Deception


2008年11月9日(日)「彼が二度愛したS」

DECEPTION・2008・米・1時間48分(IMDbでは107分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision、Super 35、HDCAM)/ドルビー・デジタル

(米R指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://2s-movie.jp/
(ポップアップウィンドウを許可しないと入れない。入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

会計士のジョナサン・マコーリー(ユアン・マクレガー)は、ただ家と会社を往復するだけの退屈な毎日を送っていた。ある日、ある会社の会議室で残業をしていると、弁護士のワイアット・ボーズ(ヒュー・ジャックマン)と名乗る男が現れ、「トイレで会ったね」と話しかけてくる。それがきっかけで、次第に仲良くなった2人は、一緒にストリップ・バーに飲みに行ったり、テニスをするようになる。そして、同じ型の携帯電話を使っていたことから、取り違えてしまう。返そうと電話するが、彼はロンドンに出張中で、しばらくお互いに使い続けることになる。ある夜、彼の電話に女性から「今夜、ひま?」という電話が掛かり、ジョナサンは事情を説明しようとするが、ホテルの名前だけ告げて電話は切れてしまう。事情を説明するためホテルに行ったジョナサンの前に美しい女性が現れ、それがセレブの秘密セックス・クラブのコールであったことを知る。

75点

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 意外性はないが、上質なミステリー。ほぼ観客の思ったとおりに進行し、望むところへ着地する。意外性を求めると評価は低くなると思う。IMDbでは5.8という低評価。しかし、強引さが無く、誰もが納得するような流れで、予定調和へと持って行くのは、実はとても難しいこと。意外などんでん返しのある映画はどこかで観客はそんなの無理だよとか、ウソだと感じてしまうもの。それを感じさせない。そして何気ない、小さなエピソードがうまい。ちょっとヒッチコックのサスペンスのようでもある。

 しかも、観客に隠し事をほとんどしておらず、ちゃんと判断材料はすべて示されているのではないかと思う。だから最初から気を入れて細部までちゃんと見ていれば、事態の成り行きもわかるし、納得できる。「私はおまえの父だ」式の隠し事はない。正々堂々勝負している。というか、事件の真相の意外性を狙っていないのだと思う。なにしろ原題はズバリ「だまし(詐欺)」だ。最初から宣言してしまっている。だからあまりに意外で、最初から見直してみないと納得できない、なんてことはない。

 もし、この緻密さ完成度で、予想もできない展開とどんでん返しが用意されていたら、今年最高の映画になっていたかも。それこそ歴史に残るような。

 1つにはそれぞれのキャラクター作りうまさと、キャスティングの妙があると思う。主演のユアン・マクレガーは、いかにも真面目そうで気も弱そうで、でも優しそうな感じで、観客が信用し応援したくなるタイプ。また、謎の多いヒュー・ジャックマンは、いかにもスマートでカッコよく、さわやか。女性なら誰もがいちころという雰囲気。さらに、主役が地下鉄の駅で一目惚れする金髪の美女ミシェル・ウィリアムズは、ものすごくスレンダーでスタイルが良く、ゴージャスな感じなのに、どこか影があって謎めいたところもあり、時に見せる表情があどけなく少女のようだったりするという、男性観客はみな虜になりそうなタイプ。これだけでも映画は成功したようなものだろう。

 ユアン・マクレガーは「トレイン・スポッティング」(Trainspotting・1996・英)で広く知られるようになったイギリス生まれの37歳。その後「悪魔のくちづけ」(The Serpent's Kiss・1997・英ほか)、「氷の接吻」(Eye of the Beholder・1999・米)など着実にキャリアを重ね、バス・ラーマン監督のミュージカル「ムーラン・ルージュ」(Moulin Rouge!・2001・米)で歌もいけることを証明、「スター・ウォーズ」はまあいいとして、「ステイ」(Stay・2005・米)でもいい味を出していた。全体としてサスペンス系での活躍が目立っている感じ。本作もサスペンスだ。タイトルはH系のようだが。

 さわやかな好青年タイプのヒュー・ジャックマンは、「X-メン」(X-Men・2000・米)のウルヴァリン役でブレイクしたオーストラリア生まれの40歳。「ニューヨークの恋人」(Kate & Leopold・2001・米)といったSFラブ・ストーリー系と、「ソードフィッシュ」(Swordfish・2001・米)のサスペンス・アクション系と交互に活躍している感じ。次作はバス・ラーマンの「オーストラリア」。使っていた銃はSIG系のオートらしいものと、サイレンサーを付けたPPKかPP。

 どこかあどけない可愛さと、娼婦的な色っぽさと、人を寄せ付けないような美しさを併せ持った美女は、アメリカ生まれの28歳のミシェル・ウィリアムズ。ちょっとエロなSFホラーの「スピーシーズ/種の起源」(Species・1995・米)でエイリアンの少女時代を演じていた人。ジョシュ・ハートネットのスクリーン・デビュー作「ハロウィンH20」(Halloween H20: 20 Years Later・1998・米)にも出ていた。話題作ではアン・リー監督の男同士の愛を描いた「ブロークバック・マウンテン」(Brokeback Mountain・2005・米)にも出ていたらしい。作品ごとに印象が違うが、本作が一番美人に見えた。シルバーのPPKも似合っていたし。

 秘密クラブの会員で最初に登場する美女は、ナスターシャ・ヘンストリッジ。「スピーシーズ/種の起源」で大人のエイリアンを演じていた人だ。ミシェル・ウィリアムズとはそれで共演済み。まだまだナイス・バディで、大胆披露。「隣のヒットマン」(The Hole Nine Yards・2000・米)の殺し屋ブルース・ウィリスの妻や、スティーヴン・ドーフのアクション快作「スティール」(Riders・2002・米)の女刑事など演じていたが、最近はいまひとつの感じだった。

 秘密クラブのセレブ・マダムは、シャーロット・ランプリング。「地獄に堕ちた勇者ども」(La Caduta Degli Dei・1969・伊ほか)の半裸にサスペンダーのダンス・シーンは強烈だった。あのエロスがまだ怪しく残っている。イギリス生まれで、何と62歳とはビックリ。日本公開作品は少ないが、ずっと映画に出続けている。久々のいい作品だったのでは。

 事件の鍵を握る情報をくれる秘密クラブの会員はマギーQ。ハワイ出身だが、香港映画でスクリーン・デビュー、「レディ・ウェポン」(赤裸特工・2002・香)で大きくクローズ・アップされ、「M:i:III」(Mission: Impossible III・2006・米)で大きな役を得てハリウッド女優に。「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米)ではしたたかな悪役を好演。アクションができるエキゾチック美女として定着したようだが、本作ではアクションなし。スケスケの怪しげな下着でビックリさせてくれる。

 緻密な脚本を書き上げたのはマーク・ボンバックという人。ロバート・デ・ニーロのホラー、「アダム―神の使い 悪魔の子―」(Godsend・2004・米/加)や、「ダイ・ハード4.0」を手がけている人で、もともと緻密な脚本が得意なようだ。この人の脚本なら面白いと考えても良いかもしれない。

 監督はマーセル・ランゲネッガー。スイス生まれで、CM出身の人。本作が劇場長編映画のデビューになるらしい。すでに新作も製作に入ったようで、期待できそう。

 タイトルの文字は端から影が落ちて消えていく感じがミステリアスでいい。エンド・クレジットの文字の見せ方も良かった。いくつかの文字が残って、それが次の人の文字の一部になるという演出。IMDbによるとメイン・タイトル・デザインはクレジットなしで、サイモン・クロウズという人で、協力がアグネット・オルンショルトという人。

 スペイン・ロケの武器係はエンジェル・アポンテという人。地元ではTVブロデューサーをやっているらしい。サイレンサーなしのシルバーPPKはジャムったのか、空になったのか1発撃ってオープン・ストップしていたようだが。

 公開2日目の初回、新宿の劇場で座席を前日に確保しておいて、10分前くらいに着いたら、ちょうど開場したところ。スクリーンはビスタで開いていて、案内を上映中。スクリーンが明るいので、場内が明るくても割と見やすい。5分前で20人くらい。女性は5人ほど。若い人は2〜3人で、ほぼ中高年。

 場内が半暗になって予告が始まっても、入ってくる人が多い。ケータイを使っているヤツも多い。インターネットやケータイを使ったオンライン・チケットを広告していたが、前売り券はなくす方向なのだろうか。ボクはあの絵付きの券が無くなるのは寂しいが、前売り料金が残るならインターネットでも何でも良い。

 最終的に228席に30人くらいの入りは、いくら初回とはいえ、ちょっと少ない。予告がH系を強調したものだったのがいけなかったのでは。上質なミステリーなのに。

 気になった予告は……上下マスクの「劔岳 点の記」は内容がわかる新バージョンに。新田次郎原作の測量に挑んだ男たちの話で、実際に山で撮影され、アングルも新鮮で、迫力の映像。ただナレーションがNHKっぽいのが気になった。

 バズ・ラーマン監督の上下マスク「オーストラリア」は、新しくなっていないが、やっぱり日本軍が攻撃してくるシーンと、確かに「ジャパン」と言っているのに字幕が「敵機」というのは何か意図的なものを感じてしまう。

 リドリー・スコット監督の上下マスク「ワールド・オブ・ライズ」も、前の予告のままだが、おもしろそう。CIAとテロの戦い描いているらしい。スティーブン・キングの「1408号室」も前のままの予告ながら、気になる。

 暗くなって、スクリーンが左右に広がって本編の上映。


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