Cyborg She


2008年6月1日(日)「僕の彼女はサイボーグ」

CYBORG SHE・2008・アミューズソフトエンタテインメント/電通/バャガ・コミュニケーションズ/フィールガピクチャーズ/TBS/小学館/MBS/センチュリオンファンド/ベアエンターテインメント・2時間00分

シネスコ・サイズ(HD撮影)/ドルビー・デジタル


公式サイト
http://cyborg.gyao.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

2007年11月22日、大学生のジロー(小出恵介)はひとりぼっちの20歳の誕生日に、自分でレゼントを買い、お気に入りのレストランでスパゲッティを食べていた。そこへ「私も今日誕生日なの」という女の子(綾瀬はるか)が現われ、一緒に過ごすことになる。2人でとんでもない経験をした最後に、謎の言葉を残し彼女は去って行く。1年後、またひとりぼっちの誕生日を迎えたジローは、謎の彼女のことが忘れられずに、同じレストランでスパゲッティを食べていた。するとそこに彼女が現われるが……。

80点

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 クァク・ジェヨン(郭在容)監督の才能は底知れない。一体どこまで凄いんだろう。韓国とか日本という枠にはまらない、たぶんグローバルに通用する映画作家だと思う。すべの作品を見たわけではないが、基本はコミカルでファンタスティックな甘いラブ・ストーリーながら、強烈なアクションやスペクタクル、SFなどの要素を盛り込んで、二転三転する話を作り上げ、最後にはすべてキッチリ落とし前をつけて見せる。この手際の鮮やかさ。細部まで緻密に計算されたストーリーとカット。しかも、しっかり感動させる。あやうく涙が出るところだった。危ない、危ない……。

 たぶん基本はすべて同じ。男と女が出会って恋に落ち、様々な障害を乗り越えて最後には結ばれる(または結ばれない)。しかし、設定を変え、見せ方を変えるだけで、ここまでおもしろい作品を次々と作り上げるとは。しかも、どれも同じ印象を与えない。細かなエピソードの構築が巧みで、時にはクラシックな手法で、時には今流行のものを取り入れて、心に触れるような仕掛けでラブ・ストーリーを紡ぎ出す。ついつい、観客は主人公とともに映画のロマンスに参加し、疑似体験をする。男性の多くは綾瀬はるかのサイボーグにやられてしまったのではないだろうか。

 しかも、役者の魅力を引き出すのが実にうまい。こんなに綾瀬はるかが魅力的な女優だったとは。表情、しぐさ、着ているもの、ヘア・スタイルまで、すべてがこの映画では完璧だ。特にエヴァンゲリオンの綾波レイ風な髪形がピッタリとあい、彼女の魅力を最大限に引き出している。しかもどこか妖艶で、謎めいた感じまで出ている。

 また小出恵介も、もともととぼけた感じの若手俳優という感じだったが、本作ではそのとぼけた感じと、マジメで爽やかで、優しく、少年のような無邪気さも持つ好青年という感じがあふれている。実に魅力的。輝いている。

 多くの有名俳優がチョイ役で出ているので、それを探すのも面白いかも。ただ、それらの人々は個性が強過ぎるから、スムースな映画の流れを阻害してしまう感もある。特に竹中直人が演じているエキセントリックな大学の講師はどうなんだろう。

 綾瀬はるかは最近映画に出まくり。リメイク板「戦国自衛隊1549」(2005・日)の濃姫あたりから始まって、劇場版「HERO」(2007・日)ときて、本作、「ザ・マジックアワー」(2008・日)、時代劇の意外なリメイク「ICHI」(2008・日)、矢口史靖監督の「ハッピーフライスト」(2008・日)と引っ張りだこだ。すごい。広島県出身の23歳。今最も旬な女優だ。

 一方、小出恵介はTVの活躍の方が目立っているが、映画も「パッチギ!」(2005・日)あたりから、ほとんどが恋愛もの。「キサラギ」(2007・日)は若干傾向が違うようだが、本作とは公開規模が違う。本作は綾瀬はるかはもちろん、小出恵介にとっても大きなステップとなるのではないだろうか。爽やかな明るさが良い。どことなく「猟奇的な彼女」(My Sassy Gerl・2001・韓)のチャ・テヒョンに似ている気もする。

 ジローのずうずうしい学友をコミカルに演じたのは、桐谷健太。井筒和幸監督の「ゲロッパ!」(2003・日)あたりから映画に出るようになって、だいたいワルの役が多い人。本作はそれに加えて、地と思われるコミカルな部分を出してなかなかおもしろい。本作はギリギリのところで竹中みたいにならずにすんでいる。そういえばプロミスのCMで妙な髪形で出ていたっけ。黙っていればかなりの二枚目。

 監督・脚本のクァク・ジェヨンは、大ヒット作「猟奇的な彼女」、泣かされたアクション「僕の彼女を紹介します」(Windstruck・2004・韓)、香港のアンドリュー・ラウ監督により全編オランダで撮影されたアクション・ラブ・ストーリー「デイジー」(Daisy・2006・韓/香)の脚本を手がけている。スゴイ才能。だいたい強い女性を描くことが多いようだが、次作も期待。「新世紀エヴァンゲリオン」のファンということで、劇中に綾波レイと惣流アスカ・ラングレイのフィギュアが登場する。またジローの部屋には「行け!稲中卓球部」の漫画本が置かれている。

 スパゲティのレストランで使われる銃はAK47のようで、薬莢が派手に飛んでいる。女子高で登場するSATは当然MP5。

 初日は舞台あいさつがあるというのでパスして、公開2日目の初回、初回のみ全席自由というので30分前に着いたらすでに開場済みで、30人くらいの人が座っていた。老若比は4対6くらいで、やや若い人が多く、意外に女性は1/3ほどだった。下は小学生の男の子が1人。最終的には470席の3.5割くらいの入りは、舞台あいさつの反動だろう。映画の日で、だれでも1,000円なのだから、普通ならもっと入っているはず。たぶん口コミとかで観客が増えていくのではないだろうか。久々にお金を払ってもう一度見ても良いなと思った。DVD(もう今さらブルーレイか)も欲しいかも。

 チャイムの後カーテンが上がって暗くなって始まった予告編は……堤幸彦監督も、三池崇監督のように撮りまくりで、「まぼろしの邪馬台国」が公開されるらしい。上下マスクで、内容は全くわからなかった。

 上下マスクの「クライマーズ・ハイ」は御巣鷹山の日航機墜落事故を追った記者の話で、原作が「半落ち」の横山秀夫で、監督が原田眞人。ちょっと気が重いテーマですが、これは良いかも。

 ルーカスの3D-CGアニメの上下マスク、「スターウォーズ クローン戦争」が公開されるらしい。結局ルーカスが作りたかったのはこれか。すべてCGなら完璧にコントロールできるし、どんな非現実的な動きも可能だ。ロバート・ゼメキスのようになってしまったか。ちょっと操り人形のような印象だったが……。

 「スピードレーサー」は新バージョンの予告。なんてスゴイ絵なんだろう。ハバハバ。

 それにしても、映画の日とは知らなかった。「フールズ・ゴールド」を見に行けば良かったかも……。


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