August Rush


2008年6月22日(日)「奇跡のシンフォニー」

AUGUST RUSH・2007・米・1時間54分

日本語字幕:手書き書体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG指定)

公式サイト
http://www.kiseki-symphony.com/
(音に注意。全国の劇場案内もあり。Macでは入っても何も表示されなかった)

幼い頃から音楽を感じて暮らしてきた11歳のエヴァン・テイラー(フレディ・ハイモア)は、両親を探すためニューヨークの郊外の男子孤児院を抜け出し街に向かう。やがて元ストリート・ミュージシャンの“ウィザード”(ロビン・ウィリアムズ)に拾われ、彼のためにストリート・ミュージシャン“オーガスト・ラッシュ”として日銭を稼がなければならなくなる。ところが、ある日、警察の手入れがはいり、エヴァンは教会に保護される。そしてそこで音楽の天才的な才能を認められ、ジュリアード音楽院へ入学することになる。そのころ、ちょうど彼の両親も音楽に導かれるように必死に息子を探していた。

75点

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 素晴らしく爽やかな映画。音楽をやっている人がうらやましくなる。自分も何か楽器が弾けたり、歌がうまかったら、と思える。使われている曲は、どれも素晴らしい物ばかり。サウンド・トラックはお薦めかも。そして、どこまでリアルに作られているのかわからないが、アメリカの凄さと恐さも思い知らされた。やっぱり日本では成立しない話なのではないだろうか。

 主人公は、絶対音感のようなものを持っていて、幼い頃から不気味なヤツだと孤児院でいじめられながらも、とても素直に優しい子として育っている。これはとてつもない幸運だろう。普通はねじ曲がってしまうか殻に閉じこもるだろう。

 さらに幸運なことに、彼は望まれない子ではなく、愛に包まれて生まれてきている。両親とも才能あふれるミュージシャンで、ある事件のため両親は結ばれず、赤ん坊は極秘裏に孤児院に入れられてしまう。それが、11年目にエヴァンが孤児院を家出したことで、再び事態は動き出す。これが不倫だったり、望まれない子だったら全く話が違ってきただろう。

 とにかく音楽の素晴らしさがあふれている。何気ない日常に音楽があふれている感じが抜群にうまい。ストンプのように生活の中の音が、自然と音楽になっていく。そして、チェリストの母親が奏でるクラシックと、父親が演奏するロックが重なり合い、1つとなる気持ち良さ。映像が有るためなのか、普通のマッシュアップとは違い、とても自然で邪魔な感じがしない。

 全体の構成はロード・ムービーというか、RPGのように、小さな冒険が重なって1つの大きな冒険となっていく。そこがまたうまい。

 主演は天才子役のフレディ・ハイモア。最近、出まくりだ。トラ映画の「トゥー・ブラザーズ」(Deux freres・2004・仏/英)でトラと心を通わす少年役が良かった。「ホーム・アローン」(Home Alone・1990・米)のマコーレー・カルキンのようにつぶされてしまわなければいいが。そういえば、もう1人の天才少年「シックス・センス」(The Sixth Sense・1999・米)などのハーレイ・ジョエル・オスメントはどうしたんだろうか。最近映画に出ていないようだが、日本公開されていないだけのようだが……。もう20歳だからなあ。

 金もうけの権化のようなミュージシャン“ウィザード”を演じたロビン・ウィリアムズは、やっぱのうまい。ギャグを入れずに恐い男を恐く演じている。

 お父さんのロック・ミュージシャン、ルイスを演じたのはジョナサン・リス=マイヤーズ。スゴクうまいなあと思ったら、自身が両親に捨てられ、孤児院で育ったらしい。孤児の悲しさを1番良く知っていた人なのだ。オキサイド・パン監督の「テッセラクト」(The Tesseract・2003・日ほか)で運び屋のイギリス人青年を演じていた。最近ではトム・クルーズの「M:i:III」(Mission: Impossible III・2006・米)で乗り物のエキスパートを演じていた。

 お母さんのチェリスト、ライラを演じたのはケリー・ラッセル。マシュー・リラードの恐ろしいスリラー「デッドマンズ・カーブ」(Dead Man's Curve・1998・米)で女子大生のひとりを演じていた。「M:i:III」にもトム・クルーズの教え子役で出ている。

 そのライラの厳しい父親を演じていたのはウィリアム・サドラー。「ダイ・ハード2」(Die Hard 2・1990・米)で空港を占拠するテロリストのリーダーの軍人を演じていた人。それも良かったが、意外に良かったのが「ビルとテッドの地獄旅行」(Bill & Ted's Bougus Journey・1991・米)で愉快な死神役。つい最近フランク・ダラボン監督のホラー「ミスト」(The Mist・2007・米)で、かたくなな客を演じていた。

 心優しい児童福祉局の職員を演じているのはテレンス・ハワード。ポール・ハギス監督の傑作「クラッシュ」(Crash・2004・米)でTVディレクターを演じていた人。つい最近ジョディ・フォスターの女版「狼よさらば」の「ブレイブワン」(The Brave One・2007・米/豪)で主人公を助ける刑事を演じていた。リチャード・ギアの「ハンティング・パーティ」(The Hunting Party・2007・米ほか)では戦場カメラマンを演じていた。

 脚本は原案も兼ねるニック・キャッスルとジェームズ・V・ハートの2人。ニック・キャッスルは監督でもあって、日本公開されたものだと、いまひとつパッとしなかった「わんぱくデニス」(Dennis the Menace・1993・米)の監督とか、グレゴリー・ハインズのタップ映画「タップ」(Tap・1989・米)の監督と脚本を手がけている。古くはジョン・カーペンター監督のSFカルト「ニューヨーク1997」(Escape from New York・1981・米)の脚本を担当している。本作とは全くつながりがないように思えるが……。

 ジェームズ・V・ハートは、どちらかというと、まじめなファンタジーとでも言うようなホラーの「ドラキュラ」(Dracula・1992・米)、はハードSFの「コンタクト」(Contact・1997・米)などの作品を手がけていて、最近ではコミカルなアクションの「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」(Sahara・2005・英ほか)の脚本も手がけている。積み重ねの上手さはこの人のおかげだろうか。

 監督はカースティン・シェリダン。「イン・アメリカ 三つの小さな願いごと」(In America・2002・米)の監督ジム・シェリダンの息子らしい。「イン・アメリカ……」の脚本を手がけているらしい。1995年くらいから監督しているようだが、日本公開はされていない。本作がこの出来なら、今後の作品にも期待できそうだ。

 公開2日目の初回、40分前くらいに着いたら、宝塚の待ち客とごっちゃになっていて混乱していたが、30分前に開場になった時で10人くらいか。全席自由で、17席×2列のカバーの席もOK。最終的には654席に3割くらいの入り。これは少ない。もっと入っても良いと思うんだけどなあ。予告が若干コテコだった感じはするけど……。

 なんと8割はオバサンで、ペチャクチャうるさい。それにグループで来ている人が多いようだった。小学生連れのファミリーもいたが、ほとんどは中高年。うーむ。いい音楽が多いので、出来るだけデジタル・サウンド対応のいい音の劇場で見た方が良いと思う。

 スクリーンはフルで開いていて、予鈴の後、本鈴がなって半暗になり、ビスタ・サイズに縮まってCM予告。気になったのは……人気TVの映画化が多い中、ピクサーの3D-CGアニメ、上下マスクの「ウォーリー」は新予告のようで、とにかく絵がスゴイ。まるで実写のよう。そしてキレイ。圧倒される。

 スカーレット・ヨハンソンがナニーになる「私がクマにキレた理由」は、ただのスカーレット・ヨハンソンを見せる映画かと思ったら、ひょっとしたら面白いかも。ただ、みゆき座だからなあ……。

 暗くなってシネスコになり、ドルビー・デジタルの水しぶきのデモがあってから「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」の予告。面白そう。レイチェル・ワイズは出ていないようだけど。そして本編。


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