Blindness


2008年11月23日(日)「ブラインドネス」

BLINDNESS・2008・加/ブラジル/日・2時間02分(IMDbでは120分)

日本語字幕:手書き風書体下、太田直子/ビスタ・サイズ(16mm、35mm、ミニDV)/ドルビー・デジタル、dts

(米R指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://blindness.gyao.jp/
(全国の劇場案内もあり)

ある都市の街角で、車が突然動かなくなり大渋滞が発生する。原因は運転していた日本人の男(伊勢谷友介)が突然盲目になってしまったためだった。近くにいた泥棒の男(ドン・マッケラー)は、親切を装い、車を運転して家まで送ってやり、そのまま車を盗んでしまう。翌日、妻(木村佳乃)に伴われて眼科医(マーク・ラファロ)のところを訪れ検査を受けるが、なんの異常も見つからない。ところが、まもなく泥棒の男が盲目になり、眼科医も盲目となり、すべて日本人の男とかかわった人はすべて盲目となる。ただ眼科医の妻(ジュリアン・ムーア)だけが盲目を逃れるが、危険な伝染病と判断され、政府によってもと精神病院の施設に強制監禁されることになる。日増しに感染者は増え、あっという間に施設は満員になる。

72点

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 暗く重い映画。落ち込む。お金を払って落ち込みたい人には向いている。しかも長い。絶望をこれでもかと見せつけられる。絶望と戦う人々の姿を描くのではなく、絶望に打ちのめされていく人々の姿をメインに描いている。悲惨な状況。醜く浅ましい人間の姿。

 狙いなのだろうが、画質が悪く、写っているものも汚い。前庭には死体が転がり、廊下はゴミと屎尿がたまり、どんどん人間らしい暮らしが失われていく。きわめて寓話的で、きわめて不快だ。心が疲れている時には向かない作品。元気な人は見てもいいと思うが……。

 2時間が3〜4時間にも感じられる。早く終わって、こんな状況から逃れたいと願うようになる。正直、終わった時ほっとした。ハリウッドなら負けずに戦う人の姿をポジティブに描いていくだろう。しかしこの映画の監督というか、プロデューサーは同じテーマをネガティブに描いていく。

 原作はノーベル賞作家のジョゼ・サラマーゴの「白の闇」(日本放送出版協会・刊)。読んでいないが、かなり原作に忠実らしい。うーむ。

 監督はブラジル出身のフェルナンド・メイレレス。ストリート・チルドレンを描いた「シティ・オブ・ゴッド」(Cidade de Deus・2002・ブラジル)で高い評価を受けオスカーにもノミネートされた。続く「ナイロビの蜂」(The Constant Gardener・2005・米)では、主演のレイチェル・ワイズにオスカーをもたらした。ただ、どれも陰鬱で息苦しくなるようなものばかり。本作も同様だ。それは演出がうまいということなんだろうけれど、お金を払って落ち込むというのはどうなのかなとは思う。

 脚本はカナダ生まれの俳優ドン・マッケラー。本作では冒頭のせこい泥棒を演じている。感動楽器ドラマの「レッド・バイオリン」(The Red Violin・1998・加ほか)を手がけた。群像劇的なものが得意なのかもしれない。本作の場合、ストーリー自体は原作があるわけだし。

 主演はジュリアム・ムーア。すでに48歳だが、あまり年齢を感じさせない。さすがハリウッド女優。ただ、肌は白人的なソバカスが全身に浮いていて、ちょっとすごかった。たくさんの作品に出ており、アクションも演じられる人。つい最近SFアクションの「NEXT -ネクスト-」(Next・2007・米)でFBI捜査官を演じていた。

 その夫、ちょっと気の弱い真面目な眼科医はマーク・ラファロ。実話に基づく連続殺人犯を追った「ゾディアック」(Zodiac・2006・米)では執念を持ったしかし地味な刑事を好演。ショーン・ペンの政治ドラマ「オール・ザ・キングスメン」(All the King's Men・2006・米/独)では銃を手にする医師を演じていた。

 最初に発症する男には、伊勢谷友介。日本版西部劇「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」(2007・日)の悪役も良かったが、都市伝説ホラー「伝染歌」(2007・日)のキレた編集部員が良かった。本作も自然な感じで良い。

 その妻を演じたのは木村佳乃。「スキヤキ……」「伝染歌」ともに伊勢谷と共演している。つい最近ホラーの「おろち」(2008・日)で見た。過去に「私はアクションではなくもっとドラマを演じたい」とか言っていたひと。しかしこの人の演技には今までピンと来なかった。本作が一番自然で良い演技だと思う。こういう演技ができるんなら……。

 娼婦を演じていた美女はアリス・ブラガ。ブラジル出身の25歳。母も叔母も女優らしい。フェイレレス監督の「シティ……」で映画デビュー。ウィル・スミスのリメイクSF「アイ・アム・レジェンド」(I am Legend・2007・米)で、途中で出会う女性を演じていた。今後の活躍が楽しみ。

 眼帯の老人はダニー・グローバー。ドタバタ・コメディの「僕らのミライへ逆回転」(Be Kind Rewind・2008・米)では人の良いビデオ・レンタル店店主、アクション快作「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)では憎たらしい悪役を演じていた。

 勝手に王を名乗り暴力による支配を始めるチンピラに、ガエル・ガルシア・ベルナル。メキシコ生まれの30歳で、メキシコはもちろん、ブラジル、アルゼンチン、スペインなど世界的に知られる監督と仕事をしている。ただ日本ではどれもアート系小劇場での公開。最近ではアレハンド・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の「バベル」(Babel・2006・米)に出ていた。

 その王の太った嫌らしい会計士にはモーリー・チェイキン。だいたい嫌らしい悪役か、コミカルな役の多い人。官能ミステリーの「秘密のかけら」(Where the Truth Lies・2005・加ほか)に出ていた。ねずみ取りコメディの「マウス・ハント」(Mouse Hunt・1997・米)にも出ていた。

 警官が使っていたのはM4A1カービン。そしてなぜか収容所内に銃が持ち込まれていて、それはシルバーの2インチ・リボルバー。チーフだとしたらM60あたりか。パソコンはMacだった。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は座席予約しておいて、20分前くらいに着いたら、すでに開場済み。スクリーンはビスタで開いていた。

 最終的に540席の2.5割くらいが埋まった。ほんど中高年で、男女比は4.5対5.5くらいでやや女性が多い感じ。いずれにしても全席指定ならレディース・シートはもういらないのでは。近くに男性が座ると嫌だという人もいるのか。

 5分前くらいから案内の上映が始まり、スクリーン前方が暗くなってCM・予告へ。気になった予告は……ついに上下マスクで「ハリー・ポッターと謎のプリンス」が予告開始。2009年7/17公開だとか。過去へ行くようで、ホレ薬も出てくるらしい。

 上下マスク「ベンジャミン・バトン ―数奇な人生―」は新予告に。だんだん内容がわかってきた。老人のような体で生まれた赤ん坊が、成長とともに若返っていく。その過程でかわいい少女と出会い、再びお互いが年頃になったところで再会すると。それがケイト・ブランシェット。美しい。そしてミステリアスな素晴らしい曲。絵がとてもキレイだ。

 新予告になった上下マスクの「ワールド・オブ・ライズ」もまだ公開されていないというのに、早くもレオナルド・ディカプリオの新作予告が始まった。今度はラブ・ストーリー。上下マスクの「レボルーショナリー・ロード」。「タイタニック」(Titanic・1997・米)のケイト・ウィンスレットと共演するんだとか。内容はよくわからなかった。

 上下マスクの「きつねと私の12か月」は、予告だけでも泣きそうなヤバイ感じ。タイトルが「犬と私の10の約束」(2008・日)みたいで気になるが……。


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