Speed Racer


2008年7月5日(土)「スピード・レーサー」

SPEED RACER・2008・米・2時間15分

日本語字幕:丸ゴシック体、松崎広幸/シネスコ・サイズ(HDTV、IMDbではIMAX版もあり)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG指定)(デジタル上映、日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/mach5/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

人気実力とも人気No.1の兄のレックス・レーサー(スコット・ポーター)を事故で失った弟のスピード・レーサー(エミール・ハーシュ)は、幼い頃から兄にあこがれていて、ようやく念願のカー・レーサーとなり兄の記録に迫る好記録を叩き出す。たちまち各社からチーム・ドライバーにならないかと誘いがかかった。最高のオファーをしてきたのは世界的な大企業のローヤルトンだったが、スピード・レーサーは父のポップス・レーサー(ジョン・グッドマン)が率いるチームとレースをするため断ってしまう。ローヤルトン社長(ロジャー・アラム)は激怒し、あらゆる手を使い、スピード・レーサーをつぶしにかかる。そんな時、ローヤルルトンの疑惑を捜査中の警察から、正体不明の謎のレーサーX(マシュー・フォックス)と組んで、5,000kmを走破するクロスカントリー・レースに出場することになる。

73点

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 まるでマンガ、お子様ランチ風というか大人には辛い感じなのに、レースはスピード感にあふれ、「ありえねぇー!」のにワクワクドキドキ、結構感動してしまう。ただ、どうにも日本に敬意を払っているとは思えないというか、日本と韓国がごちゃまぜだし、結局は日本は悪者かい? 自動車の分野ではアメリカはすっかり日本にお株を奪われて、心情的にはそうなるのだろう。クレジットに出ていたのはメルセデスだったし……。

 それにしても、ビジュアルは素晴らしい。極彩色のめくるめく世界。高音質立体音響。シズル感いっぱいの高画質。ほとんどはCGショウだが、見る価値はある。こういう世界観を作り上げ、エンターテインメントにしてしまうのはハリウッドというかアメリカ人が得意とするところだと思う。この色の艶やかさ、やはりHDTVだった。

 21世紀になってもあいかわらず変な日本もいっぱいあって、日本語が流ちょうでない日本人がいたり、ミシダ自動車みたいに日本語と思えない名称があったり、トーゴーカーンというファミリー・チームの日本人オーナー、トーゴーカーン(「Sayuri」(Memories of Geisha・2005・米)の伊川東吾が演じている)の息子がタエジョーという韓国名(Rain(ピ)ことチョン・ジフン「サイボーグでも大丈夫」(I am a Cyborg, but That's OK・2006・韓)が演じている)で、社内にもハングルが書かれていたりするのに妹はハルコ(中国人女優)という名前で着物でも登場したり、いったいどういう家族なんだ。お母さんが韓国人?

 主役のスピード・レーサーを演じたのはエミール・ハーシュ。これまで、ほとんどアート系の劇場でしか掛からなかったような作品にしか出ていなかったのだが、本作の大抜擢で一気にメジャーに。今後に期待したい。

 恋人のトリクシーを演じたのはクリスティーナ・リッチ。ホラー・コメディの「アダムス・ファミリー」(The Addams Family・1991・米)でウエンズデイ約役で注目されたときはまだ11歳。ホラーからラブ・ストーリー、コメディなど様々な役を演じているが、もう28歳。一時期太っていたようだったが、最近はやせ過ぎくらい。近作、セックス存仕様の女を演じた「ブラック・スネーク・モーン」(Black Snake Moan・2006・米)で驚かせてくれたが、やっぱりこの人は「ペネロピ」(Penelope・2006・英/米)のようなファンタジーが似合う気がする。それにしても、本当にキレイ。本作でも輝くまくっている。真っ赤な口紅が特に印象に残る。

 トリクシーの少女時代を演じたかわいい子は、アリエル・ウインター。TVにたくさん出ているようだが、まもなく公開される日本映画「着信アリ」(2004・日)のリメイク「ワン・ミス・コール」(One Missed Call・2008・日/米ほか)に出ているらしい。将来が楽しみだ。

 父のポップス・レーサーがジョン・グッドマン、母のマム・レーサーがスーザン・サランドンという贅沢なキャスティング。レーサーXは人気TVドラマ「LOST」のマシュー・フォックスだ。武者自動車の悪そうなオーナーは真田広之。

 ディテクター刑事は西ドイツ生まれのベンノ・フユルマン。WWIの実話の映画化「戦場のアリア」(Joyeux Noel・2005・仏ほか)でドイツ兵のテノール歌手を演じていた人。

 ローヤルトン社長はロジャー・アラム。ロンドン生まれのイギリス人で、「麦の穂をゆらす風」(The Wind That Shakes the Barley・2006・アイルランドほか)、「クィーン」(The Queen・2006・英ほか)などに出ている。

 伝説のドライバー、ベン・バーンズはリチャード・ラウンドトゥリー。敏腕黒人探偵アクション「黒いジャガー」(Shaft・1971・米)シリーズで主役をつとめ、「大地震」(Earthquake・1974・米)でも印象に残る役を演じていた人。TVが多いようだが、以来ずっと活躍を続けている。話題のTVドラマ「ヒーローズ」(2006〜2007)にも出ているらしい。

 監督・製作・脚本はウォシャウスキー兄弟。ジェニファー・ティリーとジーナ・ガーションという女2人の衝撃のアクション「バウンド」(Bound・1996・米)を撮って劇場作品の監督デビュー後、押井守監督の「攻殻機動隊」(1995・日)を大いに参考にしたであろう「マトリックス」(The Matrix・1999・米)で世界的な大ヒットを飛ばした。残念ながらオリジナルな部分が多くなった「2」と「3」は今ひとつだった気がする。その後作った「Vフォー・ヴェンデッタ」(V foe Vendetta・2005・米ほか)はIMDbでの評価は高いが、ボクにはピンと来なかった。

 メインのプロデューサーはちょっと体格のいいジョエル・シルバー。「マトリックス」シリーズや「ダイ・ハード」(Die Hard・1988・米)シリーズ、「リーサル・ウェポン」(Lethal Weapon・1987・米)シリーズのプロデューサーだ。たくさんの作品を手がけているので、ハズレも多い。近作の「インベージョン」(The Invation・2007・米)はどうかと思ったが、「ブレイブ ワン」(The Brave One・2007・米)はなかなかの硬派で見せてくれた。

 ローヤルトンがやとったギャングたちが使う銃は、M3グリスガン(A1ではないレバー式の方)、ロシアのPPSh41、エンフィールド・リボルバーなど、ちょっと古いものが多かった。レーサーXはモーゼル・ミリタリー。

 全体に「マッハGoGoGo」のテーマ曲をアレンジした曲が使われているが、最後のエンディング・クレジットでは、日本語のオリジナルが使われていて感動した。その後ラップ調になっても日本語が混じっているのが良かった。

 公開初日の初回、舞台あいさつがある新宿を避けて銀座の劇場へ。55分前に着いたら、チケット売り場の前には9人の行列。前売り券を持っていても当日券との引き換えが必要なので、並ぶしかない。オバサンが1人に、20代の後半くらいから30代前半くらいが2人。後は中高年男性。アニメの「マッハGoGoGo」(1967〜1968)をまさにオン・タイムで見ていた人たちか。それとも若い人たちはみな舞台あいさつに行ったか。

 50分前に早くも開場。初回のみ全席自由。オバサンがやや増えたが、オバサンはデカイ声でしゃべってうるさい。最終的には470席に70人くらいの入り。やっぱり舞台あいさつの影響だろうなあ。

 カーテンが上がって暗くなって始まった予告編で気になったのは……綾瀬はるかの女座頭市「ICHI」は新バージョンに。血糊がたぶんCGでキレイに飛んでいた。面白そう。まだ公開はだいぶ先のようだが。前売り券を買うと、仕込み耳かきがもらえるらしい。

 シネスコ・サイズになって左右マスクで「252」の予告。12月6日公開ということでか、内容はさっぱりわからなかった。なんか、パニック映画のようだったが……。


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