米)が一番印象に残っているなあ。最近だとポール・ウォーカーの爽快アクション「ボビーZ」(The Death and Life of Bobby Z・2007・米/独)がよかった。公開が控えている新作が7本もあるというのだから、スゴイ売れっ子だ。

 チームのアジア系の男子、チョイを演じたのは、アーロン・ヨー。アメリカ生まれで、つまらなかったシャイア・ラブーフの「ディスタービア」(Disturbia・2007・米)で韓国人の友人役で出ていた人。本作では普通過ぎて、ちょっと地味過ぎた感じ。

 さらにチームのアジア系の女子、キアナもアメリカ生まれのライザ・ラピラ。やっぱりTVで活躍していた人らしいが、ほとんどスターのいないめまいSF「クローバーフィールドHAKAISHA」(Cloverfield・2008・米)に出ていたらしい。パーティ客のメンバーだろうか。

 ちょっと軽い男のフィッシャーを演じているのはジェイコブ・ピッツ。よく見かける気がするのだが、主にTVで活躍してきた人らしい。8月に日本で公開される「Across the Universe」(2007・米)でジム・スタージェスと共演しているのだとか。いい味を持っているので、今後活躍するのではないだろうか。

 監督はオーストラリア生まれのロバート・ルケティック。あのロマンチック・コメディの傑作「キューティ・ブロンド」(Legally Blonde・2001・米)の監督だ。まったく違うタッチだが、シリアスもいけるとはスゴイ。日本劇場未公開の「アイドルとデートする方法」(Win a Date with Tad Hamilton!・2004・米)を撮っているらしいが、やっぱり本作にはつながらないような。才能がある人ということなのだろう。興味の方向も変わったのだろうか。

 原作はベン・メズリックの同名ノンフィクション。ハーバード卒業のエリートだ。「東京ゴールドラッシュ」なんていうノンフィクションもあるらしい。ちょっと気になる。

 脚本はピーター・スタインフェルドとアラン・ローブの2人。ピーターは音楽業界裏事情アクション・コメディといった感じの「Be Cool/ビー・クール」(Be Cool・2005・米)の脚本を手がけた人。アクションの部分では本作とつながるか。アランは脱サラして脚本家になったらしいが12年目に書いた脚本が売れ、現在製作中らしい。ほかにも4本が製作されるらしく、ついに念願がかなったようだ。

 公開初日の初回、55分前に着いたら銀座の劇場はオヤジ3人、若いカップル1組の5人の列。40分前に開場した時には20人くらい。雨の寒い日で、早く開いて助かった。初回のみが全席自由。あとは全席指定。

 10分前くらいから半暗になって案内を上映。この時点では7割くらいの入りで、なかなかだなあと思っていたら、最終的には400席の9割ほどが埋まってしまった。これは驚き。やはり中高年が多く、若い人は1/3くらい。男女比は3対7くらいで圧倒的に女性が多かった。

 スクリーンはシネスコで開いていて、チャイムが鳴ってアナウンスがあってからさらに暗くなってビスタで予告編。日本映画「イキガミ」は、漫画が原作で「リアル鬼ごっこ」(2007・日)っぽい感じか。とにかく口減らし映画らしい。

 殺しや映画「ウォンテッド」は、銃弾にカーブがかけられるかどうかは別として、とにかく絵がスゴイ。たぶんスクリーン初登場のコーナーショットはスゴイ威力。さすが「ナイト・ウォッチ」(Nochnoy Dozor・2004・露)や「デイ・ウォッチ」(Dnevnoy Dozor・2006・露)のティムール・ベクマントベトフ監督。期待したい。

 日本版スニーク・プレビューという「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」はどうにか新しい予告に。それでもTV-CMより新しいシーンがない印象だし、当然公式サイトよりも少ない。劇場ってそんなに効果がないのか、新しいことが反映しにくいのか……。それしても、抜群に画質が良い。色も濃く、音もクリアで立体感にあふれている。このあとの予告の日本作品は目立って画質か悪く見えてしまうほど。

 「花より男子」の予告中、いきなりスクリーンがスタンダードになって驚いたが、上下マスクの「告発のとき」にはどうにかもどった。シネスコになって、完全に暗くなってから本編の上映。

 入場者プレゼントでクリア・ファイルをもらった。関係者らしい1団は数人ほどで、それほど目立ってはいなかった。


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