The Incredible Hulk


2008年8月2日(土)「インクレディブル・ハルク」

THE INCREDIBLE HULK・2008・米・1時間52分(IMDbでは114分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/theincrediblehulk/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

科学者のブルース(エドワード・ノートン)は、放射能耐性実験の最中、事故により多量のガンマ線を浴び、心拍数が200を超えると体が巨大化して緑色となり、制御不能のモンスターに変身する体質となってしまった。その能力を軍事利用しようとするロス将軍(ウィリアム・ハート)のもとを逃れ、ブルースはブラジルで潜伏生活を続けていた。そしてネットを通じ、“ミスター・ブルー”と名乗るアメリカの科学者と知り合い、変身時の実験データがあれば治療が可能かもしれないとわかる。ブルースはアメリカへ戻り、研究室に忍び込んでデータを手に入れようとするが、ロス将軍の監視網に引っかかり、英国海兵隊出身のブロンスキー(ティム・ロス)をリーダーとする特殊部隊を投入され、戦いとなる。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 アン・リー監督、エリック・バナ主演の「ハルク」(Hulk・2003・米)が封切られたのが、2003年の8月2日。今回は8月1日(金)公開で1日早かったが、ほぼ5年目の公開となった。ただ、本作は「2」ではなく、出演者を一新し、新作というような扱いとなっている。設定は同じなので、ブラジルへ逃れるまではアヴァン・タイトルとしてサッと描かれている。

 本作は、前作が化け物にされてしまった悲しみに重点を置き、暗い感じがするものだったのに対して、本作はもっと悪(将軍、そしてその命を受けた特殊部隊の隊長)をクリアーにして、悪との戦いをメインにしている。前作どおり、凄絶な戦いを沈めるのは、恋人ベティ・ロスの愛の力だ。これは変わらない。

 5年間の技術進歩は驚くべきものがあり、前作もすごかったが、本作は細かなところまでスケールの大きな超絶戦闘をじっくりと見せてくれる。そして、変身するまでのチェイスも実にスリリングに見せてくれる。これはスゴイ。見る価値がある。ただ、どちらがより大きく感情を動かされるかというと、前作だと思う。それが暗い方向だとしても。

 今回の主演はイェール大学出身のインテリ、エドワード・ノートン。一時期日本の大阪に住んでいたこともあるのだとか。つい最近「幻影師アイゼンハイム」(The Illusionist・2006・チェコ/米)が公開されたばかり。悩む姿など、さすがにうまい。巨大化するときパンツが破れないように、ゴム入りの大きめのものを買うのがおかしかった。

 重要な鍵を握る恋人ベティ・ロスは、リヴ・タイラー。「エアロスミス」のスティーヴン・タイラーの娘。アダム・サンドラーが普通のドラマに出た「再会の街で」(Reign over me・2007・米)に出ていたようだが、最近はあまり見かけなかった印象。2003年版の「ハルク」ではジェニファー・コネリーが演じており、やっぱりちょっとか弱いくらいの美女が演じなければならないのだろう。

 2003年版でくせものサム・エリオットが演じたロス将軍は、名優のウィリアム・ハート。強烈だったホラーSF「アルタード・ステーツ/未知への挑戦」(Altered States・1979・米)以来、ずっと出続けている印象。つい最近は多視点アクション「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)で大統領を演じていた。

 ハルクに異様なライバル心を燃やす特殊部隊のブロンスキーにティム・ロス。いまひとつティム・ロスの味が出ていなかったようなも誰でも良かったような気はするが……。大作以外にマイナーな作品に積極的に出ている感じがする人。強く印象に残っているのは、やっぱり「レザボア・ドッグス」(Reservoir Dogs・1991・米)だなあ。いい味持ってる人なんだけど。使っていた銃はMP5のレール付きと、P226と、たぶんディフェンス・テクノロジー社のモデル40mmマルチ・ショット・ランチャーにレールを付けたもの。

 ほかに特殊部隊員は寄せ集めっぽく、M4A1やSG552、AUGのレール付き、G36など。軍はM16A2、ハンビーに.50口径のM2、CGっぽいヘリにミニガンというところ。さすがにハルクはでかいので、M2やミニガンでないと役に立たないと。

 監督はレイ・ルティエリ。フランス生まれで、「トランスポーター2」(The Transporter 2・2005・仏/米)、「ダニー・ザ・ドッグ」(Danny the Dog・2005・仏/米/英)など、リュック・ベッソンが関わった中では面白い作品を撮っている人。1973年生まれというから、まだ35歳という若さ。ガンガン撮って欲しい。

 脚本はザック・ペン。シュワちゃんの「ラスト・アクション・ヒーロー」(Last Action Hero・1993・米)の原案や、「X-MEN 2」(X2・2003・米)の原案や「X-MEN:ファイナルディシジョン」(X-Men: The Lat Stand・2006・米)の脚本を書いた人。コミック系が多い感じだが、「エネミー・ライン」(Behind Enemy Lines・2001・米)や、とても面白かった「サスペクト・ゼロ」(Suspect Zero・2004・米)のシリアスな脚本も書いている。

 ちなみに原作者であるスタン・リーが製作総指揮をつとめ、ミルウォーキーの場面でボトルから直接飲んでる男の役で出ているらしいが、わからなかった。またプロデューサーの1人として、アクションものをよく手がけている「ターミネーター」(The Terminator・1984・米)のゲイル・アン・ハードが参加している。

 ハルクの顔はブルースというか、エドワード・ノートンとは似てもにつかない。「父親たちの星条旗」(Flags of Our Fathers・2006・米)のアダム・ビーチという役者さんに似ている気がするが、気のせいか。

 冒頭のブラジルのシーンで、ブルースが格闘技を習うのが、本物の格闘家ヒクソン・グレーシー。びっくりした。

 そしてラスト、「アイアンマン」のトニー・スタック役のロバート・ダウニーJr.が現れ、チームを作っているんだが参加しないかと誘うところが、期待を持たせていい。本編上映前に「アイアンマン」の長目の予告が流れるので、観客はみんな事情を知っているわけで、嬉しくなってしまう。どちらもマーベル・コミックで、スタン・リーが製作総指揮をつとめているから実現したのだろう。「アイアンマン」に「ハルク」は出るんだろうか。

 初日が映画の日の金曜だったので、公開2日めの初回、新宿の劇場へ行ったら45分前で誰も並んでいなかった。8/1公開のおかげか。30分前でようやく5〜6人。20代くらいが2人で、あとは中年男性。だれも案内に来ないので、先頭の7〜8人以外、ただ群がっている感じに。25分くらい前になって案内もないままいきなり開場。この時点で20人くらい。

 最終的には指定席なしの350席に5.5割くらいの入り。若い人が1/3くらいと多く、女性は5〜6人のみ。高齢者も少し増えた。しかし、千鳥配列なのに、それでもスクリーンが見にくいとは悲しい。

 ブザーが鳴って始まった予告編で気になったものは……全く内容がわからない日本映画「感染列島」はティーザー予告ということなのだろう。パニック映画のよう。妻夫木聡と檀れいが出演。

 とにかくタイトルが出るのが遅い予告が多く、タイトルを覚えられない。何のための予告なんだろう。名器ハッセルブラッドから始まる「シャッター」は、かなり怖そうだが、同じ予告が続いているので、そろそろ飽きてきた。

 「アイアンマン」は長めの予告で、概要がわかった。そういう話だったのか。おもしろそう。そしてカッコいい。


1つ前へ一覧へ次へ