Hancock


2008年8月30日(土)「ハンコック」

HANCOCK・2008・米・1時間32分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG指定)(日本語吹替版もあり。字幕版はCINEMA ALTA 4Kデジタル上映もあり)

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/hancock/
(音に注意。入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

ハンコック(ウィル・スミス)は不死身で超能力を持ったスーパー・ヒーローだったが、アル中で言葉遣いも汚く、人助けをしているのに粗暴すぎて、人々から嫌われていた。しかし、たまたま命を助けてもらった広告マンのレイ・エンブリー(ジェイソン・ベイトマン)は、彼が本当は優しい男であることに気づき、イメージ・アップを図る改造計画を提案する。そして、人助けで壊した建物や道路の修理代金未払いのため刑務所に入ることから始めることにする。ヒーローがいなくなったため、街の治安は悪化するが……。

72点

1つ前へ一覧へ次へ
 コンセプトというか、発想は面白い。しかし、わずか92分ではせっかくのアイディアも描ききれなかったという感じ。嫌われ者のヒーローが悔い改めて、皆から好かれるヒーローになろうとする。ここが面白い。ほかのヒーローものとは違う。ヒーローになったため悩む「スパイダーマン」(Spider-man・2002・米)とちょっと似ていなくもないが……。

 そのヒーローは悪気はないのだが、とても粗暴で、何でもかたっぱしから壊してしまう。映画の作り方でいえば、最初に解決すべき問題が提示される。これがそうだ。「起」。主人公はこの問題を解決すべく奮闘する。そしてこの問題を解決するための傷害も提示される。敵の存在だ。凶悪な犯罪者が登場する。「承」。さらに、意外な同類の登場があって「転」、ついに主人公は問題を解決する。「結」。完璧な「起承転結」構成。

 ところが、「起」の解決すべき問題がしっかりと解決されていないのだ。誰かが後半のアクションをもっと派手にしろと要求したのか、粗暴でなくなったはずの主人公はトラブルを解決するのに、やっぱり必要以上に壊しまくるのだ。ほとんど問題は解決していない。

 高額な予算をかけて、3D-CG使いまくりで派手にぶっ壊す。とにかくリアル。とても信じられないようなあり得ない絵だが、合成は見事で、とてもリアル。本当に起こっていることのように見える。しかし後半のぶっ壊しは必要以上で、わざわざお金をかけてやり過ぎ、台無しにしてしまった、としか思えない。敵をぶっ壊す分にはかまわないとしても、まわりに迷惑をかけ放題。最初の問題提示で「壊しすぎ」を上げていなければ気にならなかったのかもしれないが、それを解決すべき問題として掲げたのだから、被害を最小限にとどめて問題を解決してくれないとスッキリしない。

 冒頭のアジア系のギャングたちはイングラムやミニ・ウージーで武装。ハンコックのサングラスを銃撃で壊し、レイバンのサングラスをくれてやる。そして中盤の銀行強盗で出動しているLAPDの警官はベレッタM92、SWATはM4A1カービン、強盗はたぶんG36C。派手にモノをぶっ壊す.50口径もあるとセリフにはあったが。リカー・ショップで強盗が持っていたのはステンレスの6インチ・リボルバー。.44マグナムのM629あたりか。

 もちろんコロンビア映画(ソニー・ピクチャーズ)なので、使っているノート・パソコンはバイオ。

 美しい絵。きめ細かくみずみずしい感じ。一部、画質の異なるところもあったが、撮影のミスか。また音質も非常に良く、サラウンドもよく回っていた。ただシネスコなので一部、手持ち撮影によるカメラの揺れが気になり、集中できないところもあった。

 主演はミュージシャンというよりすっかりハリウッド・スターという感じのウィル・スミス。多彩な役柄を演じている。「幸せのちから」(The Pursuits of Happyness・2006・米)のしがないセールスマン、「アイ、ロボット」(I, Robot・2004・米/独)の刑事、「アイ・アム・レジェンド」(I am Legend・2007・米)の軍人……。ちょっぴりコメディっぽいもののほうが向いている気がする。最近はプロデューサー業にも進出している。

 友人となる広告マンのレイ・エンブリーはジェイソン・ベイトマン。本作からもわかるようにコメディ系の作品が多い人。最近では「スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2006・米)の女装趣味のある弁護士、「キングダム ―見えざる敵―」(The Kingdom・2007・米)のFBIタクティカル・レスポンス・チームの情報分析官、「マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋」(Mr. Magorium's Wonder Emporium・2007・米)のかたぶつ会計士など。

 広告マンの妻、メアリーには美人女優のシャーリーズ・セロン。単なる妻役にこのスターを使うわけないと思ったら、やっぱりそういう仕掛けだったか。「モンスター」(Monster・2003・米/独)では、特殊メイクと体重増加までして美人じゃない殺人鬼を、SF「イーオン・フラックス」(Aeon Flux・2005・米)ではTVアニメのヒロインを、そしてつい最近トミー・リー・ジョーンズの「告発のとき」(In the Valley of Elah・2007・米)では地元警察の刑事を演じていた。売れてからもSFなんかに出るところが良い。ボク的には「マイティ・ジョー」(Mighty Joe Young・1998・米)のジョーを愛する娘が良かった。ロバート・レッドフォード監督の「バガー・ヴァンスの伝説」(The Legend of Bagger Vance・2000・米)ではウィル・スミスと共演している。

 脚本はヴィンセント・ノーとヴィンス・ギリガンの2人。ヴィンセント・ノーはTVの脚本などを書いていたようだが、本作で劇場作品脚本家デビュー。ヴィンス・ギリガンもTVの仕事が中心で、特に「Xファイル」は多い。脚本のほか監督、プロデューサーとしても活躍している。今回はちょっと突っ込みが足りなかったような。

 製作総指揮に「U-571」(U-571・2000・仏/米)や「ターミネーター3」(Terminator 3: Rise of the Machines・2003・)の監督ジョナサン・モストウ、プロデューサーに「アイ、ロボット」でウィル・スミスと仕事をしている脚本家でプロデューサーのアキバ・ゴールズマン、「アリ」(Ali・2001・米)でィル・スミスと仕事をしている監督で脚本家でプロデューサーのマイケル・マン。筆頭製作総指揮らしいのはイアン・ブライス。「スピード」(Speed・1994・米)、「プライベート・ライアン」(Sving Private Ryan・1998・米)、「スパイダーマン」、「ティアーズ・オブ・ザ・サン」(Tears of the Sun・2003・米)、「トランスフォーマー」(Transformers・2007・米)などそうそうたる作品を手がけた人。うーむ。

 監督は役者でもあるピーター・バーグ。面白いアクション作品、ザ・ロック改め「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン」(The Rundown・2003・米)や「キングダム ―見えざる敵―」を監督している。本作もアクションはもちろん、全体に悪くない。ただ壊しすぎ。そして脚本がちょっと……。

 公開初日の初回、先行上映があったおかげか、銀座の劇場はそれほど混まなかった。前日に座席を確保しておき、15分前に着いたらすでに開場済み。

 最終的に220席の2階席の2/3が埋まった。ほぼ中高年というか、中年層。6対4で男性が多かった。5分前くらいから劇場案内が上映され、チャイムが鳴って半暗になってCMと予告編のスタート。

 劇場前に関係者なのか、異様に人が多かったのが気になった。アンケートをやっていたから、きっと関係者だろう。

 気になった予告編は……上下マスクの「イーグル・アイ」は新予告。シャイア・ラブーフはあまり好きではないが、面白そう。同じく上下マスクの「幸せの1ページ」も新予告。だんだん内容がわかってきた。「人生なんて、った1行で変えられる」というコピーが良い。ただタイトルが出るのが遅い。

 スクリーンがシネスコになって、絵なしで松山ケンイチの名が出て「カムイ外伝」と。オヤジはときめくと思うが、さっぱりわからない。2009年夏と。

 モノクロになって、クリスチャン・ベールのジョン・コナー……ってえっ、もしかして「ターミネーター4」。コロンビアの自由の女神もモノクロ。内容はほとんどわからないが、ノイズがダダン、ダッダダンのあの曲になるところがカッコいい。2009年6月公開らしい。

 さらに驚いたのが「007慰めの報酬」。内容はほとんどわからなかったが、ボンド・ガールが「ヒットマン」(Hitman・2007・仏/米)の美女オルガ・キュリレンコなので期待してしまう。気になったのは、復讐というフレーズと、ライセンスを取り上げるという部分。すでに以前、007が私怨で動いて失敗しているはずなのに「007消されたライセンス」(Licence to Kill・1989・英/米)、またかという不安が……。主役交代にならなければいが。

 CINEMA ALTA 4Kと出て、ソニーのロゴが出てからの上映。デジタルはコロンビア・マークからしてきれいだった。驚異的。

1つ前へ一覧へ次へ