The Nanny Diaries


2008年10月12日(日)「私がクマにキレた理由(わけ)」

THE NANNY DIARIES・2007・米・1時間46分(IMDbでは米版105分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/ビスタ・サイズ(with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.kuma-kire.com/
(音に注意。入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

大学を卒業したばかりのアニー・ブラドック(スカーレット・ヨハンソン)は、母(ドナ・マーフィ)の希望に従って大手の会社の入社試験を受けるが失敗。公園でブラブラしていたときにセグウェイに轢かれそうになった男の子グレイヤー(ニコラス・リース・アート)を助けたことから、子守としてミセスX(ローラ・リニー)に雇われる。進路が決まるまでと気軽に引き受けたものの、上流階級の家庭はめちゃくちゃで過酷な仕事だった。しかしグレイヤーがかわいそうになったアニーは辞めるに辞められなくなる。

73点

1つ前へ一覧へ次へ
 子守の人間観察日記風ドラマ。だから原題は「ナニー(子守)の日記」。邦題はラストの一瞬だけを差している。ナニー監視するためのナニー・カメラのことを指している。かわいいタイルにしたかったのか。

 観察日記なので、主人公のモノローグというかナレーションで構成されていて、公にするとまずいような人名などはミスターXとかミセスX、ハーバードのイケメンという名前になっている。ご丁寧に一部には自己紹介の時「ピーッ」が入っている。これを提出して、奨学金を得ると。

 タッチはコメディなんだけれど、そして実際よく笑えるし笑いどころもたくさんあるんだけれど、テーマというか描かれていることが一歩踏み込見過ぎてしまって、笑って済まされない領域に達してしまっている。リアルな生活が見えてくるところまで寄ってしまったため、笑えず、逆に重苦しい雰囲気に仕上がってしまった感じ。

 一言でいえば「アップタウン・ガールズ」(Uptown Girls・米・2003)に庶民の視点を持ち込んだ感じだろうか。ただアップ・タウンとダウン・タウンのギャップを笑いにしようとしているのだが、あまりにリアルで見ていて辛い。「アップタウン……」は働いたことのない上流階級のお嬢様ブリタニー・マーフィが、同じく上流階級の子供ダコタ・ファニングの面倒を見るという話だった。あちらの方が映画としては楽しく笑えるものだった。現実問題としてはこちらの方がリアルだが。どこを期待して本作を見るか。

 主演のスカーレット・ヨハンソンはいまノリにノッている感じ。最近はあちこちでまくりで、この前に見たのは「プレステージ」(The Prestige・2006・米)か。ナタリー・ポートマンと共演する「ブーリン家の姉妹」(The Other Boleyn Girl・2008・英/米)が今月末公開。ヨーロッパの匂いがするが、 アメリカ生まれ。ただ父がデンマーク系だったらしい。とにかくキレイ。本作ではコスプレもあって見所充分。どれもが魅力的だ。

 その友人役は歌姫アリシア・キーズ。「スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2006・米)でクールな美人女殺し屋を演じていたが、本作では主人公に比べて気ままに生きていく奔放な女性。主人公が面接を受けに行ってる日に朝帰り。でもキレイで許してしまう。

 ミスターXとミセスXのイースト・サイドのセレブ夫婦は、ローラ・リニーとポール・ジアマッティ。ローラ・リニーはうますぎて、笑うよりも同情してしまう。そして人に命令することになれた感じが抜群。独善的な嫌らしさが良く出ていた。最近。実話のホラー「エミリー・ローズ」(The Exorcism of Emily Rose・2005・米)の悪魔払いをした神父を追い詰めていく弁護士を演じていた。すごかったのは「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」(The Life of Davis Gale・2003・米)での死亡した女性役。鬼気迫るものがあった。一方、ポール・ジアマッティはちょっとコミカルな役のイメージがあって、「交渉人」(The Negotiator・1998・米)で人質になった気の弱い男役が印象的。ジム・キャリーの「トゥルーマン・ショー」(Truman Show・1998・米)では、ローラ・リニーと共演している。

 母親役はドナ・マーフィ。TV出身の人で、「スパイーマン2」(Spider-man 2・2004・米)ではオクタビアスの奥さんを演じていた。つい最近、911テロを描いた「ワールド・トレード・センター」(World Trade Center・2006・米)では、確か消防士の夫を待つ妻の役。

 イケメンのハーバード大生はクリス・エヴァンス。人気コミックの映画化「ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]」(Fantastic Four・2005・米/独)のヒューマン・トーチを演じた人。良かったのは巻き込まれサスペンスの「セルラー」(Cellular・2004・米)のお気楽でお人好しの青年役。日本劇場未公開の「スカーレット・ヨハンソンの百点満点大作戦」(The Perfect Score・2004・米)でスカーレット・ヨハンソンと共演済み。

 グレイヤー少年を演じたのはニコラス・リース・アート。TVから劇場映画は「シリアナ」(Syriana・2005・米)でのマット・デイモンの子供役でデビュー。2008年はTV出演が続くようだ。はたして名子役になれるか。

 原作はエマ・マクローリンとニコラ・クラウス「ティファニーで子育てを」。実際に2人がマンハッタンで8年間ナニーとして働いた実体験に基づくものだという。どうりでリアルなわけだ。

 脚本と監督はシャリ・スプリンガー・バーマンとロバート・プルチーニのコンビ。大学院時代からコンビを組み、ドキュメンタリーを経てポール・ジアマッティ主演のコメディ「アメリカン・スプレンダー」(American Splendor・2003・米)で長編劇場作品デビューしたらしい。本作もその延長上にあるような感じか。 最後に「お金があっても楽しくない」というところに落ち着くのは出来すぎの気もするが、お金はあっても困らないからなあ……。劇中の友人の言葉「楽に見える道こそ地雷だらけ」がなかなか深い。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由。50分前に着いたら中高年の男性が2人。45分前くらいに窓口のシャッターが開き、35分前くらいに開いた。この時点で20人くらいの列。ほぼ中高年で、男女比は4対6で女性が多い。若い人は女性に多かった。

 階段で並んでいると、20分前くらいに開場。小学生くらいの女の子を連れたお母さんもいたが、この映画を子供に見せてどうなのか、ちょっと疑問。子供向けの映画ではない。不規則な感じの階段につまずいて転倒する老人がいたりして、ちょっと騒然としたが幸いにも怪我はなかった模様。最終的には183席に7割くらいの入り。まあまあというところか。

 近くの席で、予告をやっているというのにメールを打っているバカ女がいるし、まだ入ってくるヤツがいるし。

 スクリーンはビスタで開いており、半暗になって始まった予告編は……「ブーリン家の姉妹」は単なる愛憎劇ではなく、史劇的なところが面白そうだが、劇場がなあ。

 まだ日本語の公式サイトはないようだが、上下マスクの「オーストラリア」は新予告に。人々の平和な暮らしを引き裂く日本軍の空襲があり、ちょっと肩身が狭い感じ。うむむ。

 ジョージ・クルーニー監督・主演の「かけひきは恋のはじまり」は、たぶん新予告。アメフト選手の話か。若い男とレニー・ゼルウィガーを取り合いするのだろうか。

 ドルビー・デジタルの機関車デモがあって本編へ。タイトルは柱に文字があるなど、ちょっと凝ったもの。ただクレジットにはタイル・デザインがなかったような。

 入場者プレゼントがあって、アクア・サファイアのボディ・ソープをもらった。


1つ前へ一覧へ次へ