Tropic Thunder


2008年11月23日(日)「トロピック・サンダー 史上最低の作戦」

TROPIC THUNDER・2008・米/独・1時間47分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://www.shijosaitei.jp/
(音に注意。入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

ベトナム南東部で、イギリス人監督デミアン・コックバーン(スティーヴ・クーガン)は、落ち目のアクション・スター、ダグ・スピードマン(ベン・スティラー)、オーストラリアのなりきり俳優カーク・ラザラス(ロバート・ダウニー・Jr.)、ラッパーから役者でも成功を狙うアルパ・チーノ(ブランドン・T・ジャクソン)、お笑いおならスターのジェフ・ポートノイ(ジャック・ブラック)、新人のケヴィン・サンダスキー(ジェイ・バルチェリ)で、ベトナム帰還兵フォーリーブ・テイバック(ニック・ノルティ)の実体験に基づく「トロピック・サンダー」の映画撮影を開始した。しかし、役者たちのわがままや、爆破オタクの特殊効果マンのコディ(ダニー・マクブライド)の勘違いなどによって、400万ドルを掛けた大爆発シーンを撮り損ね、撮影開始たった5日で1ヵ月の遅れとなっていた。プロデューサーのレス・グロスマン(トム・クルーズ)から全員の前で罵倒されクビの危機。デミアン監督が原作者のフォーリーブに相談すると、役者たちを本物のジャングルに連れて行き、隠し撮りすればリアルな絵が撮れるのではないかという。さっそく実行することになり、5人の役者と監督がジャングルに連れて行かれるが、そこは麻薬組織が支配する地帯だった。

73点

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 笑った。放送禁止用語、汚い言葉と、パロディ満載で、おバカな映画だが、ちゃんと映画としてまとまっていて、起承転結のある作品になっているところがいい。おバカと真面目のバランスがギリギリ保たれている。これは希有な例だろう。見るからにおバカな登場人物が、おバカなことをやって、めちゃくちゃになる空疎な映画ではない。銃撃シーンなどはかなり怖いし、血が飛び散り、手や頭も吹っ飛ぶという残酷シーンもとてもリアル。

 映画オタクのような役者たちが、映画用の空砲銃で実銃と戦い、危険地帯からの脱出を成功させる。皮肉も効いている。そして、大げさなんだろうが、たぶん多かれ少なかれ映画製作の裏側ではこんなことが展開しているのだろうと思わせる。俳優たちの出演事情、わがまま、ヒトラーのような狂信的独裁者で口の悪いプロデューサー、撮影トラブル……小説「バトル・オブ・ブラジル」や、ドキュメンタリーの「ロスト・イン・ラマンチャ」(Lost in La Mancha・2001・米/英)のようなごたごた。とてもコメディにでもしなければ描けないような内容。ハッキリとわかるおバカ・コメディなら、誰も文句が言えない。クレームを付けるとユーモアを解さない無粋なヤツという烙印を押されてしまう。

 こういう作品は笑えないと話にならない。つまらなければユーモアで済まされないからだ。大バッシングを食らってしまう。よく練られた素晴らしい脚本。

 原案と脚本は、主演・監督・製作のベン・スティーラーと、役者のジャスティン・セロー。ベン・スティーラーは、過去に酷い作品にも出ているが、最近公開された「ナイトミュージアム」(Night at the Museum・2006・米)が評価が高かったことから、勢いに乗ってきた感じ。それまでは「メリーに首ったけ」(There's Something about Mary・1998・米)が大ヒットし、「ミート・ザ・ペアレンツ」(Meet the Parents・2000・米)もヒットさせるも、「スタスキー&ハッチ」(Starsky & Hutch・2004・米)はさんざんの評価で日本劇場公開なし、ビデオ・ストレート。スポ根コメディの「ドッジボール」(Dogeball: A True Underdpg Story・2004・米)も日本は小劇場での限定公開。しばらく名前を聞かなかった。この人は自らはほとんど笑わず、バスター・キートンのような無表情が魅力。無駄におちゃらけないところも良い。

 本作では、映画オタクのような設定で、「レインマン」(Rain Man・1988・米)や「I am Sam アイ・アム・サム」(I am Sam・2001・米)などについて語り、笑わせてくれると同時に関心もさせてくれる。「プラトーン」(Platoon・1986・米)のエリアス軍曹ようなポーズがおかしかった。使っていたプロップ・ガンはXM177風のカービン。あえて正体不明にしたのかも。

 ジャスティン・セローは「アイアンマン2」の脚本も書いているらしい。最近の出演作ではマイケル・マン監督の「マイアミ・バイス」(Miami Vice・2006・米)、デイヴィッド・リンチ監督の「インランド・エンパイア」(Inland Empire・2006・仏ほか)にも出ていた。

 カーク・ラザラスというカーク・ダグラスのような役名のなりきり役者を演じているのは、「アイアンマン」(Iron Man・2008・米)で再ブレイクしたロバート・ダウニー・Jr。チャップリンを演じた「チャーリー」(Chaplin・1992・米)でアカデミー賞にノミネートされ、心温まる幽霊映画「愛が微笑む時」(Heart and Souks・1993・米)も良かったのに、麻薬に手を出し沈没。ハル・ベリーのホラー「ゴシカ」(Gpthika・2003・米)で復活した。なんでもこの時の女性プロデューサーと結婚したのだとか。彼を重要な役で使ってくれたわけで、よき理解者だったのだろう。連続殺人鬼の「ゾディアック」(Zodiac・2006・米)でも、嫌らしい役をリアルに演じていた。本作ではオーストラリア出身という設定で、「クロコダイル・ダンディー」("Crocodile" Dundee・1986・豪)は国の宝だと笑わせてくれる。これからもがんばって欲しい。使っていたショットガンは側面にエジェクョン・ポートがなかったからイサカM37か。

 変幻自在のお下劣コメディアン、ジェフ・ポートノイ役はジャック・ブラック。冒頭の出演映画クリップでは、特殊メイクで1人何役も演じ、まるでエディ・マーフィーのヒット作の続編「ナッティ・プロフェッサー2/クランプ家の面々」(Nutty Profesor II: The Klumps・2000・米)のよう。確かに同じくらい酷い。古くからのベン・スティーラーの知り合いのようで、彼の監督作品、ジム・キャリーの「ケーブル・ガイ」(The Cable Guy・1996・米)にも出ている。恋愛コメディ「愛しのローズマリー」(Shallow Hal・2001・米)でブレイクしたものの、「スクール・オブ・ロック」(The School of Rock・2003・米)以外のコメディはパッとしなかった。シリアスな役も演じていて、ブルース・ウィリスとリチャード・ギアの「ジャッカル」(The Jackal・1997・米)や「キング・コング」(King Kong・2005・米)もなかなかいい。最近公開された「僕らのミライへ逆回転」(Be Kind Rewind・2008・米)は、おちゃらけすぎでいただけなかった。使っていた銃はM60マシンガン。

 ベトナム戦争での実体験を小説にしたという、オリヴァー・ストーンのような設定のフォーリーブ・テイバックはニック・ノルティ。もう67歳だが、がんがん映画に出ている。ベテランなのに、本作のようなコメディも、SFアクションの「ハルク」(Hulk・2003・米)などにも出ているし、良い味を出している。一方で、「スパイダーウィックの謎」(The Spiderwick Chronicles・2008・米)のモンスターや子供向けアニメの「森のリトル・ギャング」(Over the Hedge・2006・米)の声優として出演したり、「ホテル・ルワンダ」(Hotel Rwanda・2004・英ほか)や、ハードボイルドの「ギャンブル・プレイ」(The Good Thief・2002・英ほか)などのシリアスものにも出ている。

 ダグ・スピードマンのエージェント、リックはマシュー・マコノヒー。最新作ケイト・ハドソンと共演したラブ・コメディ「フールズ・ゴールド/カリブに沈んだ恋の宝石」(Fool's Gold・2008・米)はマイクロ・シアターでの限定公開。「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」(Sahara・2005・米)以降、パッとした作品がないが……。

 太っていて、禿げていて、眼鏡で、暴言を吐き散らす嫌らしいプロデューサーを嬉々として演じているのは、特殊メイクをしたトム・クルーズ。最後にはへんてこなダンスを披露している。本当にプロデューサーとしても活躍しているので、ちゃんと計算しての出演だろう。こういう役もできるところが役者だ。次作「ワルキューレ」がますます楽しみだ。

 カメオ出演でジョン・ヴォイト、ジェニファー・ラヴ・ヒューイット、アリシア・シルバーストーン、ミッキー・ルーニー、トビー・マグワイアらが出ている。

 ほかに出ていた銃は味方がM16A2のようなA1、麻薬組織の男たちがAKS74U、MP5など。ACOGスコープのようなものを付けた銃もあった。ほかにRPG-7、M72LAWなども登場。役者たちはトリガーから指を出していたので、ちゃんとしたトレーニングを受けたのだろう。出てきたジェット機はA4スカイホークのようだった。ヘリはもちろんUH-1イロコイ。ジェフ・ポートノイはiPodで映画を見ていたが、ノートPCはDELLだった。ミリタリー・アドバイザーも「プラトーン」に出演した役者でもあるデイル・ダイほか数人が参加している。こういう映画でも、さすがにハリウッドは細部に気もお金も使っている。

 オープニング・クリップを作成したのは、イグナイト・クリエイティブという会社。プローグ・フィルムは新会社プロローグ・フィルムズを興したカイル・クーパー。

 アーマラーは、ロン・リカリ。TVドラマ「NCIS〜ネイビー犯罪捜査班」や「エイリアス」を手がけた人だ。

 公開2日目の3回目、事前に座席を確保しておいて、20分前に到着したら、銀座の劇場はまだ前回が終わっていなかった。15分前くらいに終了して、清掃が5分くらい。入場したのは10分前くらいになってから。スクリーンはビスタで開いていて、5分前くらいから劇場案内を上映。

 最終的に220席ほどの2F席の4.5割ほどが埋まった。もっと入っていい気がするが、確かに残酷描写はえげつない。汚い言葉も連発だし。こんなものか。老若比は4対6くらいで若い人が多く、男女比は4対6くらいで女性が多かった。なぜだろう。トム・クルーズが出ているからか。

 チャイムが鳴って、案内があった後半暗になって予告編へ。気になったのは……同系列の劇場なのでほとんど「丸の内プラゼール」と同じ。ただ、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットのラブ・ストーリー「レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで」はスクリーンが左右に広がってシネスコでの上映。迫力が違う。絵もキレイ。子供ができたとたんに夢を諦めることはないと妻が夫に訴える。予告でもグッと来る感じ。


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