Diary of the Dead


2008年11月15日(土)「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」

DIARY OF THE DEAD・2007・米・1時間35分

日本語字幕:丸ゴシック体下、川又勝利/ビスタ・サイズ(HDCAM、Panasonic)/ドルビー・デジタル (IMDbではdtsも)

(米R指定、日R-15指定)

公式サイト
http://www.diaryofthedead.jp/
(音に注意。入ると画面極大。全国の劇場案内もあり)

ピッツバーグ大学の映画学科の学生グループは、ジェイソン(ジョシュ・クローズ)が監督するミイラ映画「死の終焉」を作るため、指導教授のアンドリュー(スコット・ウェントワース)とともに山の奥で撮影していた。そんな時ラジオで死人が生き返る事件が各地で起きていることを知り、撮影を中止し、メアリー(タチアナ・マスラニー)のキャンピング・カーで山を下り、それぞれの家族の元に帰ることにする。ところが、帰る途中の町はすでにほとんどゾンビ化しており、彼らを襲ってくるのだった。ジェイソンは事件の真実をユー・チューブで世界に知らせるため、そして後世に残すため、すべてのできごとをカメラで撮影することを決める。

70点

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 普通のゾンビ映画を、一部で流行のPOV(主観)で記録映画風に撮っただけの映画。新しさを装っているものの、新しさは全くない。それどころか起承転結さえもない。「承」のみという感じ。そして、シリアスに作ろうとしているのか、コミカルにしようとしているのかも中途半端でわかりにくい。シリアスにジョークを入れるなら良いのだが、ジョークが半端で投じよう人物の悪ふざけではなく、その後ろにいる脚本家や監督の下手なジョークに見え、味付けなのか全体の演出プランなのかわからないのだ。

 新しさはない代わり、お約束のたくさんの残酷シーンと、ちょっぴりのHなシーンはある。ほとんどの予算は残酷シーンのために費やされており、ドキュメンタリー・タッチを生かすためでもあるのだろうが、キャストはほとんど知られていないような人ばかり。もともと低予算なんだろうが……。頭が飛んだり、銃撃で頭にでかい穴があいたり、腕をもぎ取って食ったり、頭を一刀両断にしたり、頭に鉄棒を突き刺したり……まあ、デジタル技術の進歩もあって、考え得るさまざまな頭部への攻撃が具体的に映像化されている。それは凄い。

 おもわず苦笑してしまうような、もしくはあざ笑ってしまうようなくだらないジョークがあるくせに、カメラで撮影し、レンズを通すと傍観者になるだとか、無理に良いことを言おうとしている感じがして、そこも中途半端さが増す原因になっている。そして、「死人は早く動かない」と「ドーン・オブ・ザ・デッド」(Dawn of the Dead・2003・米)に対する抗議のように登場人物の学生監督に演出のセリフとして言わせ、ダメ押しのように本物のゾンビが出てくると言うというのも、メクソハナクソ(失礼)というか、生き返る原理のようなものが明らかにされていないのに、そんなところだけこだわられてもなあという感じ。

 監督・脚本は、本家「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」(Night of the Living Dead ・1968・米)の監督・原案のジョージ・A・ロメロ。ピッツバーグのカーネギー・メロン大学の出身で、本作は監督自身の経験に基づくところがあるのかもしれない。「ゾンビ」(Zombie: Dawn of the Dead・1978・米/伊)がヒットし、生き返った死体はゾンビというのが世界的に知られるようになった。その後スティーヴン・キング原作のなかなか異次元的な雰囲気が良かった「クリープショー」(Creepshow・1982・米)、邦題がびっくりのSFホラー「死霊のえじき」(Day of the Dead・1985・米)、完全にゾンビから離れてなかなか怖かった「モンキー・シャイン」(Monkey Shines・1988・米)、ゾンビものを作らせてもらえなくなって撮ったという屈折した作品、ボク的には一番好きな「URAMI〜怨み〜」(Bruiser・2000・米)、なかなか面白かった冒険活劇的ゾンビ復活第一弾「ランド・オブ・ザ・デッド」(Land of the Dead・2005・加)を経て、本作にいたる。久々に撮った「ランド……」は良かったが、それ以外は「モンキー……」と「URAMI……」が良いと思うんだけど。

 どうにもキャラクターが良くなくて損をしている主人公デブラは、なんだか女子大生に見えないミシェル・モーガン。観客が応援したいという気にならない。文句ばっかり言うだけのキャラはダメだなあと。このあともTVドラマに出ているようだか、本作がキャリアのプラスになったとは思えない。

 お約束の胸ポロ女優はエイミー・ラロンド。やっぱりTVの人らしい。

 映画学科の学生のカメラとは言え、手持ちのドキュメンタリーという設定なのでカメラは揺れまくるが、ギリギリのところで不快にならずにすんでいる。この微妙な感じは「クローバーフィールド/HAKAISHA」(Cloverfield・2008・米)も「[●REC]」([REC]・2007・西)も参考にすべきだったと思う。撮影監督はアダム・スウィカ。「URAMI……」で撮影監督を務め、特殊メイクが凄かったスプラッターの「クライモリ」(Wrong Turn・2003・米/独)で第2班撮影監督を務めたらしい。どうやらホラー系が多いようだ。

 頭が飛び、真っ二つになり、落ちた手まで食べてしまう特殊メイクはプロデューサーがグレッグ・ニコテロという人。ジョージ・A・ロメロの「クリープショー」や「死霊のえじき」「モンキー……」などを手がけ、最近は役者としての活躍の方が多いトム・サヴィーニのアシスタントだったらしい。実際に手がけたのはカイル・グレンクロスとクリス・ブリッジスのガスライト・スタジオ。アクション・ホラーの「ブレイド2」(Blade II・2002・米)のスーツや、なかなか怖かった「サイレントヒル」(Silent Hill・2006・加/仏)る特殊メイク、「ソウ3」(Saw III・2006・米)、斬新なビジュアルの「300」(300・2006・米)スペシャル・エフェクトも手がけている。

 銃は、自殺する女性が使っていたのは、たぶんシルバーのPPK/S。ハンマーが倒れているのに撃っていて、編集でつないでいて撃っていなかった感じ。写っていたシーンではジャムしていた。しかもマガジン・チェンジもせず十数発撃っていたし……。その後、病院でガバメントのような銃が出てくるが、撃つ時になるとなぜかワルサーP99のような銃に変わっていたのも調子が悪かったせいか。

 倉庫にいた黒人グループはM16A2の「セミオート版」とわざわざ説明していたが、なぜ。彼らからガン・ベルトやらショットガン、アーチェリーをわけてもらう。これでラストに向けて準備は整う。ただラストはベレッタM92が結構、活躍していた。

 エンディングのクレジットには、スティーヴン・キング、ウェス・クレイヴン、クエンティン・タランティーノ、ギレルモ・デル・トロといった名前が。IMDbによるとニュースを読んでいたらしい。つまり声の出演。ここに有名人を使ってきたか。でも、わからないって。

 公開初日の初回、池袋の劇場は全席指定なので前日に座席を予約しておいて、25分前くらいに着いたら、ちょうど開場したところ。スクリーンが低く、床がフラットなのでギリギリ前席がジャマになる。座高の高いヤツが前にいたらヤバイ。下に出る字幕が読みにくい。なのに全席指定とは。

 座席もカップ・ホルダー付きだが幅が狭く、冬はコートやジャケットを持っているから余計に狭く感じる。そして、ドリンクなどの持ち込み禁止。場所柄なのかケータイを使っているヤツが多い。

 10分前くらいから、明るいまま案内を上映。関係者らしい4〜5人が後ろに立ってしゃべっていて、気になった。

 最終的に176席のほぼ全席が埋まった。これはビックリ。女性は10〜12人くらいで、メインは若い男性。中高年は2〜3割か。

 チャイムが鳴って半暗になって始まった予告は、あまりよく見えない。気になったのは、上下マスクの「SAW5」は残酷シーンが始まる直前までの予告。はたして5作目で描くことなどあるのか。

 リドリー・スコットの上下マスク「ワールド・オブ・ライズ」は新予告。だいぶ内容がわかるものになってきた。ラッセル・クローは安全なところから指示をする男で、レオナルド・ディカプリオは実際に現場で命を賭ける男ということらしい。面白そう。

 ベニチオ・デル・トロ主演のチェ・ゲバラを描いた2部作「チェ28歳の革命」と「チェ39歳別れの手紙」も非常に面白そう。ベニチオ・デル・トロ渾身の演技という印象。

 パニック映画「感染列島」も新予告。子供がM16を構えているシーンがあったが、どうしてこんなことになるんだろう。ちょっと気になった。


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