Be Kind Rewind


2008年10月14日(火)「僕らのミライに逆回転」

BE KIND REWIND・2008・米・1時間41分(IMDbでは102分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(Arriflex)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.gyakukaiten.jp/
(音に注意。入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

ニュー・ジャージーの小さな町にある古いレンタル・ビデオ・ショップ。DVDはなく、あるのはVHSののテープだけ。あまりに古いビルで、市から取り壊して再開発をするか修繕をするかの決断を迫られていた。そんなとき店長のフレッチャー(ダニー・グローバー)は、同じビルに住む店員のマイク(モス・デフ)に店を任せ、イベントに出かけてしまう。そこへジャンク・ヤードで働くマイクの友人のジェリー(ジャック・ブラック)がやってくる。彼は前日、政府の陰謀で電磁波によってコントロールされていると、変電所を破壊するため侵入して感電、全身に強い磁気を帯びていたため、さわったテープの中身がすべて消えてしまう事態に。貸せるテープがなくなったため、急遽マイクとジェリーは店のビデオ・カメラを使って撮影し「ゴースト・バスターズ」などを自作する。一時しのぎのはずが、これが評判となって……。

73点

1つ前へ一覧へ次へ
 ファンタジック・コメディ。なかなか笑えて、感動させられる。ラストはほろりとして、あやうく涙が出そうに……。キャラクターたちも魅力的で、ジャック・ブラックはちょっとやり過ぎとしても、楽しめる内容。ただし、実際の町で、実際に起こりそうなことを取り上げているわりに、リアリティがない。ここが最大の問題点か。

 つまり、リアリティを求めると話は成立しなくなり、感動も起きないことになってしまう。ほとんど予算ゼロで、編集もしないで作られた手持ちカメラのチープないい加減ドラマがウケて、ニューヨークからまで借りに来るかと言うこと。ライバル店の店長がプロジェクターを貸してくれないだろ、とか。

 たぶん20分ほどの出来の悪い自主映画なんて、誰も見ない可能性が高い。そこが気にならなければ、とても面白い。気になるとたぶん楽しめない。現実問題、自主映画ではどんなにアイディアが盛りだくさんで楽しいものでも、レンタルで借りてもらえず、商売にはならない。これは自主製作のコンテストを10年以上続けて身にしみて感じたこと。人は、結局はスターとか、お金のかかったSFXだとか、爆発とかヌードなんかがないと見てくれない。悲しいけれどこれが現実。

 アイディアとしては面白いし、なんだか「ニュー・シネマ・パラダイス」(Nuovo Cinema Paradiso・1989・伊/仏)のような雰囲気もあるし。映画好きの人なら、きっと一度はこんなことを想像するだろう。文化の違いもあるので、ここまでみんなが映画作りを楽しんでしまうと言うのも、信じにくい点ではある。だから、やっぱりおとぎ話、ファンタジーだなと。

 だいたい、磁気とかでテープの内容が消えてしまうと言うのなら、ショップ内の配線がショートするとかして、思わぬ所に電磁石ができてしまって……ということでもいいはずなのに、変電所に忍び込んで感電し、それが元で体が磁気を帯びてしまうなんて設定は、どう考えても無理があるのに、それを採用しているのだから。

 ジャック・ブラックはちょっと悪のりの感じだが、全員が高はないのでセーフという感じ。クレジットはジャックが先なので、主演ということなのだろう。「ナチョ・リブレ 覆面の神様」(Nacho Libre・2006・米)もちょいとやり過ぎ気味。ギャグを封じて演じた「キング・コング」(King Kong・2005・ニュージーランドほか)はかなり良かった。ボク的には「スクール・オブ・ロック」(The School of Rock・2003・米)が一番良かった。

 共演のモス・デフは「16ブロック」(16 Blocks・2006・独/米)で時に良い味を出していた人。本作でも、おバカな状況の中、思わず応援したくなるような人の良さそうな感じを良く出している。

 店長はダニー・グローヴァー。「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)では悪いやつだったが、本作では悪い人ではないのだが、ちょっとキャラクターのわかりにくい役。なんと言っても「リーサル・ウェポン」(Lethal Weapon・1987・米)のマータフ役が良かった。良いお父さんのイメージか。

 常連客でダニー・グローヴァーの友人のちょっと頼りなさげな女性ファヴィチを演じたのはミア・ファロー。やっぱり伝説のホラー「ローズマリーの赤ちゃん」(Rosemary's Baby・1968・米)が強烈だった。最近では「アーサーとミニモイの不思議な国」(Arthur et les Minimoys・2006・仏)でおばあちゃん役をやっていた。

 映画製作を手伝うアルマを演じたのは、アメリカ生まれの24歳メロニー・ディアス。日本で劇場公開された作品はないようだ。

 ハリウッド側の弁護士として店をコピー違反で訴えるのは、シガニー・ウィーバー。よくこんなちょい役で出てくれたなあと関心。脚本を読んで、面白くなると判断したのか。

 監督と脚本はミシェル・ゴンドリー。ほぼ全編手持ちカメラによる撮影で車酔い状態になるいまひとつパッとしなかったジム・キャリーの「エターナル・サンシャイン」(Eternal Sunshine of the Spotless Mind・2005・米)を撮って、アメリカで高い評価を得た人。いい線行くのに、いとう感じは同じ。他にモス・デフと「ブロック・パーティー」(Block Party・2006・米)も撮っている。うまいのかどうかよくわからない。

 原題のBe Kind Rewindというのは、巻き戻してお返しくださいという意味らしい。確かに映画は未来を語っていない。というか、これで終わりという映画。安直な結末を用意してはいない。結果は変わらなかったが、やることはやったという感じ。邦題はやや疑問が残る。

 公開4日目の2回目、新宿の劇場は平日15時30分から18時までの間の上映はマチネーで一律1,200円。前売り料金より安い。30分前くらいに着いたら、また行列でなかなかカウンターにたどり着けず、残り席あと5席とか出ている。なんとかあと3席でチケットをゲット。しかし最前列の横。しかもシネスコなのでとても見にくかった。これで同じ料金。こんな見にくい席を設ける意味とは何だろう。割引料金で納得してみるなら良いが、同じ料金とは腹が立つ。

 最終的には81席ほぼ満席。平日昼間なので大学生くらいがほとんど。あとは営業の空き時間のスーツ姿のサラリーマンか。有閑マダム風少々。男女比はほぼ半々。

 半暗で始まった予告で気になったのは、上下マスクの「トロピック・サンダー」は、パロディーと度を超したギャグ満載という感じだが、戦闘シーンは結構本気の雰囲気。面白いかも。

 3D映画「センター・オブ・ジ・アース」は不思議な映像満載のアトラクション映画ということのようで、日本語吹替のみとか。劇場も限られる。立体にしたとき字幕がジャマになるのと、内容が子供向きと言うことなのだろう。ただ、ボクとしては見たいのだが……。


1つ前へ一覧へ次へ