252


2008年12月6日(土)「252 生存者あり」

2008・日本テレビ/読売テレビ/バップ/ワーナー・ブラザーズ映画/エー・チーム/ツインズジャパン/STV/MMT/SDT/CTV/HTV/FBS・2時間08分

日本語字幕:手書き書体下/ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル


公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/252/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

9月14日、小笠原付近で震度5の地震が発生した。その影響で付近の海水温度が上昇、大きな積乱雲が発生した。それが巨大台風8号を生みだし、大きな雹が降り高潮が首都圏を飲み込む。その日、耳の不自由な娘のしおり(大森絢音)の誕生日を祝うため、元ハイパー・レスキューの篠原祐司(伊藤英明)は地下鉄で銀座の待ち合わせ場所に向かっていた。同じ頃、しおりと妻の由美(桜井幸子)も地下鉄で銀座に向かっていた。人々が地下鉄に殺到する中、群衆に押されてしおりは新橋駅に取り残されてしまう。しおりを見かけた祐司は新橋駅で降りるが、そのとき海水が襲ってきて気を失ってしまう。気付いた時、まわりは死体の山。再び新橋駅にもどると生存者を捜す。幸運なことに、しおりは韓国人ホステスのキム・スミン(MINJI)に助けられていた。さらに、大阪から出張していた零細企業の社長、藤井圭介(木村祐一)、研修医の重村誠(山田孝之)と一緒に助けを待つため安全な場所を探して移動することにするが、巨大台風8号が首都圏を直撃、ハイパー・レスキューは救助に行くことが出来なかった。

73点

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 良く出来たパニック映画。感動した。涙がちょっと……。キャラクターも良く描き込まれていてわかりやすく、感情移入もしやすい。3D-CGもスゴイし(「デイ・アフター・トゥモロー」(The Day After Tomorrow・2004・米)のようだが)、その場で撮ったかのようなリアルなセットもよく出来ており、見所たくさん。そして、何といっても篠原しおりチャンを演じた大森絢音チャンが素晴らしい。カワイイったらありゃしない。

 ただ、よく考えてみると話の構造としてはほとんど「海猿」(2004・日)と同じ。あえて言えば「火猿」か。消防庁レスキューの話で、海上というか海中から、地上いうか地下に舞台が移っただけ。それもTVで放送された「エピソード0」が「海猿1」に相当し(人命救助のエキスパートを育成する訓練校を描く)、本作が「海猿2」の「LIMIT OF LOVE 海猿」(2005・日)(閉じ込められた場所からの脱出を描く)に相当するカンジ。

 だって、原作・原案が同じ小森陽一だもんなあ。実にドラマの組立がうまく、ツボを外さないけれど、一緒だもんなあ。主演まで伊藤英明でダブってるし。「海」がフジテレビで、「火」が日本テレビか。「火」ではフジテレビの社屋を高潮でつぶしちゃって、展望ドームが海に流されてるし。本作の主題歌が「LOVE ALIVE」だと。バッチリ「LIMIT OF LOVE」と当たってる。チームは必ず助けに来るんだと。

 日本のパニック映画といえば、「地震列島」(1980・日)があった。首都圏を震度7の直下型地震が襲う。高潮が地下鉄を襲うところは一緒。ただ舞台は丸ノ内線の赤坂見附だったと思う。再現度は「地震列島」も抜群で、本作と遜色なかった気がする。逆に言うと、本作はもっと何かできたのではないかという気もする。

 元ハイパー・レスキューの篠原祐司に「海猿」伊藤英明。最近、英語劇の「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(2007・日)にも出ていたが、やっぱり良かったのはフィギュア・オタクを描いた「ブリスター! BLISTER」(2000・日)で、そして「修羅雪姫」(2001・日)。「海猿」がベストだとは思うけど。さわやかで、真面目で、若々しくて、一生懸命な感じがとにかく良い。

 とにかく素晴らしいのは、耳の不自由な娘、篠原しおりを演じた大森絢音。1999年生まれというから、今年9歳。すでにTVには何本か出ているが、映画は「僕は妹に恋をする」(2006・日)がデビュー作らしい。本作は2本目。すでに天才子役と呼ばれているらしいが、本当にそんな感じがする。表情、仕草、セリフ、すべてが完璧。演技している感がない。しゃべれないのに、一生懸命「パパ」と叫ぶさまが涙を誘う。うまい!

 憎たらしい研修医、重村誠役を、実にリアルに演じたのは山田孝之。「電車男」(2005・日)で超内気な男を演じて注目された人。実にオタッキーな感じがリアルだったが、本作では一転、今風のいやらしさをこれまたリアルに演じている。本作の前にバイオレンス映画「クローズZERO」(2007・日)ですでに正反対の役を演じていたわけだが、さすがに役者。うまいなあと感心した。

 零細企業の社長、藤井圭介を演じた木村祐一も、お笑い的なちょっと大げさな感じが出そうになるも、どうにか抑えて良い感じ。一生懸命な感じが良く出ていた。人が良さそうなところもGOOD。

 韓国人ホステスのキム・スミンを演じたMINJIも、自然な演技で良かった。韓国でモデルとして活躍し、女優と歌手として本作で日本デビューを果たすらしい。本作の主題歌「LOVE ALIVE」も歌っている。美人。今後も期待したい。

 監督は脚本も手がけている水田伸生。TV版の「エピソード0」も監督している。映画では、「舞妓 Haaaan!!!」(2007・日)はもとかくとして、とても面白かった「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」(2006・日)を手がけている。古くはTVの「池中玄太80キロ」を手がけているので、コミカル系感動作という作風なのだと思うが、本作ではコミカル系を封印。シリアスに描いている。子供の使い方がうまいのは、前からのものだろう。

 脚本は小森陽一、水田伸生に加えて斉藤ひろしが手がけている。劇場作品では「SFサムライ・フィクション」(1998・日)、広末涼子の「秘密」(1999・日)、かつての人気TVをリメイクした忍者アクション「RED SHADOW赤影」(2001・日)、草なぎ剛の「黄泉がえり」(2002・日)、妻夫木聡のSFアクション「ドラゴンヘッド」(2003・日)、あまり感心できなかった「鉄人28号」(2004・日)、など、全くテーマの違う話題作を手がけている。さすがベテランと言うところか。救出のシーンではしゃべってばかりいないで早く出ろと思ってしまったが。

 水槽の浄水器を使った輸血シーンは出色。リアルで、ドキドキさせてくれる。水を軟質化するEDTA(エデト酸ナトリウム)という薬品を血液の抗凝固剤として使うなど、リアルっぽい演出。驚かされた。

 ただ、日本語なのに、早口だったり、大声で叫んだりすると何を言っているのか良く聞き取れなかったのはなぜだろう。デジタル・サウンドなので、音質が悪いと言うことではない思うのだが……。無線から聞こえる声もわからなかった。設定がリアルすぎたのか。重要でないセリフなら良いとしても、大事なセリフも聞き取れないものがあった。大きさは充分なのに。

 公開初日の初回、新宿の劇場は50分前に着いたらオヤジが2人。40分前くらいから増えだして、30分前に開示要した時には30〜40人くらいに。ほぼ中高年で、女性は3割ほど。

 ペア・シート以外全席自由で、最終的には1,064席に3割くらいの入りはちょっと少ないのでは。

 BGMが止まってチャイムが鳴り、カーテンが上に上がって始まったCM予告は、場内が明るいので見にくかった。全席自由でも遅れて入ってくる人は多いなあ。気になった予告編は……タイトルが出るのが遅いので、とにかく覚えにくいのだが……手塚治虫原作の実写化、上下マスクの「MW ―ムウ―」。ティーザーのため内容はわからなかった。ただ、期待させるものではあった。

 ゲイリー・オールドマン、椎名桔平、長谷川京子、マックス・マニックス監督による日本製ハードボイルド、上下マスクの「レイン・フォール/雨の牙」の予告が始まった。なんと原作者が脚本も書いていると言うことで、期待できそう。


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