日本語字幕:手書き風書体下、堤 洋子/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル
(米R指定、日PG-12指定)
ロンドンで働く放射線技師のジーナ(レナ・ヘディ)は家族揃って父(リチャード・ジェンキンス)の誕生パーティを祝っていた。すると突然、鏡が割れて砕け散る。「鏡が割れると7年間不幸が続く」と、弟のダニエル(アシエル・ニューマン)の恋人ケイト(ミシェル・ダンカン)が言う。翌日、ジーナの家の鏡も割れ、仕事からの帰路、自分ソックリの女を見かけ追いかけるが対向車と衝突、入院してしまう。事故前後の記憶を失ってしまったジーナは、恋人のステファン(メルヴィル・プポー)が別人になってしまったような感覚を覚える。カウンセラーのザックマン医師(ウルリク・トムセン)に相談し、事故車を確認に行くと、大破した車内から手がかりになりそうな1枚の写真を発見する。
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ほぼ思わせぶりで終わるミステリー。「起承転結」の「起」と「承」で、予兆があって、事件が起きて、後はなし。やりっ放し。意味も不明。ドッペルゲンガーか。TVドラマの「スーパーナチュラル」(2005〜・米)で呪われた鏡の話があったが、ドラマツルギーもSFXも怖さも、はるかにTVの方が優れていた。しかもTVはCMも含んで55分ほどなわけで、いかにうまくまとめられていたのかがわかる。 本作は冗長。ただ美女が出てきて、シャワーや入浴シーンがあるというだけに過ぎない。始めから終わりまで1本調子で、何か起きそうな、どこかで聴いたような音楽(効果音)と、しかめっ面のみ。冒頭のただの誕生パーティまでこの演出。しかも嫌らしいのは、どこか高尚ぶったところがあることだ。それが鼻持ちならない。わかったことは、監督は女優さんを脱がせる名人なのではないか、ということ。たしか前作でも美人女優を脱がせていた。 ただ、絵作りは悪くなく、女優も美女が多いというのはいい。雰囲気だけはたっぷりある。というか雰囲気のみだが……。オープニングの文字の見せ方も、文字がダブって、スライドして行き消えるという意味深なもので期待させる。そしてキャスト名は白で、タイトルだけが真っ赤という演出。誰が担当したのかわからない。もちろん期待だけで終わるわけだが。低予算過ぎたのだろうか。 何も起きないまま30分ほど過ぎて、やっと何かが起き始めて、やけにフリが長いなあと思っていると、それで終わってしまう。舞台がロンドンで、イギリスらしいどんよりとした曇天がいっそう憂鬱な気分にさせる。しかし配給はフランス映画のゴーモント。 うたい文句がシンメトリー・サスペンスとなっているが、何が左右対称なのかよくわからない。絵も「去年マリエンバードで」(L' Annee Derniere a Marienbad・1960・仏/伊)のように対象を意識した絵作りじゃないし、単に鏡の世界が関わっているというだけのこと。 主演のジーナはレナ・ヘディ。驚異的ビジュアルで見せた「300」(300・2006・米)で気高き王妃ゴルゴを演じていた美女。「ブラザーズ・グリム」(The Brothers Grimm・2005・米/チェコ)では気の強い猟師の娘を演じ、「地獄の変異」(The Cave・2005・米/独)では教授の助手を演じていたが、いずれもキレイだった。本作は、そのせっかくの美しさが生きていない。なぜなんだろう。演技派で押すということか。1月に発売されるSF・TVドラマの「ターミネーター:サラ・コナークロニクルズ」でも、戦う美しき女戦士としてサラー・コナーを演じている。本作は別人のよう。 有名人が少ない出演者の中で、もう1人見たことがある人は、父親を演じているリチャード・ジェンキンス。FBIが他国の事件で捜査に乗り出すという驚きのアクション「キングダム/見えざる敵」(The Kingdom・2007・米)でFBI長官を演じていたが、どちらかというと悪役の多い人。身につまされるコメディ「ディック&ジェーン 復讐は最高」(Fun with Dick and Jane・2005・米)では、社長にだまされる重役を演じていた。 あとはそんなに有名な人はいない。シャワー・シーンでヌードになっていたのはミシェル・ダンカン。見ていないがキーラ・ナイトレイの「つぐない」(Atonement・2007・英)にも出ていたらしい。その前はほとんどTVのようだ。 カウンセラーのザックマン医師はウルリク・トムセンが演じている。とても強面で、役としてはそんなことはなく、本来なら医師は人を安心させなければならないはず。ただ相手を不安にさせるために存在するような医師。ゲームの映画化「ヒットマン」(Hitman・2007・米)でロシアの大統領候補を演じていた。 監督・脚本・プロデューサーは、ショーン・エリス。ちょっと話題になった「フローズン・タイム」(Cashback・2006・英)でも女優さんを脱がしている。ファッション・フォトグラファー出身で、ミュージック・ビデオを手がけるようになり、CMから短編を経て「フローズン……」で劇場長編映画にデビューしたらしい。うーん、どうなんだろう。 デパートの開場と同時に開場するので、朝10時に行って座席を確保し、「カラヤン・フィルム・コンサート」のあとに上映される初回、15分前に着くとすでに開場済み。スクリーンはビスタで開いていた。 最終的には340席に30人くらいの入り。この出来ではこんなものだろう。有名な人も出ていないし、監督も有名じゃないし、話題にもなっていないし。2/3は男性で、若い人は4〜5人。 明るいまま始まった見にくい予告は……手塚昌明監督の新作「空へ ―救いの翼―」は自衛隊が協力している救難救助隊の映画らしい。「252 ―生存者あり―」と似た感じだが、自衛隊が協力しているだけあって、航空機や装備がリアルで迫力がある。 シャイな男が女性の実物大人形と暮らすという「ラースと、その彼女」は、面白いのか、悪ふざけなのかよくわからなかった。アカデミー脚本賞にノミネートされたらしいが、ちょっとイタイ感じが……。同様にマドンナの初監督作品だという「ワンダーラスト」も、おもしろんだか、つまらないんだか。 驚いたのは、カトリーヌ・ドヌーブの上下マスク「シェルブールの雨傘」と「ロシュフォールの恋人たち」がリバイバル上映されるという。しかもデジタル・リマスター。ということはDVDかブルーレイ・ディスクで発売されるということか。ただ予告は状態の良くないフィルムのため、印象が悪い。これでは見たい気にならない。予告では良い画質のものを使わないと。 一番驚いたのは「アラビアのロレンス」ニュー・プリント上映だが、これがまた酷い画質。雨は降っているし、解像度も低く、ゴミだらけ。音質も悪い。これでは見る気になれない。家でDVDを見た方が良いように思ってしまう。ブルーレイが出るのか。3時間48分の完全版だそうだが、この劇場はもともとIMAXシアターで、長時間上映には向かないイスの固い劇場。そんな長時間視聴したらどうなってしまうんだろうか。しかも場内が明るいから、余計に見にくく印象が悪い。これでいいのか。 |