Nights in Rodanthe


2008年9月27日(土)「最後の初恋」

NIGHTS IN RODANTHE・2008・米/豪・1時間37分

日本語字幕:手書き体下、桜井裕子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/nightsinrodanthe/
(音に注意)

夫の浮気が原因で離婚したエイドリアン(ダイアン・レイン)は、親友のジーン(ヴィオラ・デイヴィス)が営む浜辺のペンションを4日間だけ手伝うため、ノース・カロライナのロダンテという町にやってくる。シーズン・オフの4日間、そこへ泊まりに来たのは、家庭を顧みず医業に打ち込み、妻と医師となった息子マーク(ジェイムズ・フランコ)も家を出て行ってしまい、さらに医療事故で患者を死なせてしまった医師、ポール・フラナー(リチャード・ギア)。彼は事故で死なせてしまった患者の家族に呼ばれていたのだった。

72点

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 感動の、2回目の恋の物語。恋だけでなく、なんでも遅すぎるということはないと映画は言う。何があっても、あきらめず前向きに歩いていく。そんな雰囲気が常にあふれているから、どんなことが起きても暗くならず、たくましく生きていける。見ていて落ち込むようなことにはならないし、悲しくて涙が流れそうになるが、決してネガティブな映画ではない。アメリカ人らしいというのだろうか。大きな悲劇なのに、明るく、笑いも適度にあり、ロマンスがあって、教えられることも多く、ジメジメしていない。日本で作ったら、陰鬱な悲しい、お涙ちょうだいの物語になっているだろうなあ。

 ただ、話が小さい。TVのドラマで充分という感じ。なぜ映画なのだろう。しかも大きなシネスコ画面。中心となるペンションは横に広い浜辺にはあるものの、4階建てか何かで背が高いし。嵐が襲ってくるが、スペクタクルがあるわけでもない。2人の距離を描くには、むしろTVサイズかビスタの方が良かったのでは。正直な印象を書けば、普通のラブ・ストーリー。ただキャストが豪華。そして、わざわざ建てたらしい風変わりなペンションの建物がすごいくらい。南米での山崩れは、床に泥水がちょっと進入してくるくらいだし……。

 主演のダイアン・レインはこのところ映画に出まくり。つい最近「ブラックサイト」(Untraceable・2007・米)でFBIのサイバー捜査官を演じていた。そのちょっと前にはビジュアルだけは素晴らしかった「ジャンパー」(Jumper・2008・米)でちらりと主人公の母親役で出ていた。捜査官役も決まっていたが、本作のような普通の女性役もうまい。「運命の女」(Unfaithfull・2002・米)ではリチャード・ギアと夫婦役で共演している。夫を裏切る役だったが。

 リチャード・ギアも多くの映画に出ている。そして私生活でもいろいろと問題を起こしているようだ。つい最近「ハンティング・パーティ」(The Hunting Party・2007・米ほか)に出ていた。私生活はともかく、演技はうまい。そしてカッコいい。エイドリアンが惚れるのも無理はないと思わせてくれる。

 医療事故で妻に死なれた夫を演じたのは、スコット・グレン。「ライトスタッフ」(The Right Stuff・1983・米)のアラン・シェパード役あたりから注目されたと思う。ボク的にはスティーヴン・キング原作の「ザ・キープ」(The Keep・1983・英)の方が好きだったりするが。ほかにも西部劇の「シルバラード」(Silvarado・1985・米)や、「羊たちの沈黙」(The Silence of the Rambs・1990・米)のFBI捜査官、最近では人気シリーズの「ボーン・アルティメイタム」(The Bourne Ultimatum・2007・米)でCIAの悪徳局長を演じていた。

 ちょっとしか出てこないうえにクレジットもないが、リチャード・ギアの息子役を演じたのは、ジェームズ・フランコ。「スパイダーマン」(Spider-man・2002・米)で注目されるようになり、その後、小劇場での公開だったが面白かったWW I のパイロットを描いた「フライボーイズ」(Flyboys・2006・仏/米)、衝撃的な帰還兵のドラマ「告発の時」(In the Valley of Elah・2007・米)など勢いに乗っている。今後の活躍が楽しみ。

 原作は「きみに読む物語」(The Notebook・2004・米)のニコラス・スパークス。うまいはずだ。他にも「メッセージ・トン・ア・ボトル」(Message in a Bottle・1999・米)や「ウォーク・トゥ・リメンバー」(A Walk to Remember・2002・米)の原作を書いている。「きみに……」まではあまり映画化作品が話題にならなかったが、本作もなかなか良く、今後も期待できそう。

 脚本はアン・ピーコックとジョン・ロマノの2人。2人ともTV出身の人なので、本作のようにコンパクトにまとめるのは得意なのかも。ただ、アン・ピーコックは「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」(The Chronicles of Narnia: The Lion, the Witch and the Wardrobe・2005・米/英)というスケールの大きな作品も手がけている。

 監督はジョージ・C・ウルフ。これまでTVで活躍していた人で、本作が劇場長編映画デビュー作。やはりコンパトにまとめるのがうまいようだ。

 砂のようになって飛んでいくオープニングの文字をデザインしたのは、デボラ・ロス・フィルム・デザイン。「フィクサー」(Michael Clayton・2007・米)なども手がけているところ。派手ではないが、なかなか良いセンス。

 ラストにかかるイメージ・ソングは「ベスト・オブ・ミー」。オリジナルのアメリカ版には入っているのだろうか。確かに雰囲気はピッタリだったが。

 公開初日の初回、新宿の劇場は30分くらい前に着いたら中高年の男性2人、女性3人。まもなく開場して場内へ。スーパー・ペア・シート以外は全席自由。遅れて入ってくる人が多く、予告が始まったときは2割くらいの入りだったのが、最終的には2.5〜3割くらいに。男女比は4対6で女性の方が多く、若い人も増えたが、中心は中高年。

 チャイムの後、アナウンスがあって半暗で始まった予告編は……古いスクリーンらしく反射効率が悪いためか、場内が明るいまま(といっても本を読むには辛い明るさだが)始まったので、よく見えない。

 八嶋智人と佐藤江梨子が出ている「秋深き」は乳がんの映画らしいが、八嶋がサトエリの胸を(服の上から)わしづかみにするという衝撃的予告。かなりお涙ちょうだいではあるらしいが……。ドランクドラゴンの塚地武雅主演の「ハンサム・スーツ」は、ブ男が着ると谷原章介になってしまうスーツの話らしく、マドンナは北川景子。ちょっと面白そうだが、どうもTVドラマの延長のような印象で……。

 「宮廷画家ゴヤは見た」は、なんとも「家政婦は見た」みたいなタイトルで損をしていると思うが、監督は「カッコーの巣の上で」(One Flew over the Cuckoo's Nest・1975・米)や「アマデウス」(Amadeus・1984・米)の巨匠、ミロス・フォアマン。御年76歳。最近はあまり撮っていなかったようだが、どうなんだろう。予告では戦闘シーンも描かれていて、面白そうだが。

 007シリーズ最新作、上下マスクの「007/慰めの報酬」は新予告。ただしWEBサイトの方がより内容のわかる長いバージョン。奇想天外なSFチックな秘密兵器を使わなくなったのでリアルにはなったが、どうにも007映画という雰囲気がしなくなった。ただのスパイ・アクションという感じ。かつてはお正月映画に007を見るぞと言うワクワクする楽しみがあったのに、どこへ行ってしまったんだろう。どんなに絶体絶命の状況でも、いたずらっ子のような笑みを浮かべて冗談を言うショーン・コネリーから伝統の精神はなくなってしまったようだ。もう必死。とにかくガンバル……オジサンは悲しい。

 日本映画の「252 ―生存者あり―」は、どうやら巨大台風に襲われ、ハイパー・レスキューが活躍するというお話らしい。伊藤英明が出ているのでなんだか「海猿」(2004・日)のイメージと重なるが、予告を見た限りでは「デイ・アフター・トゥモロー」(The Day After Tomorrow・2004・米)のような印象。どうなんだろう。


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