Wanted


2008年9月20日(土)「ウォンテッド」

WANTED・2008・米/独・1時間50分

日本語字幕:手書き体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(日本語字幕版もあり)
(米R指定、日R-15指定)

公式サイト
http://choose-your-destiny.jp/
(入ると画面極大化。音に注意。全国の劇場案内もあり)

ウェスリー・ギブソン(ジェイムズ・マカヴォイ)は、ある会社の顧客管理担当として、女性上司のいじめを受け、同棲している彼女は友人に寝取られ、ストレスがたまる毎日を送っていた。そんなある日、いつも抗ストレス剤を買うドラッグ・ストアで、謎の女性フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)が現れ、ウェスリーを追っていた男と銃撃戦を演じ、からくもウェスリーを脱出させると、ある組織のアジトである紡績工場へ連れて行く。ボスらしい男のスローン(モーガン・フリーマン)が言うには、ウェスリーが7歳の時に家を出た父は、特殊能力を生かしこの組織“フラタニティ”の暗殺者として活躍していたが、昨日、組織の裏切り者クロス(トーマス・クレッチマン)によって殺されたという。そして、父の血を引くオマエも特殊能力を持っているから、組織の暗殺者になれというのだった。

73点

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 とにかく凄いビジュアル。よく考えるとおかしいのかもしれないが、見ている間はそれを感じさせない勢いで一気に最後まで突っ走る。早回しやスローモーション、逆回転など時間を自由に操り、独特のリズムとテンポで、あり得ないアクション、あり得ない世界をたっぷりと見せてくれる。まさに「ナイト・ウォッチ」(Nochnoi Dozor・露・2004)の監督、ティムール・ベクマンベトフの世界が展開する。

 ドラマも強烈で、うんざりするような日常をじっくりと描き、その後ちょっと先もどうなるかわからない過酷な暗殺者の暴力的世界を描いていく。この対比の鮮やかさと転換の見事さ。そして、思いもしなかった展開と、どんでん返し。先が読めないので、ついついのめり込んでしまう。

 ただ、笑える要素も入れながら、リアルに描かれる暴力表現と、SFのようなありえない設定と出来事のせいか、後半になるとどうにも感情が伝わりにくくなってくる。選択に困るような状況、生命の危機を感じる状況、怒り、悲しみなどが渦巻く状況なのに、いまひとつ伝わってこない。非現実的。これが惜しい。

 女殺し屋フォックスを演じたアンジェリーナ・ジョリー。ハリウッドのトップ女優の1人と言われてはいるが、出演した作品の評価はどれもあまり高くなかった。「トゥーム・レーダー」(Lara Croft: Tomb Raider・2001・英ほか)もIMDbで5.3点、「Mr. & Mrs.スミス」(Mr. & Ms. Smith・2005・米)でさえ6.4点。ボクは「ボーン・コレクター」(The Bone Collector・1999・米)が彼女の作品の中では一番良かった気がするが、それも6.3点。本作は7.1点で、たぶん歴代のアンジェリーナ作品の中でもっとも評価が高い。言葉少なく、行動のみで演じているところが、カッコよく、クールで彼女に合っていた気がする。使っていた銃、どうやらオリンピック・アームズ(http://www.olyarms.com/)の1911オート、マッチマスター5のよう。ブッシング・コンプが付いていて、奇妙な彫刻が入っている。クロス・ドローはどうかと思うが。スーパーというかドラッグ・ストアで使うアタッチメントはコーナー・ショット(http://www.cornershot.com/)。ロング・マガジンの1911オートを取り付けてフルオートで撃っているが、そんな機能はなかったのでは? もちろん軍および法執行機関向けで、一般市販はされていない。ほかにスコーピオンSMG

 主人公の気弱そうな青年ウェスリー・ギブソンを好演したのはジェイムズ・マカヴォイ。「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」(The Chronicles of Narnia: The Lion, the Witch and the Wardrobe・2005・米/英)で、下の妹が最初に出会うナルニアの住人タムナスさんを演じていた人。実在の独裁者、人食いアミンの物語「ラストキング・オブ・スコットランド」(The Last King of Scotland・2006・英ほか)で、巻き込まれるスコットランド人青年医師をこれまた好演。クリスティーナ・リッチがブタ鼻の少女を演じた「ペネロピ」(Penelope・2006・英/米)でも少女を愛するダメ男の青年マックスを演じていた。気の弱そうな役が圧倒的に多いようだし、またうまい。使っていた銃はイマニシ17というニックネーム(?)のベレッタM92Fのカスタム。一部H&KのUSPも使っている。

 組織の指導的役割を演じているスローン役のモーガン・フリーマンは素晴らしい存在感。彼がこうなんだと言うと、そんなのかと思ってしまう説得力がある。本作ではそれを逆手にとっているわけだ。つまりはまり役。最近ではバットマン最新作の「ダークナイト」(The Dark Knight・2008・米)も良かったが、何といってもジャック・ニコルソンと共演した「最高の人生の見つけ方」(The Bucket List・2007・米)が良かった。使っていたのはモーゼルのM712のよう。撃たなかったが、ロング・マガジンには彫刻入り。

 途中でちょっと出てくる重要な鍵を握る男ペクワースキーを演じていたのは、イギリスの名優テレンス・スタンプ。この人は出てくるだけで怪しげな雰囲気が漂う。一番最近見たのは、ボブ・サップが出た「エレクトラ」(Elektra・2005・米)だったろうか。強い印象を残したのは、サイコな青年を演じた「コレクター」(The Collector・1965・英/米)や、ホラー・オムニバスの「世にも怪奇な物語」(Histoires extraodinaires・1968・仏ほか)の中で最も怖かった第3話の「悪魔の首飾り」で落ち目の俳優役あたり。小劇場の公開で見ている人が少ないが、「イギリスから来た男」(The Limey・1999・米)もテレンス・スタンプが怖くて良かった。

 追ってくる謎の男、クロスはトーマス・クレッチマン。「戦場のピアニスト」(The Pianist・2002・仏ほか)で音楽好きのドイツ軍将校を演じていた人。つい最近ニコラス・ケイジの「NEXT ネクスト」(Next・2007・米)で殺し屋を演じていた。良い人も、悪い人も演じられるところが凄い。使っていたのはCz75あたりかジェリコ941のようだった。

 ロウ風呂の係はコンスタンチン・ハベンスキー。「ナイト・ウォッチ」と「デイ・ウォッチ」(Dnevnoy Dozor・2006・露)の主人公、アントン・ゴロデツキーを演じていた人だ。監督のティムール・ベクマンベトフがそれらの作品で世界的に知られるようになったから、ハリウッド・デビュー作に引っ張ってきたのだろう。なかなか面白い味を出している。

 その監督ティムール・ベクマンベトフの「ウォッチ・シリーズ」3部作の最後、「トワイライト・ウォッチ」はプリ・プロダクションに入ったそうだが、日本公開されるのだろうか。「2」が小劇場での縮小公開だったからなあ。

 原作はマーク・ミラーとJ・G・ジョーンズのコミック。これをマイケル・ブラントとデレク・ハースの2人。「ワイルド・スピード2」(2 Fast 2 Furious・2003・米/独)で注目を集め、アメリカでは大ヒットしたというラッセル・クロウの西部劇「3:10 to Yuma」(2007・米)(日本劇場未公開)の脚本が認められて本作を担当したらしい。ああ「3:10 to Yuma」見たいけど、西部劇だから公開されない可能性が高い。良く出来た「セラフィム・フォールズ」(Seraphim Falls・2006・米)も公開されなかったもんなあ。

 銃器はほかにM4A1カービンや、グロック、フリント・ロック・ピストル、ハイパワー、S&Wオート、など。アーマラー(武器係)はIMDbによるとデイヴ・エヴァンス。「007/カジノ・ロワイヤル」(Casino Royale・2006・米ほか)や「トゥモロー・ワールド」(Children of Men・2006・日ほか)を手がけた人。

 公開初日の初回、新宿の劇場は50分くらい前に着いたら、前売り券の所にオヤジが1人。45分前くらいになって当日券に1人、前売り券に8人。40分前くらいに整列に来て、この時には当日10人、前売り12人くらい。ほぼ中高年で、若い人は2〜3人。女性はオバサンが2〜3人。

 25分前くらいに当日券の窓口が開いた。この時点で当日20人くらい、前売り25人くらい。まもなく会場となって全席自由の場内へ。どうやら、この作品がこの大劇場の最後の上映らしい。ビルの建て替えでなくなってしまうらしい。うむむ。

 スクリーンはビスタで開き。最終的には1,044席に3.5〜4割くらいの入り。前評判の割には入りが少ないか。来場プレゼントで、ポスト・カードをもらったが……これって使いようがないなあ。

 チャイムが鳴って、半暗になって始まった予告で気になったものは……「感染列島」は相変わらず内容のわからないもの。まだ前売り券も発売になっていないからか。上下マスクの「K-20怪人二十面相・伝」は、レトロな感じと金城武が良い感じで、なんだかワクワクしてくる。

 「ドラゴンボール」も相変わらずCGのボールが7つかな、出てくるだけ。公式サイトもなし。2009年3月の公開らしい。上下マスクの「WALL・E ウォーリー」は新予告。まるで実写のようなリアルさと、ハートウォーミングな雰囲気。うまいなあ。早く見たい。

 ジョージ・クルーニーとレニー・ゼルウィガーが共演する「かけひきは、恋のはじまり」は、なんだかケーリー・グラントの「ヒズ・ガール・フライデー」(His Girl Friday・1940・米)みたいな雰囲気で面白そう。ジョージ・クルーニーはケーリー・グラントを目指しているんだろうか。見たいが、劇場で見るのはちょっと恥ずかしいかも。コテコテの「P.S.アイ・ラヴ・ユー」よりは見やすいかもしれないけど。

 暗くなって、シネスコになって、ドルビー・デジタルの機関車のデモの後も「レッド・クリフ」の新予告。凄い迫力。もの凄いモブ・シーン。早く見たい。


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