The Magic Hour


2008年6月7日(土)「ザ・マジックアワー」

THE MAGIC HOUR・2008・フジテレビ/東宝・2時間16分

シネスコ・サイズ/ドルビー・デジタル(公式サイトではドルビー・デジタルEX)


公式サイト
http://www.magic-hour.jp/index.html
(全国の劇場案内もあり)

港町・守加護(すかご)の町を牛耳るギャングのボス、天塩(西田敏行)の愛人、マリ(深津絵里)に手を出したクラブ「赤い靴」の支配人で、手下の備後(妻夫木聡)は、ボスから伝説の殺し屋、デラ富樫を5日以内に連れて来れば許すと言われる。顔も居場所もわからない殺し屋を見つけることができず、追いつめられた備後は売れない役者の村田(佐藤浩市)を映画の撮影と偽って、デラ富樫として町に連れてくるが……。

70点

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 おもしろい。笑った。さすがシチュエーション・コメディの帝王、三谷幸喜。佐藤浩市も売れない俳優役を好演。いつものしかめっつらではなく、「THE 有頂天ホテル」(2005・日)よりもさらに吹っ切れたというか、突き抜けた感じの演技で、しっかり笑わせてくれる。ボスの女を演じた深津絵里も、普段とは違って男を惑わす悪女で新鮮。英語の歌もなかなか雰囲気があってうまい。場面変換にも、あえて古いアイリスを使うなど、時代感を感じさせる。

 ただ、どうにもストーリーがグズグズというか、有りえない展開で、荒唐無稽な設定だけに、どこかにリアリティを出してくれないと、映画自体を楽しめない。あまりにもご都合主義。我田引水もいいとこ。とてもこんなふうに展開するとは思えない。いくらファンタジー、おとぎ話だといっても……。舞台なら気にならないのかもしれないが、映画だとそこが気になる。スラップスティック・コメディでもないわけで……。

 セットは素晴らしい。町の一角がすべて再現され。その部屋から通りが見おろせたり、どんどん中まで入って行けたりと、お金がかかっている。ちょっと古びた感じも自然。美術を担当したのは、種田陽平という人。「THE 有頂天ホテル」でも素晴らしいセットを作っていて、最近では美術は良かった「怪談」(2007・日)や、大ヒット作「フラガール」(2006・日)なんかも手がけている。実は押井守監督のアニメ「イノセンス」(2004・日)やクエンティン・タランティーノ監督の「キル・ビル」(Kill Bill: Vol.1・2003・米)シリーズも手がけているすごい人。どれもセットの美しさが強く印象に残る作品。

 美しい絵を撮ったのは山本英夫。やはり「THE 有頂天ホテル」も手がけている人。ほかに「フラガール」、「ミッドナイト・イーグル」(2007・日)、「県庁の星」(2006・日)「恋空」(2007・日)、「妖怪大戦争」(2005・日)など話題作をほとんど手がけている。

 キャストは、ほぼ三谷幸喜組といった感じ。ほんのちょい役でこれまでに三谷幸喜作品に出たことがある人ズラリと顔をそろえている。それと、製作の亀山千広の知り合いだろうか。一番驚いたのは、カメ、カメと呼ばれるヤツがいて、出てくるのが歌舞伎役者の市川亀治郎。しかねセリフ無しで、カメラの前を横切るだけ。「出オチ」というヤツ。こんな役に天下の市川亀治郎が出ているとは。笑った。

 ギャングの話だけに銃も登場する。時代感を出すためか、パール・グリップのついたパイソンとか、エンフィールド・リボルバー、PPK、AR7などなど。ただ、入院している会計係を殺しに行く時持っていくのが、特殊部隊仕様のM4カービンというのは、ちょっと新し過ぎでは。個人的にはトンプソンかなんかが良かったなあ。サイレンサーはつかないけど。

 公開初日の2回目、新宿の劇場は30分前に着いたらちょうどロビーに列を作り始めるところで、15〜20人くらい。若い男女が目立つ感じ。15分前に入れ替えになって、案内があって場内へ。最終的に406席に7.5割ほどの入り。男女比は4対6で女性が多く、中高年は1/3ほどで若い人が多かった。スクリーンはシネスコで開き。

 暗くなってCMの後に始まった予告編は新しいものなし。また肩透かしにならなければいいがナイトシャマランの「ハプニング」、上下マスクの「奇跡のシンフォニー」、トミー・リー・ジョーンズの「告発のとき」、宮崎駿アニメ「崖の上のポニョ」……そうそう、新しいのは……そんなに面白かったとは思えないのだが、フジTVのドラマ「ガリレオ」が映画化されるらしい(容疑者Xの献身)。どうなんだろう。


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