Iron Man


2008年9月28日(日)「アイアンマン」

IRION MAN・2008・米・2時間05分(IMDbでは126分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision[IMDbではSuper 35])/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)(DLP上映、日本吹替版もあり)

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/ironman/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

天才発明家にして巨大軍事産業スターク・インダストリーの若き社長トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)。彼は自分が発明した兵器を世界各国に売り込み、それがどう使われようとかまわなかった。また日ごとパーティやギャンブルに明け暮れ、毎晩違う女性と過ごすプレイ・ボーイぶり。そして、圧倒的な破壊力を誇る新しいミサイル「ジェリコ」のプレゼンのため、アフガニスタンのバグラム空軍基地に向かう。その破壊力を見せつけた帰り、車列がゲリラ「テン・リングス」に襲われ、トニー・スタークは重傷を負って捕虜となってしまう。ゲリラは彼を拷問し、我々のために「ジェリコ」を作れと強要する。しかしスタークはミサイルを作ると見せかけて、脱出するためのパワード・スーツを作る。同じ捕虜のインセン(ショーン・トーブ)の助けでからくも脱出したスタークは、会社に戻ると兵器の生産をやめることを宣言し、スーツをさらにグレード・アップすると、不法に入手されたスターク・インダストリーの兵器を破壊する活動を始める。

75点

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 おもしろい。たぶん、いまある技術をベースにちょっと進歩させて、重装甲と武器をプラスし、飛行能力を付加して完成されたのがアイアンマン。単なる夢物語に見えない。その製作過程をじっくりと見せることによって、とても説得力のあるファンタジーとなっている。そして、本当に実在するかのような存在感と、派手なアクション。ラストのパワード・スーツ同士の戦いもリアルで大迫力。まるで「トランスフォーマー」(Transformers・2007・米)のロボット同士の戦いみたい。サイズが小さい分、こちらの方がよりリアルかもしれない。それでいて、ちゃんと情感とかドラマが描き込まれているので、感情移入して125分を堪能できる。

 特に良いのがロバート・ダウニー・Jr.演じるトニー・スターク。捕虜になるまでが実に嫌なヤツで、いかにもいそうな感じ。「人殺しの道具を作って平気なのか」という質問に「戦争がなくなったら小児病院を建てる」と自信を持ってうそぶいてみせる。また、前社長のオバディア・ステイン(ジェフ・ブリッジス)も良い。前半はトニー・スタークを擁護する良き父親のような存在なのに、後半、まるで人が違って悪の権化のようになるところが凄い。

 そんな人間関係が微妙なところも本作の面白いところ。社長の身の回りの世話をする秘書のようなペッパー・ポッツ(グウィネス・バルトロー)も、金のためだけで働いているようなのに、女の後始末までしていながら、どこか社長に男性として引かれているようでもあり、「トニー・スタークにもハートがあった」などという言葉を入れたものを贈って皮肉ったりと、兵器産業を完全に認めているわけでもないらしい。

 さらに軍人の友人、ローディ大佐(テレンス・ハワード)も、軍人という立場でありながら、突然正義に目覚めたトニー・スタークをかばうような所を見せる。そして、バージョン・アップする前の古い銀色のスーツを見て「次にな」みたいなことを言う。あきらかに続編を意識していて、自らスーツを着て戦うかもしれないわけだ。まあ、不正入手した兵器を破壊するというのなら軍の存在意義とも対立しないわけだ。さすがにすべての兵器を否定するというところまでは行っていない。

 その上、雑誌ヴァニティ・フェアの女性記者クリスティン(レスリー・ビブ)も、トニー・スタークを「死の商人」と糾弾しながらベッドを共にする。しかし追い出された腹いせか、再び登場すると糾弾を続けている。

 登場人物が多彩で、キャラクターがおもしろい。原作はマーベル・コミック。スタン・リー(本作にもヒュー・ヘフナーと間違われる役で出演している。1922年生まれというから86歳!)が中心となって作ったもので、1960年代に出版されたらしい。クレジットでは原作としてではなく、キャラクターという形になっている。つまり設定だけ借りて、お話自体は映画オリジナルということだろう。トニー・スタークのモデルは大富豪のハワード・ヒューズなんだとか。

 コンピューター、ジャービスの声を出していたのは、傑作騎士物語「ロック・ユー!」(A Knight's Tale・2001・米)のポール・ベタニーなんだとか。ぜいたくな使い方。

 良く出来た脚本は、最初に出てくるのはマーク・ファーガス。「トゥモロー・ワールド」(Children of Men・2006・日/英/米)の脚本を手がけた人。どうりでうまいわけだ。次に名前のあるホーク・オストビーもマーク・ファーガスと組んで仕事をやってきたらしい。

 監督はジョン・ファブロー。もともとはTVの俳優だった人で、1990年頃から活躍しているらしい。キアヌー・リーブスの痛快スポーツ感動作「リプレイスメント」(The Replacements・2000・米)で、SWATのアメフト・メンバーの1人を演じていた。監督も何本かやっていて、日本でも公開された劇場作品ではSFXばかりが目立った「ザスーラ」(Zathura・2005・米)がある。あらら。本作ではピタリとはまったのだろう。本当の評価は自作でということになるかも。本作にも出演しているらしい。

 米軍はM4A1。ゲリラはなぜか最新のG36やUMPサブ・マシンガンなんかを装備していて、車両にはM2銃機関銃が積んである。登場するPCはDELLで、データを保存するのにUSBメモリーを使う。時代は変わった。トニー・スタークが乗っている車はアウディのR8というモデルらしい。登場する戦闘機はF-22ラプター。スターク・インダストリーの入り口前にはYF-22と書かれた機体が飾られている。ハンガーには無人偵察機のRQ-4グローバルホークのような機体もあった。トニー・スタークのプライベート・ジェットはYF-23というかRQ-4のような尾翼で、実在するものかどうか不明。

 アイアンマンを作ったのは、スタン・ウィンストン・スタジオ。「ターミネーター」(The Terminator・1984・米)や「エイリアン2」(Aliens・1986・米)、「プレデター」(Predator・1987・米)などの造形を手がけてきたところ。さすがにうまい。「ザスーラ」ではジョン・ファブロー監督と仕事もしている。

 冒頭、トニー・スタークは防弾チョッキを装着しているが、至近距離で爆発が起こり、微細な破片が心臓近くにたくさん刺さってしまう。そのままだと破片が全身を回ることになるため、電磁石で同じ位置に惹きつけておかなければならなくなる。それが胸に付けている装置の正体だ。素晴らしい設定。最初はトラック用のような大きなバッテリーを抱えて移動している。

 エンド・クレジットの前に「最後に映像があります」みたいな字幕が出て、誰も席を立たない。それは、トニー・スタークを家で待ち受ける軍服の人物がいて、演じているのはサミュエル・L・ジャクソン。トニー・スタークを陰で支えた組織「シールド」のニック・フューリーと名乗る。「インクレディブル・ハルク」(The Incredible Hulk・2008・米)のように別の物語とリンクしているらしい。

 公開2日目の初回、前日に座席を確保しておいて20分くらい前に到着したら、新宿の劇場はまだ開場していなかった。DLP上映ということでスクリーン・サイズもわからないのにチャレンジしたが、150席ほどの小さなスクリーンだった。CGアニメなどは別として、通常の実写は、ボクの目ではフィルム上映との違いがわからなかった。ただ、音響設備は最新のものだろうから抜群にクリアで立体感があり、重低音など体が振動するほど大迫力。うーむ、スクリーンサイズを選んで歌舞伎町へ行った方が良かったか……。ここは1Fのエレベーターに乗るところから込んでいる。しかも換気が悪いのか、食べ物のにおいが漂ってきて、気になってしようがなかった。最初はエアコンも効いていなかったし。

 7〜8分前になってやっと開場。スクリーンはビスタで開き、案内を上映。半暗で予告が始まっても人が続々入ってきて、最終的には149席に3〜3.5割くらいの入り。9時40分からということで少し早かったからかもしれない。7割くらいは若い人で、女性は10人くらい。中高年はこういうルールを押しつける感じのすかした劇場は苦手かもしれない。

 スクリーンは明るいので、半暗で予告を見ても普通に見えた。気になった予告は…… 日本ではあまり人気のないベン・スティーラーのオバカ映画、上下マスクの「トロピック・サンダー」は、売れない役者たちが映画の撮影のためホンモノの戦場に送り込まれるというもので、予告を見ると面白そう。ジャック・ブラックとロバート・ダウニー・Jr.も出ているし、評判も良いようだ。

 上下マスクの「彼が二度愛したS」は高級売春組織の話らしいが、単に男がそこの女に本気で惚れるというだけではなく、大きな事件に発展し、大爆発までが起こるというところが良さそう。女優さんもきれい。

 普通ビスタ・サイズのスクリーンは左右に広がってシネスコになるが、ここは箱が小さいので上下が狭まってシネスコとなった。そして暗くなり、水しぶきのドルビー・デジタルのデモがあってから、本編の上映。


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