Eagle Eye


2008年10月19日(日)「イーグル・アイ」

EAGLE EYE・2008・米/独・1時間58分

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35、IMDbではIMAXバージョン[1:1.44]もあり)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.eagleeyemovie.com/intl/jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

コピー・ショップの店員ジェリー(シァイア・ラブーフ)は、名門大学を中退し、気ままなひとり暮らしをしていた。ある日、頭脳明晰でエリート街道を突っ走るジェリーとは正反対の双子の兄が死んだという知らせが入る。葬式からの帰り道、ATMで預金を引き出すと残高が75万ドルになっている。さらに自分の部屋に見たこともない爆弾材料や銃器類がたくさん届く。そして正体不明の女から電話がかかってきて、今すぐ逃げないとFBIが来ると警告される。その直後、本当にFBIが突入してきて逮捕されてしまう。同じ頃、シングル・マザーのレイチェル(ミシェル・モナハン)は1人息子のサム(キャメロン・ボイス)を送り出すと、正体不明の女から電話がかかってきて、ある場所まで車を運転していって男を乗せないと、息子を殺すと脅される。

73点

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 疾走感満点のジェットコースター・ムービー。はらはら、どきどき、ラストまで一気に突っ走る。それは見事なほど。観客もまるで主人公のように、正体不明の声によって突き動かされる感じ。だから理由とかを考えているヒマはなく、次にどうすれば良いのかを考えるのが精一杯。その意味で、これはもの凄い映画。

 ただ、ちょっと立ち止まって(映画を見ている時はできないが)、良く考えてみると、どうにも腑に落ちないことは多い。なぜ犯人はこんなにも遠回りなことをしたのか。もっとストレートに、簡単にできる方法があったのではないかと。特にCM予告で使われた、冒頭の、主人公がFBIに捕まり、逃げ出すというシークエンスなど犯人にとって必要だったのかどうか。逃げなければならない状況に追い込んで、無理に言うことを聞かせるためということなんだろうけれど、終わって考えてみると、どうにも観客を映画に引き込むための仕掛けとしか感じられなかった。全体にそういう設定が多く、そこが弱い。ただ、見ているときは与えられる情報が少ないこともあって、そんなことを考えている余裕はないが。でも、送電線の下って携帯とかの電波状態が悪いんじゃないかなあ、というのは見ていて気になった。

 そして、犯人の正体は、特に意外でもないということ。もちろん納得は出来る。すべてがつながって1本の太い線になる。スッキリ爽快。ただ「2001年宇宙の旅」(2001: A Space Odyssey・1968・英/米)の昔からよく描かれ、「ターミネーター」(The Terminator・1984・米)でも描かれていたこと。これに「エネミー・オブ・アメリカ」(Enemy of the State・1998・米)の監視映像ネットワークとか、「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米/英)のハイテク・テロ、TVの「24 Twenty Four」のCTUの情報収集能力などを合わせると本作の感じになるかなと。

 主演のシャイア・ラブーフは、「トランスフォーマー」(Transformers・2007・米)や「ディスタービア」(Disturbia・2007・米)よりはいい。それほど嫌なキャラではない。しかし本作でも、嫌なキャラではないがそれほど良いキャラでもない。もっとまともなキャラを演じた方が良いのではないだろうか。送りつけられた銃はデザート・イーグルに.50口径のバーレット・ライフル。

 シァイア・ラブーフにもまして魅力のないキャラはミシェル・モナハン演じるレイチェル。起こってばかりキャラで、かわいさがちっともない。これでは観客は助けたいと思わない。夫と別れたのも当然という気がする。だからラストで2人が仲良くなっても、なんで、という感じしかしない。ご都合主義というか……。2人がもっと魅力的で、観客もホレてしまうような感じであれば、応援したくなるし2人が結ばれることは嬉しいのだが。がっかりだったシリーズ3作目の「ボーン・スプレマシー」(The Bourne Supremacy・2004・米/独)や、「Mr.&Mrs.スミス」(Mr. and Mrs. Smith・2005・)、「M:i:III」(Mission: Impossible III・2006・独/米)でトム・クルーズの妻を演じていた。もっと良い役がつかないと、美人というだけでは危険だと思う。余計なお世話だけど。

 空軍の捜査官はロザリオ・ドーソン。空軍だFBIだという垣根を越えでも真実を追究しようとする姿が良かった。結局は軍の枠を超えられないのだが……この人はミュージカル「RENTレント」(Rent・2005・米)でダンサーのミミを演じていた人。「シン・シティ」(Sin City・2005・米)でも強烈な存在感を出していた。最近では退屈なB級アクションの「デス・プルーフinグラインドハウス」(Death Proof・2007・米)でグループのリーダー格のゴッツイねえちゃんを演じていた。

 FBIのテロ・タスクフォースのかたぶつ捜査官を演じたのは、いろいろと私生活は問題ありという感じのビリー・ボブ・ソーントン。ボク的にはブルース・ウィリスと共演した「バンディッツ」(Bandits・2001・米)が良かったけれど、ちょっと前になるがサム・ライミ監督の「シンプル・プラン」(A Simple Plan・1998・米)も強烈だった。最近では見たかったが小劇場だったのでパスした「庭から上ったロケット雲」(The Astronaut Famer・2007・米)に出ていた。使っていたのはFBIのベテランだからP226か。やっぱり定石通り、途中で死んでしまう役はお得。記憶に残るしカッコいい。前半が憎たらしいだけに、よけいに効いてくる。

 国防長官を演じていたのは、マイケル・チクリス。いまひとのSFアクション「ファンタスティック・フォー」(Fantastic Four・2005・米)で、岩石男を演じていた人。まったく雰囲気が違う。本作は重みというか貫禄があって、いかにもそれらしい。さすが役者。

 脚本と原案を手がけたのは、ダン・マクダーモット。女性FBIエージェントの活躍を描いたTV番組「Angela's Eyes」(2006〜)のプロデュースと脚本を担当しているらしい。他に脚本を担当しているのは、TV出身のジョン・グレンと、ジョン・グレンの幼なじみのトラヴィス・アダム・ライト、ノルウェイ映画をハリウッドでリメイクした「インソムニア」(Insomnia・2002・米)の脚本を手がけた女性脚本家のヒラリー・サイツという顔ぶれ。うむむ。

 監督はD.J.カルーソ。やっぱりTV出身の人で、その中にはキャメロンの「ダーク・エンジェル」もある。アクション系が得意なようで、劇場作品は日本公開されたものだとアンジェリーナ・ジョリーがFBI捜査官を演じた「テイキング・ライブス」(Taking Lives・2004・米ほか)。最新作はガッカリの「裏窓」(Rear Window・1954・米)リメイクの「ディスタービア」(Distuebia・2007・米)だったからなあ。この作品でシャイア・ラブーフと組んでいるわけだが、やっぱりキャラが良くない。ひょっとしてアクションはうまいけど、キャラを描くのが苦手とか……。それと、せっかくシネスコを使っているのに、アップにしすぎとカットが短すぎて何が写っているかわからないところが多々あった。うーむ。

 ほかに登場する銃器は、ベレッタM92やレミントンのM870らしいショットガン、AK-47、AKS-74Uなど。武器係はロバート・セロッティとかいう人。メモしきれなかった。

兵器はRPG、無人偵察機のMQ-9リーパー、F-16戦闘機、ブラック・ホーク・ヘリなど。

 大統領のGOサインが出て、武器の準備ができると兵士が「ウェポンズ・ホット」といっていたが、それがなかなかカッコいい。確かにホットだよなあと。ちなみにイーグル・アイという兵器は実在し、ヘリコプターのベル社が作っている垂直離着陸が可能なプロペラ機だ。

 公開2日目の初回、前日に座席確保しておいて10分くらい前に着いたら、銀座の劇場はすでに開場済み。案内を上映。最終的に2F席は6割ほどの入り。男女比は6対4で男性の方が多かった。ほぼ中高年。

 チャイムが鳴って、半暗になって始まった予告編で気になったのは……上下マスクの「ベンジャミン・バトン」は、ちょっと飽きてきた感はあるが、トレーサーを使った銃撃シーンが迫力があって恐ろしく印象に残る。2009年2月公開というから、予告編はこれからどうなっていくのだろう。

 またTVドラマの映画拡大版「特命係長 只野仁」は、ようやく内容がわかるものに。やっぱりTVっぽい。チェ・ホンマンが出てるとは驚いた。

 SWAT、CIA、G36、爆弾テロ、ガゼール、特殊部隊、RPG、リドリー・スコット、レオナルド・ディカプリオ……上下マスクの「ワールド・オブ・ライズ」はやっぱりすごそう。期待してしまう。

 「ブラインドネス」もだんだん内容がわかってきた。やっぱりかなり重苦しいようだ。「ナイロビの蜂」(The Constant Gardener・2005・英)の人だからなあ。


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