Revolver


2008年6月7日(土)「リボルバー」

REVOLVER・2005・仏/英・1時間55分

日本語字幕:手書き体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts

(英15指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://www.astaire.co.jp/revolver/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

7年間の刑務所暮らしからやっと出所したグリーン(ジェイソン・ステイサム)は、裏切ったボスのマカ(レイ・リオッタ)のカジノで稼ぎまくる。それに腹を立てたマカはスゴ腕の殺し屋ソーター(マーク・ストロング)を差し向けるが、謎の男2人に助けられ生き延びる。すると2人の男たちは、命を守ってやるから全財産を差し出すこと、何も言わずに言うことに従うことという条件を出す。そして高利貸の取り立ての手伝いをやらされる羽目に。事態はますますややこしく、脱けられない状況になってくる。

66点

1つ前へ一覧へ次へ
 うーん、頭の悪いボクにはさっぱりわからなかった。何を描きたかったのだろうか。暴力? エンド・クレジットは監督の意図により一切なく(説明の字幕が出る)、オープニングもタイトルのみ……って、まったく映画を私有化している感じ。映画はたくさんの人の仕事の積み重ねででき上がっているというのに……。代わりに真っ黒の画面とエリック・サティのピアノ曲「グノシエンヌNo.1」が(たぶんフルに)流れて終る。

 ストーリーも有ってないようなもので、意味あり気なシーザーやマキャベリ、はては無名人が言った格言までを引用しているが、僕の頭では意図をくみ取れなかった。ほとんどは断片からできていて、ボクは何も得ることはできなかった。

 雰囲気としては傑作「レザボアドックズ」(Reservoir Dogs・1991・米)、見事などんでん返しの「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects・1995・米)、鮮やかなミステリーの「ラッキーナンバー7」(Lucky Number Slevin・2006・米)、ひょっとしたらサイコ・スリラーの「アイデンティティ」(Identity・2003・米)に近いかもしれないが、緻密な伏線も、快刀乱麻の結末もない、というか結末自体がない。だいたい2005年の作品がなぜ今頃公開されるのか。DVDの発売が近いのか。

 暴力とエロはえげつない。そしてリアル。ここが監督の持ち味なのだろうが、何かを描くためにリアルにするのではなく、ただリアルに描くだけ。有名俳優が出ていなかったら、ほとんど見る価値はないのでは。

 監督はマドンナの旦那さん、ガイ・リッチー。脚本も手がけている。「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」(Lock, Stock & Two Smoking Barrels・1998・英)はギャングやチンピラの話がおもしろかったし、その後のブラッド・ピットの出た暴力群像劇「スナッチ」(snatch・2000・英/米)はなかなか面白かった。しかしマドンナを主演に据えた「スウェプト・アウェイ」(Swept Away・2002・英/伊)は見ていないがIMDbで3.6という驚異的低得点。本作で挽回したとは思えない。

 プロデュースと脚本の追加に、最近さっぱりのリュック・ベッソン。粗製乱造じゃないかという噂も……。とにかく2000年くらいからプロデューサーとして作りまくっている。現在制作中の作品だけでも12本もある。

 主演は「ロック……」からガイ・リッチー作品に出ているジェイソン・ステイサム。しかも出世作となったリュック・ベッソン製作・脚本で面白かった「トランスポター」(The Transporter・2002・仏/米)にも出ているわけで、この2人の作品では出ないわけにはいかなかったのだろう。最近公開されたもので面白かったのは、「アドレナリン」(Crank・2006・英/米)か。劇場は酷かったけど。やっぱりこの人はアクションが良い。

 対する悪党はレイ・リオッタ。とにかく悪党役がうまい人。珍しく悪役ではない「コリーナ、コリーナ」(Corrina, Corrina・1994・米)では良いお父さんを演じていて、SFサスペンスの「アンフォゲブル」(Unforgettable・1996・米)の妻を殺した男を探す役も良かった。最近では凶悪な犯罪者を迫真の演技で演じた「コントロール」(Control・2004・アルバ/米)が凄かったし、FBI捜査官を演じた「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2007・英/仏/米)が面白かった。

 公開初日の初回、渋谷の劇場は1時間くらい前に着いたら長蛇の列。これは舞台あいさつがある「ぐるりのこと」の列だとかで、とりあえずそこに並ぶ。10分くらいして列が分けられ、さらに10分くらいして、ようやく「ぐるりのこと」の列がなくなり、受付。全席指定制になったための大混乱。便利なようで、不便だなあ。

 15分くらい前に劇場にもどると、すでに開場していた。スクリーンはシネスコで開いており、最終的に220席に3.5割くらいの入り。老若比は半々くらいで、女性は1.5割くらいか。関係者がロビーに4〜5人いた。

 初日プレゼントがあって、ローズ・オブ・ローゼスという香りの強い植物性洗顔石鹸の試供品をもらった。

 ビスタになって、ブザーが鳴り、半暗になって始まった予告で気になったのは……ほとんど日本映画でどうもパッとしない予告ばかり。見たいという気にならなかった。メチャクチャ恐ろしそうだったのは、血まみれのフランス映画「屋敷女」。女がハサミを持って女に襲いかかってくるという恐怖。予告だけでもゾッとしたというか、気持ち悪かった。見たいけれど劇場がなあ……40席レベルじゃレンタルになってから家で見た方が良いかも。

 最大のショックは本編が始まってから。スクリーンがシネスコになって上映が始まると、なぜか全体にマスクがかかっていて、上映面積が小さい。比率も1対3くらいの細長。でも監督がガイ・リッチーだから、そんなこだわり、演出なのかと思って見ていたら、途中で出る英語の字幕(というかスーパーインポーズ)の上が切れていて見えない。そう言えば、下に出た横書きの日本語字幕も普通より下に寄っている……。

 間違いじゃないかなあ、という疑念が深まってきて1時間ほどしてリール・チェンジのときなのか、突然音が無くなった。このまま3分くらい上映が続いたので、またガイ・リッチーの奇をてらった演出かと思っていたら、突然上映が止まり、場内が明るくなる。昭和30〜40年代か。誰かが走って出ていって、スタッフに何か言っている。しばらくして「音声トラブルで上映が止まりました。再開します」とアナウンスがあり、なんでそんなことができるのかわからないが、まさに音が消えた箇所から上映再開。今度はマスクがなく、通常のシネスコ・サイズでの上映。日本語字幕も正常な位置になった。つまり、1時間ばかりマスクでトリミングされた画面を見せられていたのだ! このショック。

 まさか、これもガイ・リッチーの演出じゃないよなあ。すっかり白け、腹が立った。台無し。普通だったら料金を返すとか、お詫びのチケットとか出すんじゃないの。「音声トラブル」とか言って、あたかも劇場に責任はないような言い方だったが、じゃ、マスクはなんだったのか。変なもの付けていたからサウンド・トラックが読めなくなったんじゃないの。当日券に引き換えとか面倒なことを観客に強いて、変更・再発行できませんとか、最低限の義務である上映をしっかりやってから言って欲しい。


1つ前へ一覧へ次へ