The Forbidden Kingdom


2008年7月27日(日)「ドラゴン・キングダム」

THE FORBIDDEN KINGDOM・2008・米・1時間45分(IMDbでは113分)

日本語字幕:手描き風書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(HDCAM) /ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://dragon-kingdom.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

カンフー・オタクのアメリカ人青年、ジェイソン(マイケル・アンガラーノ)は、不良グループに脅されて、チャイナ・タウンの行きつけの店ルー・ヤン質店に押し入る手引きをさせられる。それを見とがめられたグループのリーダーは、反射的に銃を抜き店主のオールド・ホップ(ジャッキー・チェン)を撃ってしまう。絶対に警察にたれ込むなと口止めされたジェイソンは屋上に追い詰められ、先祖代々店に伝わるという如意棒を持ったまま落下する。目が覚めると、そこは中国の山奥の寒村。ジェイド将軍(コリン・チョウ)の兵士に追われているところを酔拳の名人ルー・ヤン(ジャッキー・チェン)に助けてもらう。元の世界に戻るには、如意棒を五行山へ行って持つべき人に返さなければらないという。2人は一緒に旅をすることにするが……。

73点

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 おもしろい。よくあるパターンの映画だが、それだけ安心して見て楽しめる作品に仕上がっている。あえて一言でいうと、カンフー・オタクのアメリカ人青年の夢を叶えたような映画。

 現実世界では誰からも相手にされない青年が、夢の世界で大好きな香港製カンフー映画の主人公、「ドランク・モンキー/酔拳」(Drunken Master・1978・香)のジャッキー・チェンに、「少林寺」(少林寺・1982・中)のジェット・リーと一緒に旅し、カンフーを教えてもらって、「キラーウルフ/白髪魔女伝」(白髪魔女傳・1993・香)の白髪魔女と戦い、強くなって現実世界に戻っていじめっ子をやっつけるというおとぎ話。荒唐無稽というか、まさに夢のような話だが、ちゃんと説得力があり、良くできたお話で見所もたっぷり、しっかり楽しませてくれる。だって、もしジャッキー・チェンとジェット・リーが戦ったらどうなるの、という素朴な疑問を実現して見せてくれるのだから。

 しかも、話は「西遊記」の前日談という設定。如意棒はジェット・リー演じる孫悟空のものであり、この物語の後、聖域に旅に出ることになると結ばれる。つまり本作も神代の昔の神話のようなファンタジー。多少荒唐無稽でも許されるというわけだ。

 とにかくジャッキー・チェンとジェット・リーがいい。ジャッキー・チェンは「ドランク・モンキー/酔拳」の酔拳を披露してみせるし、ジェット・リーはリー・リンチェイといっていた頃の「少林寺」や「阿羅漢」(南北少林・1986・中)の雰囲気を再現してみせる。そしてどちらも先生となって、アメリカ人青年にカンフーを教える。

 女優も美人揃い。スパロウを演じるのはリュウ・イーフェイという人。モデル出身で、アメリカにいたこともあるらしい。1987年生まれということは21歳か。これまではTVでの活躍が多かったようだが、もっと映画に出て欲しい。女優としてはまずいのかもしれないが、押しが強くなく、大和撫子風のところがいい。

 白髪魔女はオリジナルのブリジット・リンではない。どうも10年くらい前に引退してしまったよう。演じているのはリー・ビンビン。ブリジット・リンよりちょっと細身で貫禄みたいなものはないが、美人だしなかなかの憎らしさ。ミシェル・ヨーが製作したSFアクションの「シルバーホーク」(飛鷹・2004・香)で美人刺客を演じていた人。

 悪のジェイド将軍はコリン・チョウ。「マトリックス・リローデッド」(The Matrix Reloaded・2003・米)でオラクルを守っていたセラフを演じていた人。二枚目だからか、女性のようなアイシャドーでメイクをしているところが逆に怖い感じになっている。

 監督はロブ・ミンコフという人。アニメーション出身で、初監督作品は「ライオン・キング」(Lion King・1994・米)。その後実写と3D-CGの「スチュアート・リトル」(Stuart Little・1999・米)シリーズを手がけ、本作の前がちょっと残念だった「ホーンテッドマンション」(The Haunted Mansion・2003・米)だからなあ……うまいんだか、どうなんだか。脚本ということもあるかもしれない。

 脚本はジョン・フスコ。一時西部劇人気を盛り上がらせた「ヤングガン」(Young Guns・1988・米)と「ヤングガン2」(Young Guns II・1990・米)の脚本を手がけた人。本作の前には大冒険映画「オーシャン・オブ・ファイヤー」(Hidalgo・2004・米)を書いている。冒険もの系がうまいらしい。公式サイトによれば、実際に少林拳法を習っていて、中国で指導も受けているのだという。つまり本作は体験談的な部分もあるのだろう。最新作は黒澤明監督の「七人の侍」のリメイクだとか。

 アクション監督はユエン・ウーピン。ジャッキー・チェンの「ドランク・モンキー/酔拳」を監督した人。2000年頃から監督よりもアクション監督としての仕事の方が多いようで、きっかけは大ヒット作「マトリックス」(The Matrix・1999・米)。クエンティン・タランティーノの「キル・ビル」(Kill Bill・2003・米)も手がけている。傑作アクション「ダニー・ザ・ドッグ」(Danny thre Dog・2005・仏ほか)でジェット・リーと顔合わせしている。

 公開2日目の初回、銀座の劇場の座席を確保しておいて20分前くらいに着いたら、すでに開場済み。中高年が多く、白髪が目立つ。男女は半々くらいで、若い人が1/3くらい。

 スクリーンはビスタで開いており、7〜8分前から案内を上映。全席指定なのにレディース専用シートもあった。最終的には540席に5割ほどの入り。まあまあというところだろうか。

 半暗になって始まった予告編で気になったのは……画面がシネスコになってから、左右マスクで上映された新垣結衣の「フレフレ少女」は新予告になったら内容がわかってきて、ベタだけれど意外と面白いかもしれない。ただ大人には見に行くこと自体が難しいかもしれないけど。

 同じく左右マスクの、本木雅弘と山崎努の「おくりびと」も新予告になり、具体的な内容がわかってきたら、かなり面白そう。ただ歳をとって葬式という言葉が身近になってくると、単にエンターテインメントとしては見られないような気もする。


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