Shutter


2008年9月6日(土)「シャッター」

SHUTTER・2008・米・1時間30分(IMDbではレイテッド版は85分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、太田直子/ビスタ・サイズ(ARRI)/ドルビー・デジタル、dts

(米PG-13指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://movies.foxjapan.com/shutter/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

結婚式を挙げたばかりのフォトグラファーのベン(ジョシュア・ジャクソン)とジェーン(レイチェル・テイラー)は、早速、新婚旅行と日本での撮影の仕事のため日本に向かった。レンタカーを借り、ジェーンの運転で富士山近くのコテージに向かう途中、夜中の道路の真ん中に若い女性(奥菜恵)が現れはねてしまう。ところが女性の姿はどこにもない。その日からベンは首に痛みを覚えるようになり、仕事のため東京についてからも、デジカメに奇妙な光が写り込むような事態が続いた。さらに、ベンが仕事で撮影した写真にもありえない光が写り込む始末。ジェーンは友人から日本の心霊写真雑誌の編集者を紹介してもらい、彼の紹介でホンモノの心霊写真を霊媒師、成瀬(山本圭)のもとを訪ねる。

73点

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 IMDbで4.8という低評価。しかし、普通にハリウッド・スタイルで、ちょっぴり日本テイストのよくできたホラー。ただ、後味は良くない。すべて解決のすっきり爽快、ハッピー・エンディングというわけにはいかない。これがアメリカでは受けなかったのだろう。だとしたら、なぜアメリカのプロデューサーは本作を作ろうとしたのか。リメイクなのに。

 確かに、怖さは多少ハリウッド的に音で脅かす傾向はあるが、日本的に怖いということで、西洋人にはピンとこないのかもしれない。オリジナルは「心霊写真」(Shutter・2004・タイ)だから、アジア人的には怖さは共通しているのかも。ラストもオリジナルと同じ。仏教のおかげか。

 ストーリーは若干変えられているものの、ほぼオリジナルのプロットどおり。変えられている部分は、まさにボクがオリジナルで感じた不満部分とほぼ一緒だった。まず主人公というかメインを、巻き込まれて恐怖を体験する女性の方に移し、男性もダメ男ではなく何もしなかった男にして(それでも未必の故意なわけだが)、より感情移入しやすくされている。しかもメイン・キャラクターはアメリカ人夫婦で、舞台は日本にされている。つまり良かった部分を生かして、より面白く練り込まれているのだ。ちょっと「サイコ」(Psycho・1960・米)なカットがあったのはオマージュだろうが、予想が付く。

 こまかな伏線など良くできていると思うが、アメリカ人のみが悪者になっていて、日本人は被害者というのは、アメリカ人観客には面白くないだろう。広告代理店の国際部三銃士ときた。たぶん主人公以外の2人は日本人にすれば良かったのでは。そして助けようとするアメリカ人も現れないと……。それ以外、受けなかった理由は見つけられなかった。

 フォトグラファーを演じたジョシュア・ジャクソンは、どこかで見たなあと思ったら、面白かったサスペンス「ザ・スカルズ 髑髏の誓い」(The Skulls・2000・米)の主役を演じていた人だった。少年時代、なかなか面白かった少年ホッケー・チームの奮闘を描いた「飛べないアヒル」(the Mighty Ducks・1992・米)に出ていたらしい。

 その妻、主人公のジェーンを演じたのは、オーストラリア生まれのレイチェル・テイラー。例の監督が撮った特撮がみどころの「トランスフォーマー」(transformers・2007・米)に出ていたらしい。あの監督好みの金髪美人。本作では恐怖におびえる感じや、謎を究明するためひとりで積極的に調べる姿など、なかなかの演技力を見せてくれた。そのおかげで観客はドラマに引き込まれたし感情移入しやすかった。今後も期待できそうだ。

 霊を演じた奥菜恵は、良かった。やはり美人が幽霊を演じるべきで、怖い。やはり半透明な感じではかなく写るとそれらしい。しかし、それよりも、さらに怖いのは、本当の心霊写真のようにモノトーンで走る地下鉄の窓の外に見えるカット。それだけでも怖いのに、映像が動くのだ。これは心底怖い。

 そのサイコな母親を演じたのは宮崎美子。母親というにも若く見えるので、その点ではあまり説得力がないが、やたら愛想がよいのに目を合わせない感じが、じわーっと怖かった。

 霊媒師、成瀬を紹介する心霊写真投稿雑誌の編集者ミツオは、人気TVドラマ「HEROES/ヒーローズ」でマシ・オカ演じるヒロ・ナカムラの友人アンドウくんを演じた韓国うまれでアメリカ育ちの俳優ジェイムズ・カイソン・リー。英語のうまい日本人役だったので、そんなに違和感はなかったが……HEROES/ヒーローズ」のヒットのおかげで、これから公開される作品が10本ほども控えているというからすごい。

 オリジナルのタイ版ではこのシーンでホンモノの心霊写真が使われたということだったが、本作ではどうだったんだろうか。

 意味深げに広告代理店の受付嬢が写っていたが、なんらその先の展開はなし。一体なんだったのか。

 脚色はルーク・ドーソン。どうも長編劇場映画は初めての人らしい。どうしてこの人に依頼したのかわからないが、脚本自体はよくまとめられているのではないだろうか。アメリカ人だけが悪者というのもどうかと思うけど。

 監督は落合正幸。ちょっと前に「感染」(2004・日)を撮っている。TVの「世にも奇妙な物語」をずっと撮ってきた人で、映画では第2回日本ホラー小説大賞を受賞した原作で、葉月里緒奈の着ぐるみヌードが話題になった「パラサイト・イヴ」(1996・日)や、ヒット小説の映画化「催眠」(1999・日)を手がけている。ホラー系一直線の人だけにうまい。ただ、やっぱりハリウッドで撮ると音で脅かすようになるんだろうか。そこが残念だった。

 プロデューサーのひとりに、日本人の一瀬隆重。「リング」(1998・日)あたりからホラー系が多いようだが、面白かったアクション「クライング・フリーマン」(Crying Freeman・1996・加/仏/日/米)も手がけているし、スターになる前のラッセル・クロウと豊川悦司が共演したアクション「No Waty Back/逃走遊戯」(No way Back・1995・米)も手がけている。もっとアクションも作ってくれると良いのだが。

 オープニングの文字は、波のように漂う感じで現れるという演出。よくタイトルを担当しているパシフィック・タイトルというところが作っているようだ。

 公開初日の初回、新宿の劇場は45分前に着いたら誰も並んでいなかった。30分前に6〜7人になって、20分前に開場。全席自由で、最終的には406席に2〜2.5割ほどの入り。ほとんどは中高年で、若い人は10人くらい。ホラーなのに……。男女比はほぼ半々。かなりエグイ表現があってPG-12指定だが、まあ子供は見に来ないだろう。初日からこの感じでは、すぐにオスカーに落ちそうだ。

 スクリーンはビスタで開いていて、BGMが止まって暗くなって(非常口ランプだけは明るいまま)始まった予告編は……上下マスクの「Dウォーズ」は、なんだかドラゴンのようなモンスターが出てくるパニック映画のような感じ。よくわからなかったが、なんとなくすごそう。

 ジョン・カーペンター監督の「ハロウィン」がロブ・ゾンビ監督でリメイクされるらしい(上下マスク)。予告を見る限りかなり残酷な感じで、日本でR-15というから凄いんだろう。上下マスクの「オーストラリア」は、ニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマンの出演で、平和で穏やかな暮らしを送っているところに、突然日本軍の戦闘機(零戦?)が襲ってくるというもの。監督は「ムーラン・ルージュ」(Moulin Rouge・2001・米)のバズ・ラーマンで、彼らしいいかにも作り物っぽいが美しい絵作り。どうだろうなあ。

 「Xファイル」はモルダーとスカリーの2人が登場するビデオからスタートする新バージョン。シリーズのクリエーターであるクリス・カーターが監督するらしい。こは期待が募る。

 なかなかタイトルが出ずに苛ついたが、キアヌ・リーブスの上下マスク「地球が静止する日」のリメイクはなかなか壮大なスケールのようで、面白そう。あれ、この予告を見たのは2回目だが、最初はいつだっただろうか……。最初のインタビューが「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香)の尋問シーンのようで、ちょっと気になった。


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