Hellboy II: the Golden Army


2009年1月10日(土)「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」

HELLBOY II: THE GOLDEN ARMY・2008・米/独・1時間59分(IMDbでは120分)

日本語字幕:手書き書体風下、林 完治/ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.hellboy.jp/
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

はるか昔、地球の覇権を巡って人類とエルフの戦いが繰り広げられていた。エルフの王バロルはゴブリンの鍛冶師(ジョン・アレクサンダー)に無敵の機械兵、ゴールデン・アーミーを作らせた。ところが、ゴールデン・アーミーはあまりにも容赦のない攻撃を仕掛けるため、心を痛めたバロル王(ロイ・ドートリス)は人間と休戦協定を結び、ゴールデン・アーミーをコントロールする力を秘めた王冠を3つにわけ、隠してしまった。そして現代、絶滅の危機にあったエルフのため、バロル王の息子ヌアダ王子(ルーク・ゴス)は、封印されたゴールデン・アーミーを復活させ人類を絶滅させようとする。しかし、それに気付いた超常現象捜査防衛局(B.P.R.D.)は、ヘルボーイ(ロン・パールマン)、水棲人のエイブ(ダグ・ジョーンズ)、念動発火のリズ(セルマ・ブレア)を捜査のため派遣する。

73点

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 驚くべきファンタジー。異形のモンスター、ファンタジー、アクション、笑い、そして子供向けのような舞台設定にちょっと屈折した大人のドラマ、それらが渾然一体となり、一言でどういう映画か説明するのが難しいが、面白い。映像も美しく、驚異的なものばかり。あり得ない映像がとてもリアルに作り上げられている。だから想像力の弱まった大人がどっぷりとのめり込める。

 とてつもなく強い敵でありながら、父を裏切り、一心同体の双子の妹とも敵対してしまう兄という設定は、悲しいファンタジー「パンズ・ラビリンス」(El Laberinto Del Faino・2006・メキシコほか)のギレルモ・デル・トロ監督ならではだろう。前作で結ばれたリズは妊娠が発覚、それをヘルボーイに伝えるかどうかで悩むとか、エイブが敵の妹に恋をしてしまうとか、とても人間くさい設定。

 B.P.R.D.の標準武器はグロック。ヘルボーイだけは大型の中折れ式リボルバーを持っている。そしてリボルビング・グレネード・ランチャーのような兵器も使う。

 登場するクリーチャーがすべて原作コミックに登場するものなのかわからないが、雰囲気としては、ギレルモ・デル・トロ監督の「パンズ・ラビリンス」(El Laberinto Del Fauno・2006・西/メキシコ/米)のものととても似ていた。特に死の天使はそっくりの感じ。かなりおどろおどろしい感じ。不気味で良かった。ロボットや歯車の感じは、ギレルモ・デル・トロ監督の劇場作品監督デビュー作の「クロノス」(Cronos・1993・メキシコ)に通じる。

 ヘルボーイを演じているロン・パールマンはヘルボーイにハマってしまったようで、「ブレイド2」(Blade II・2002・米/独)以降、他にあまりパッとした作品がない。「エイリアン4」(Alien: Reserrection・1997・米)や「スターリングラード」(Enemy at the Gates・2000・米/独ほか)も良かったが、最近どうしたのだろう。

 念動発火のリズ・シャーマンを演じているのは、セルマ・ブレア。リース・ウィザースプーンのヒット・コメディ「キューティ・ブロンド」(Legally Bronde・2001・米)に出ていた人。やっぱり最近は本作以外ではパッとしない様子。

 水棲人エイブは、ダグ・ジョーンズ。侍従や死の天使も演じているらしい。「パンズ・ラビリンス」で半獣神のパンと両手に目のあるクリーチャーを演じていたのだとか。「ファンタスティック・フォー:銀河の危機」(4: Rise of the Silver Surfer・2007・米)のシルバー・サーファーも彼らしい。

 凶暴なヌアダ王子を演じたのは、ルーク・ゴスという人。「ブレイド2」のリーパーズのボスや、ミシェル・ヨーの「シルバーホーク」(Silver Hawk・2004・香)の悪のボスを演じていた人。怖い感じが凄い。

 その双子の妹ヌアラ王女を演じた美女は、イギリス生まれのアンナ・ウォルトン。出産直後の出演だったとか。主にイギリスのTVで活躍していたようで、出演映画は日本公開されていない模様。今後の活躍に期待。

 監督・原案・脚本はギレルモ・デル・トロ。デビュー作である独特の雰囲気を持った吸血鬼ものの「クロノス」も良かったし、ペイン内戦と孤児院と幽霊を描いた「デビルズ・バックボーン」(El Espinazo Del Diabro・2001・西/メキシコ)も強烈で面白かった。一転して大ヒット作第2弾の「ブレイド2」では、がらりと違う雰囲気の(それでも屈折したものが描かれていたが)アクションに徹し作品を作り上げた。そして多くの賞に輝く衝撃の切ないファンタジー「パンズ・ラビリンス」もある。本作は楽しいアクション・ファンタジー。宮崎アニメの大ファンだというのが興味深い。

 原作者はマイク・ミニョーラ。コミックを手がける傍ら、映画にも関わっているそうで、フランシス・フォード・コッポラ監督の「ドラキュラ」(Dracula・1992・米)にはイラストレーターとして参加し、ディズニー・アニメの「アトランティス/失われた帝国」(Atlantis: The Lost Empire・2001・米)ではプロダクション・デザイナーとして参加しているらしい。本作でもストーリーとヴィジュアル・コンサルタント、共同製作総指揮を務めている。

 クリーチャー・デザインは今回はリック・ベイカーではなく、リック・ベイカーと協力関係にあるというマイク・エリザルド。「ブレイド2」ではメカニカル・デザインを担当している。1作目の「ヘルボーイ」(Hellboy・2004・米)ではメークアップ・スーパーバイザーだった。「ファンタスティック・フォー:銀河の危機」、「メン・イン・ブラック」(Men in Black・1997・米)、最近では「ハプニング」(Happening・2008・米/印度)も手がけている。

 劇中、エイブのお気に入りの曲として流れるのは、バリー・マニロウの「涙色の微笑」(can't smile without you)。恋の、片思いの曲としてはピッタリというところか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は45分前に着いたら誰もいなかった。それでも30分前に10人くらいになり、20分前くらいに開場。この時点では20人くらい。ほぼ中高年男性で、女性はやや若く3〜4人ほど。

 2番目に来たオヤジが並ばずに離れたところに陣取ったため、それ以後に来た人はどこに並べばいいかわからず、奇妙な列というか人だかり状に。係が整列に来なかったのでそのまま列が伸びる形に。そして開場ギリギリに来た迷彩・サングラスのオヤジはちょっと間ができてしまっていたボクの後ろへちゃっかりと割り込み。恐ろしいヤツがいるものだ。まったく悪びれた風もなく、サングラスのおかげか堂々たる態度。

 最終的に406席に4割ほどの入り。金曜スタートだったおかげだろうか。ゆったりと見ることができた。

 BGMが止まって暗くなり、始まった予告編は……実写版「釣りキチ三平」はついに絵付きの予告。「ALWAYS三丁目の夕日」(2005・日)の須賀健太がいい雰囲気を出していた。監督は「僕らはみんな生きている」(1992・日)、最近では「おくりびと」(2008・日)の滝田洋二郎。期待できるかも。

 ジョン・ウーに対抗したのか、アンディ・ラウ、サモ・ハン、マギーQらが出演する「三国志」は趙雲にスポットを当てたものらしい。それなのに「三国志」完全映画化といわれてもなあ……。


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