The Eye


2008年11月1日(土)「アイズ」

THE EYE・2008・米・1時間37分

日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(with Panavision、マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.eyes-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

ソロ・バイオリニストのシドニー(ジェシカ・アルバ)は、子供のころ姉のヘレン(パーカー・ポージー)と遊んでいて事故で失った視力をとりもどすため、姉の援助で角膜移植手術を受ける。しかし、手術直後から奇妙なものが見えるようになる。退院してからも幻影は消えず、専門医のポール(アレサンドロ・ニヴォラ)の診断を受けるが、ポールは長い間失明していたから、頭が目を信じられないのだと取り合わない。やがてシドニーはドナーの記憶が影響しているのではないかと思い至り、ポールにドナーを教えてくれと頼むのだが……。

72点

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 オリジナル版の「the EYE【アイ】」(Gin gwai・2002・香/シンガポール)のリメイク。ハリウッドらしく、スターと高級なデジタル・テクノロジー、音楽・音響を駆使して、わかりやすく作り直している。しかし基本はオリジナル版どおりにされており、なかなか怖さはある。

 ただ、やっぱりハリウッドらしく音で脅かす傾向が強い。そして、わかりやすさを最優先にしたため、せっかくの細部の味をバッサリと切り落としてしまっている。細部にこそ本当の怖さや、感動への積み重ねがあるのに、それがないため、確かにわかりやすくなったが、大味で、伏線もなし。怖さ(正確にはビックリか)はあるものの、オリジナルにあった後半の謎解きの面白さが全くなく、淡泊に終わる。しかもなんだか納得できない感じで。

 プロデューサーに問題があるのかもしれないが、完成した脚本に問題ありだろう。オリジナルの足元にも及ばないというか……。脚本を書いたのはセバスチャン・グティエレス。ハル・ベリーの怖かったホラー「ゴシカ」(Gothika・2003・米)の脚本を書いた人。その後の作品はマイクロ・シアターでの公開となったが、「スネーク・フライト」(Snakes on a Plane・2006・米)は荒唐無稽ながらなかなか面白かった。その人の脚本で何でこうなってしまうのか。

 監督はダヴィド・モローとザヴィエ・パリュのフランス出身の2人。どういう役割分担なのかわからないが、意見がまとまったのだろうか。助監督や第2版監督などをやっていて、2人で脚本と監督を担当した「THEMゼム」(Ils・2006・仏/ルーマニア)が評価されて大抜擢、ハリウッド・デビューとなったらしい。日本では今年1月、単館のしかもレイト・ショー公開。ボクは公開されたことも知らなかった。IMDbで5.3点の評価では次作は期待できないかも。

 主演のジェシカ・アルバはがんばっているようだが、作品に恵まれない。特に日本ではほとんど未公開か小劇場での限定公開という扱い。「シン・シティ」(Sin City・2005・米)は全国公開だったが小さな役で、「ファンタスティック・フォー」(Fantastic Four・2005・米)はパッとしなかったし……。それで、結婚してしまって、どうなんだろう。

 まったく頼りない専門医のポールを演じたのは、アレサンドロ・ニヴォラ。確か「ジュラシック・パークIII」(Jurassic Park III・2001・米)で、恐竜の卵をくすねる助手を演じていたのではなかったか。あれ以降、あまり見た記憶がない。本作の役はあまりに酷くて、イメージ・ダウンになったのではないだろうか。オリジナルの「the EYE【アイ】」では、青年医師は主人公に好意を寄せ、親身になっていろいろやってくれるナイス・ガイだったのに。

 角膜の提供者であるメキシコの美しい娘、アナを演じていたのはフェルナンダ・ロメロという人。実際にメキシコ生まれで、25歳。日本公開作はこれが初めてのよう。公開が控えている作品がTVも入れて7本もあって、今後活躍しそうな感じ。ぜひがんばってほしい。

 その母ローザを演じたのは、アメリカ生まれのレイチェル・ティコティン。フィリップ・K・ディック原作のアクションSF「トータル・リコール」(Total Recall・1990・米)でレジスタンスの女兵士を演じていた人。ボクのイメージでは制服警官役が多いような気がするが、ダコタ・ファニングとデンゼル・ワシントンのハード・アクション「マイ・ボディガード」(Man on Fire・2004・米)にも出ていたようだが、記憶が曖昧だ。とにかくタフな女性の役が多い。

 サラウンド感たっぷりの音響はスカイウォーカー・サウンド。さすがクォリティが違う。日本の作品でもここに依頼する作品が増えてきた。

 冒頭の夜間のシーン、主人公がいる高層ビルからカメラが遠ざかっていくと、灯りの点いた部屋がいくつかあって、そりがドットの文字になってタイトルになるという凝った演出。ただ、誰が担当したのかは不明。クレジットのチェックができなかった。

 渋谷の劇場は全席指定なので、前日の夜8時半頃予約に行ったら7時で終了だという。しかたなく当日早めに行ったら、今度は開いていない。聞いたら20分前の開場と同時に座席指定を受け付けるという。これって、ちょっとおかしいんじゃないの。全席指定で座席予約しなければならないという手間を客にかけるのだったら、劇場側も受付時間の幅を広げるとかして手間をかけなければ行けないんじゃないの。PC1台立ち上げて、ちょっと入力するだけなんだから、それくらいの対応するのが当たり前では。できないんだったら全席指定なんていうことはやめて、従来どおりにやればいいと思うけど。

 そんなわけで、たぶん混まないだろうと勝手に予測して40分前に着いたら、窓口は開いていなかった。どうも使っていない感じ。ドアの前で待ち、20分前になって開場。座席指定券だけでも先に出してくれれば、ほかに買い物に行ったりできるのに、全席自由と同じで並んで待つしかなかった。

 座席予約はもぎりのカウンターにあったPCでやっていた。なんだそれ。この時点で6〜7人。若い男性が2人ほど、若い女性も2人ほどで、中高年男性が2〜3人。

 最終的には女性が2〜3人くらい増え、300席に25人くらいの入り。半数以上は中高年男性。それにしても、これは少ない。ジェシカ・アルバって人気がないんだろうか。

 スクリーンはシネスコで開いていて、ロビーで案内のアナウンスが流れた後、ビスタになって予告の始まり。気になったのは、予告の前にスクリーンが暗いのに半暗で予告を上映するため見にくいのと、場内灯の影がスクリーンに映って、さらに見にくくなっていること。灯りを消して欲しいなあ。

 上下マスクの香港アクション映画「エグザイル/絆」は、すでにハリウッドが映画化権を手に入れたらしい。とても面白そうだが、劇場が……。

 兄弟で兄が警察官、弟がギャング。それで父親が殺されるという過酷なドラマらしい「アンダーカヴァー」は、マーク・ウォールバーグと先日引退を発表したというホアキン・フェニックス。すごそう。サブマシンガンがS&WのM76だったような……。

 原題はTHE EYEで単数形なのに、なぜ日本語タイトルはアイズで複数形なのか。というか普通は複数形のはずなのに、原題はなぜ単数形なのか。そこに意味があるような気がする。日本語の場合はアイでは愛のように聞こえてしまうからだろうか。


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