日本語字幕:丸ゴシック体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(デジタル、70mm、IMAX版もあり)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS
(米PG指定)(日本語吹替版もあり)
平和の谷のラーメン屋の息子、パンダのポー(声:ジャック・ブラック)は、カンフーおたくで、仕事もさぼりがち。ある日、山の上の翡翠城で平和の谷を守る伝説の「龍の戦士」を選ぶ儀式が行われることになる。村中の人が集まるイベントに、ポーは父ピン(声:ジェームズ・ホン)から屋台を引いて行ってラーメンを売るように命じられる。龍の戦士はシーフー(声:ダスティン・ホフマン)が育てた5人の弟子マスター・ファイブから選ばれると思われたが、意外にもウーグウェイ導師(声:ランダル・ダク・キム)はポーを指名する。そんな時、脱出不可能と言われたチョーゴン刑務所から、かつてシーフーの愛弟子だったタイ・ランが脱獄し、「龍の戦士」に渡されるカンフーの奥義を記した巻物を奪いにくるという知らせが入る。ポーは村を守るためシーフーの厳しい特訓を受けることになるが……。
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おもしろい。笑えるし楽しい。アメリカ映画にしては中国というか、カンフー(カンフー映画)のことをよく調べて作っている感じ。ちょっと日本も混じっている気がするが……基本はパンダやサルやトラ、ブタ、ウサギ……といった動物が主人公のおとぎ話だ。しかし、描かれているテーマや物語は、大げさに言えば人生の真理に迫るようなオーソドックスで普遍的なもの。だから感動的だし、大人が見ても十分面白い。 こういったアニメにおいては、キャラクターが親しみ深くかわいく、そしてあまり反感を覚えない性格付けでないと、感情移入ができない。しかも、ストーリーとか会話がお説教臭くないことも重要。上目線で、大切な人生訓を教えやるというようなスタンスでは、まず嫌われる。何気ないエピソードから次第にエスカレートしていって、生の言葉のようにして出てきたものが、共感を得られる。本作はそれに成功している。得るところが何もない映画もあるが、本作はうんちくというか教訓があって、しかも、ちゃんと笑える。笑いがなければ教育ビデオのようになってしまう。キャラクター・デザイナーと脚本家と、演出家の手腕が問われるところだ。 それだけではない。背景となる町や自然もキレイ。美しい。見る価値がある。音楽も懐かしい曲が使われていて、オジサン世代にはなじみ深いものだし、声優陣が豪華。声優専門の人ではなく、一般の人でも知っている有名な俳優がたくさん参加している。 まずパンダがジャック・ブラック。体型もそっくりで、ゆかいで、ぐうたらな感じが良い。「ナチョ・リブレ 覆面の神様」(Nacho Libre・2006・米)などに出ていたが、最近はぱっとしない感じ。アニメの声は「アイス・エイジ」(Ice Age・2002・米)など、結構やっている。「スクール・オブ・ロック」(The School of Rock・2003・米)が最高に良かったなあ。 最近笑ったことがないという気難しそうなシーフーは名優ダスティン・ホフマン。アライグマだかタヌキだかよくわからないが、とても小柄でおかしなキャラクターなのに気難しいというところがいいわけで、ピッタリだった気がする。1960年代から第一線で活躍を続けている人で、マイク・ニコルズ監督の傑作「卒業」(The Graduate・1967・米)で、花嫁を奪って逃げた人だからなあ。隔世の感がある。 トラはアンジェリーナ・ジョリー。サルがジャッキー・チェン。ヘビがルーシー・リュー。さらにカメのウーグウェイ導師は「マトリックス:リローデッド」(The Matrix Reloaded・2003・米)のキー・メーカーを演じたランダル・ダク・キム。ポーの父ピンは、「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米ほか)の眼球製作者を演じたジェームズ・ホン。そして刑務所までの伝令をつとめた鳥、たぶんゼンが、残念だった「燃えよ!ピンポン」(Balls of Fury・2007・米)の天才卓球少年のなれの果てを演じたダン・フォグラー。さらに、鼻に金属のカバーを付けた「キャット・バルー」(Cat Ballou・1965・米)のリー・マーヴィンみたいなチョーゴン刑務所の看守長のサイが、「グリーン・マイル」(The Green Mile・1999・米)のマイケル・クラーク・ダンカン。見る前に知りたかった。 とんでもない悪人が仕返しに来るというのは、西部劇の問題作、フレッド゜。ジンネマン監督の「真昼の決闘」(High Noon・1952・米)と同じ。真っ赤な太陽とか、西部劇を思わせるカットも多かった気がする。ただ「真昼……」ではだれも協力してくれないが、本作ではマスター・ファイブがいる。 その戦いの中で、長い橋が落ちるシーンは「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・米ほか)を彷彿とさせるものだった。印象がそっくり。 師匠が弟子のパンダに言うセリフがいい。オマエは過ぎてしまった昨日のこと(これまで)にこだわったり、まだ来ていない明日のこと(これから)を心配してばかりしていると。もっとちゃんと今日を生きなさい。今日という日は神様からのプレゼンなんだ。だから今現在のことをプレゼントと言うのだと。感動した。英語でしか成立しない話が中国のお話で出てきたのはファンタジーだから許そう。英語ではそういう意味だったのかあ。 脚本はジョナサン・エイベルとグレン・バーガー。TVアニメの「キング・オブ・ヒル」なんかのコンビ。原案は「バレット・モンク」(Bulletproof Monk・2003・米)のイーサン・リーフとサイラス・ヴォリスのコンビ。なんとなくつながる気がする。 監督はマーク・オズボーンとジョン・スティーヴンソン。どういう分担になっているのかわからないが、よくまとめられたもの。マーク・オズボーンは短編やミュージック・ビデオを手がけていたらしい。またジョン・スティーヴンソンはストーリーボード・アーチストとして活躍していたらしい。映画では「シュレック2」(Shrek 2・2004・米)、「マダガスカル」(Madagascar・2005・米)などを手がけている。 エンド・クレジットは漢字を使ったシャレたもの。香港映画などで出るクレジットの意味がこれでわかる。冒頭のタイトルのドリーム・シーケンスのみ2Dアニメーションになっていて、ちょっと雰囲気がドリームワークス・アニメの「プリンス・オブ・エジプト」(The Prince of Egypt・1998・米)っぽかった。本作もドリームワークス・アニメ。つながりはあるんだろうか。デザイナーはマイケル・リレイという人。多くのTV作品のタイトル・デザインを手がけている人で、最近の映画では感動ミュージカル「レント」(Rent・2005・米)がある。 公開2週目の3回目、字幕版初回、新宿の劇場は25分前に着いたらロビーには7〜8人の人。ほぼ中年で、男女は半々。20分間に終了して、場内清掃後中へ。この時点で15人くらい。スクリーンはシネスコで開いていて、全席自由。ただし、前売り券もボックス・オフィスで当日券との引き替えが必要。面倒くさい。 若い人が増えて、中年と半々くらいに。最終的には305席に2.5〜3割くらいの入り。公開から2週間目だからか、ちょっと少ない感じ。 チャイムが鳴り、前方だけ暗くなってビスタになって始まった予告編は……とにかくタイトルが出るのが遅い。タイトルと見た内容が一致しないし、覚えられない。早く出せ。少林サッカーのバスケット版は「カンフー・ダンク」面白そうなのだが、劇場が小さいところばかりで、とても通常料金を払う気になれない。見たいんだけど……。 上下マスクの「ダークナイト」は、もう何度も見て見飽きたはずなのに、何度見てもカッコよくわくわくさせられる。暗いシーンが多いので、場内後方がちょっと明るいため見にくかったが、音がサラウンドでクォリティが高く新鮮なイメージ。音の良い劇場で見ると印象が違う。よりエキサイティングだ。すばらしい。 それにしても、遅れて入ってきてライト代わりに携帯点けるやつ。まったくなんという非常識。本編上映中も前方で同等とメール・チェックなのか、時間を見ているのか携帯を点けるやつ。いくら小さい画面でも暗い場所では遠くからでももの凄く目立つし迷惑。これこそ注意して欲しい。電源を切ってくださいなんて、誰も聞いていない。ヤレヤレ。 |