Running Scared


2008年10月11日(土)「ワイルド・バレット」

RUNNING SCARED・2006・独/米・2時間02分

日本語字幕:手書き書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(ARRI、マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R-15指定)

公式サイト
http://www.wild-bullet.jp/
(全国の劇場案内もあり)

マフィアの曰く付きの銃器を処分するジョーイ・ガゼル(ポール・ウォーカー)は、その日、麻薬取引の現場で組織幹部のトミー・ペレロ(ジョニー・メスナー)が襲撃してきた悪徳警官を殺すのに使っステンレスの.38口径リボルバーの処分を頼まれる。ジョーイは処分を依頼された銃をすべて自宅の地下室に隠していたが、たまたま地下室で遊んでいた息子ニック(アレックス・ニューバーガー)と隣家の友達オルグ(キャメロン・ブライト)に見られてしまう。父親アンゾ(カレル・ローデン)の暴力に耐えかねていたオルグはそのリボルバーを持ち出し、父親に負傷させてしまう。そして家出したオルグは銃を持ったまま姿を消す。それを知ったジョーイは、銃を処分しなかったことがばれるとトミーから殺されると、警察の先回りをして銃弾を回収し、オルグを追う。

74点

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 面白い。日本でもR-15指定を受けるほどだから、かなりエロ、グロは満載だが、その骨子は童話の冒険物語のよう。いじわるな義父の元から逃げ出した10歳の少年が大冒険に巻き込まれ、魔物たちに追いかけられながら、いろんな人と出会って成長し、そして最後に正義の味方がやってきて助け出してくれ、いつまでもみんな仲良く暮らしましたとさ……という感じ。あると思わないどんでん返しが良い。

 ただ、魔物をマフィアにし、暴力、麻薬、娼婦、ストリッパー、チャイルド・ポルノ、汚職警官など、実に現実的なものを放り込んで、視線をマフィアの処分屋の大人の男にシフトさせたと。エンド・クレジットで書き割り的3Dの絵本のようなビジュアルが出るが、それが童話的冒険物語を象徴しているとも取れる。1挺のピストルを巡る流血のドラマ。実にうまい。

 さらに言えば、物語はたった一晩の話で、まるで人気TVドラマ「24」のよう。次々と大変なシチュエーションに陥って、強引に解決していかなければ先へ進めない。登場人物はいつも難しい決断を迫られる。

 しかも、その複雑な物語を、始めから終わりまで常に緊張させた状態で突っ走る。観客はずっと不安でドキドキしながら見ることになる。自分もジョーイと一緒にマフィアから逃げつつ、転々とする銃を追うような気分。それがうまい。すっかり映画に乗せられている。銃撃戦もスゴイ迫力。

 主演はつい最近、似たような良く出来たアクション「ボビーZ」(The Death and Life of Bobby Z・2007・米/独)にも主演していたポール・ウォーカー。実際には本作の方が先に作られていたのに、日本公開が後という不思議。ヒット・シリーズの「ワイルド・スピード」(The Fast and the Furious・2001・米/独)の最新作も控えいるようだし、撮影中のものもあると言うから、もっともノッている俳優の1人だろう。アクションがうまい。ちょっと腕を曲げたウィーバー・スタンスが決まっていて、実に結構。使っていた銃はM1911オートのスタイルだったが、スライド上面にエキストラクターのピンがあり、ハンマーのスパー部分が長く見えたが……。

 一緒に逃げるロシア人の子供を演じたのは、キャメロン・ブライト。引っ張りだこの子役で、怖かった「アダム―神の子悪魔の子」(Godsend・2004・米/加)や、「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」(X-Men: The Last Stand・2006・米英)、「ウルトラヴァイオレット」(Ultraviolet・2006・米)などに出ている。不思議な感じがとてもうまい。彼が盗み出すのは、S&WのM60のようだったが、ハンマーを起こしたらノーズがなかったのでM6373たりだろうか。

 息子役を演じたのは、なかなか美形のアレックス・ニューバーガー。アメリカ生まれで、撮影当時は14歳。映画は本作が初めてらしい。この後「Underdog」という作品に出ているらしいが、IMDbで4.2点という低評価。日本では公開されないかもしれない。

 Tバックで、ヘアまで披露して熱演の色ぽい奥さん役は、ヴェラ・ファーミガ。「15ミニッツ」(15 Minutes・2001・米)で密入国の美容師を演じていた人。最近ではレオナルド・ディカプリオの「ディパーテッド」(The Departed・2006・米)で。オリジナルでケリー・チャンが演じていた美人女医さんを演じていた。ちょっとエキゾチックな感じがするが、アメリカ生まれで、撮影当時は33歳。これからどんどん活躍しそうだ。後半で手にする銃はFNのBDA9のような感じだったが、色はシルバー。

 マフィアの幹部はジョニー・メスナー。無精ひげで悪そうにしているが、結構イケメン。「ティアーズ・オブ・ザ・サン」(Tears of the Sun・2003・米)のモヒカンの兵士や、大蛇映画の続編「アナコンダ2」(Anacondas・2004・米)でニヒルな船の船長を演じていた人。TV出身で、2008年はTVも映画も出まくり。新作もたくさん控えている。この人がアンクル・ホルスターにM637を入れていた。

 ジョン・ウェインを神とあがめるロシア人の虐待オヤジを演じたのは、「15ミニッツ」で極悪非道のチェコ人を演じヴェラ・ファーミガと共演したカレル・ローデン。とにかくスクリーンでは怖い。つい最近、面白かったコメディの「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」(Mr. Bean's Holiday・2007・英)に映画監督役で出ていたが、やっぱり怖かった。本当にチェコ生まれの人。

 悪徳警官はチャズ・パルミンテリ。イザベル・アジャーニのサスペンス「悪魔のような女」(Diabolique・1996・米)で殺されるとんでもない亭主を演じた人。「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects・1995・米/独)では特別捜査官を演じていた。「NOEL ノエル」(Noel・2004・米)という作品で監督し、ポール・ウォーカーと共演している。

 脚本・監督はウェイン・クラマー。密室殺人ミステリー系の「マインドハンター」(Mindhunters・2004・米)の原案と脚本を手がけた人。単純なようで複雑な話をうまくまとめて見せる人だと思う。とにかく何か起きそうでヤバイ感じを演出するのがうまい。場面つなぎも、カメラが壁の銃弾の穴を通して隣の家に行って窓を通って家の中に入っていくとか、写っているものがサングラスに反射している絵になってサングラスをかけている人につなぐなど、とても凝っている。この凝り方も良い感じ。あえてハイキーな絵を使うなど、焦燥感の演出もうまい。ただ、クライマックスから始まって、18時間前とか言って時間を巻き戻し、最後のオープニングのシーンになるのは、いろんなところで使われているので止めた方が良かったのでは。VISAのCMをパロったギャグは笑えた。

 他に出てくる銃は、定番のポンプ・アクション・ショットガン、グロック、ベレッタM92など。ストリップ劇場では、本当にダンサーがすっぽんぽんで踊っていて驚いた。Tバックというか、バタフライをつけているのが普通なので、意表を突かれて驚いた。

 平面の絵が書き割りのような3Dになり、実写になっているという凝ったタイトルと、エンディングのおとぎ話のようにストーリーをさかのぼるアニメーションは、ゲーリー・ヘバートというアニメーターと、パメラ・B・グリーンというタイトル・プロデューサー、クリエイティブ・ディレクターはジュリオ・フェラリオというチームで、会社はIPCというところ。このチームで「幻影師アイゼンハイム」(The Illusionist・2006・米/チェコ)のタイトルも手がけている。うまい。

 公開初日の初回、35分くらい前に着いたら、オバサンが1人。入り口も開いていなかった。20分前に開場した時点で、若い男性が3人くらいと、オバサンと、オヤジが2人。全席自由とは言っても、今時珍しいアナログ音声の劇場で、ちょっと混むとどの席でもスクリーンが見にくいだけに、場所取りには気を使う。

 15分前くらいから人が増え出して、最終的には272席に35人くらい。これは寂しい。もっと入って良い映画なのに。おかげでスクリーンは見やすかったけど。若い人は5〜6人。女性も5〜6人。あとは中高年の男性。ただ、関係者らしい10人くらいの1団が……若い女性のほとんどは関係者だったかも。予告が終わったら出て行った。

 ブザーが鳴って、カーテンが左右に開いて暗くなり……気になった予告編は、上下マスクの3D-CG「WALL E ウォーリー」は長い新バージョン。だんだん話がわかってきた。早く見たいなと。

 「24」のキーファー・サザーランドが忙しい合間をぬって出演したというホラー「ミラーズ」はなかなか面白そう。鏡に映る像の動きが遅れるとか、ゆがむとか、ほんのちょっと違うだけなのに、かなり怖い。キーファー・サザーランドが出演を希望したとはいうものの、監督が、3年遅れで限定公開された「ハイテンション」(Haute Tension・2003・仏)のアレクサンドラ・アジャという人だからなあ。その後ハリウッドで撮った作品もマイクロ劇場での公開だったし。

 キヌー・リーブスの上下マスク「地球が静止する日」は新予告。面白そう。オール・スター・キャストという感じで豪華。劇場前売り券を買うと、キヌー・リーブスの声が入ったボールペンがもらえるらしい。

 なんと、まだシリーズを続けるつもりらしい。「SAW5」は劇場が限られるものの、やる気充分。もういいかげん終わりで良いのじゃないかと思うが、パート・カラーの予告はちょっと面白そうな雰囲気だが……。劇場前売り券を買うともらえる携帯ストラップが気になる。

 ちょっとだけ上下マスクの「D-WARS」は予告を見る限り凄そう。大蛇だ、翼竜だ、ティラノザウルスだといったようなモンスターが続々登場して人類と戦うらしい。あとは全く不明。ただ上映劇場がマイナーなところが多く、それが気になる。

 上下マスクの「ハロウィン」は、怖いというより、かなり気持ち悪そうな感じ。劇場もちょっとなあ……。


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