Che: Part One


2009年1月11日(日)「チェ 28歳の革命」

CHE: PART ONE・2008・仏/西/米・2時間12分(IMDbでは米版は126分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、石田泰子(英語)、多島千恵子(スペイン語)/シネスコ・サイズ(デジタル・ビデオ、Red One Camera)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(西7指定)

公式サイト
http://che.gyao.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

1964年、ニューヨーク。チェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)はインタビューを受けていた……1952年、キューバに軍事革命により軍事政権が成立した。1955年アルゼンチン人の医師エルネスト・ゲバラは、独対政権に苦しむキューバ国民を救うため革命を決意したフィデル・カストロ(ロドリゴ・サントロ)と会い、革命に参加することをする。1956年、カストロの革命軍82名はキューバの東端から上陸、人々に武力革命を説き賛同者を増やしながら徐々に首都ハバナに迫っていった。

74点

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 実話の映画化。裕福な家庭に生まれ、医師となったアルゼンチン人の青年エルネスト・ゲバラが、なぜキューバの革命に参加し、軍医から戦士となり、チェという愛称を得、人々から尊敬されるようになったのか。そして、チェ・ゲバラはいかに戦い、いかに人々を導いていったのか、それがていねいに描かれている。

 テロリストの多くも革命を口にするが、彼らと決定的に違うのは何なのか。革命は終わってみなければ、正しかったのか間違っていたのかわからないものなのだろうか。理想に燃えながらも、道を誤ることが多いのに、彼はなぜ道を外れなかったのか。興味深いものがある。

 革命軍への参加希望者に対して、チェは言う。武器のある者、読み書きのできる者は参加しろと。支給する武器がないのだ。そして、読み書きできないものはだまされるからと。まず勉強して読み書きできるようになれと。

 ただ、インタビューで過去を振り返るというような形式を取っているものの、突然終わる。パート2へ続く。サンタクララを落とし、あとは首都のハバナだけというところで、終わる。映画として、パート1全体で起承転結があるわけではなく、盛り上がりもあまりないまま、終わる。実話なのでしようがないとしても、映画としてこれで良いのだろうか。もっとやり方があったのではないだろうか。それだけが残念。

 主演はベニチオ・デル・トロ。プロデューサーも務めている。1967年生まれだから41歳ほぼゲバラの亡くなった歳に近い。そして雰囲気もちょっと本物に似ている。注目されだしたのは傑作サスペンス「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects・1995・米)あたりからだろうか。ボク的には「スナッチ」(Snatch・2000・英/米)のチンピラが強烈だった。それに追い打ちを掛けるように凄いアクションの「誘拐犯」(The Way of the Gun・2000・米)のチンピラが強烈で、ボクはあまり好きではないがアカデミー受賞作品スティーヴン・ソダーバーグ監督の麻薬犯罪劇「トラフィック」(Traffic・2000・独/米)で一気にスターになった感じ。本作では、最初はM1ガーランドを持っているが、フィデルから働きを認められ彼に最高に銃を渡せとトンプソンM1928をもらう。そして反政府勢力が共闘するあたりからM2カービンに変わる。腰には黒い軍用ホルスターに入れたガバメント。

 チェ・ゲバラの助手のような役目を務める女性闘士、アレイダ・マルチを演じた美女は、カタリーナ・サンディノ・モレノ。「コレラの時代の愛」(Love in the Time of Cholera・2007・米)などに出ているようだが見ていない。アレイダはパート2でゲバラの妻になるらしい。本作では革命軍に加わったのみで、あまり活躍せず、印象も薄い。

 革命軍のリーダーの1人に、エドガー・ラミレスがいた。傑作サスペンス「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)で特殊部隊員の暗殺者を演じていた人。

 カストロはスコープを付けたボルト・アクション・ライフル。一般兵士はM1ガーランドを渡され、「恋人のようにかわいがれ」と言われる。ほかにトンプソン、木製ストックの付いたFN FAL、スプリングフィールドM1903ライフル、M2カービン、S&Wリボルバー、BAR、とほとんどアメリカ軍の兵器ばかり。政府軍の戦車はM4シャーマンだった。

 監督と撮影はスティーヴン・ソダーバーグ。手持ちカメラを多用する感じはそうかと思ったが、やっぱり自分で撮影しているんだ。ちょっと手持ちが多すぎる。ビスタならまだしも、シネスコで手持ちをやられると動きが強調されるので気分が悪くなる。まして日本語字幕が入ると、微小な動きまでがわかりやすくなってしまうので、ますます気になることになる。この人、カメラを動かさなければ良いんだけど……。1963年生まれというから45歳という若さ。うまい人だと思うけれど、面白いものもあるし、なんだコレというのもある。監督デビュー作の「セックス嘘とビデオテープ」(Sex, Lies and Videotape ・1989・米)が話題となり、各賞を受賞。ボクはテレンス・スタンプが怖かった「イギリスから来た男」(The Limey・1999・米)や、実話の映画化「エリン・ブロコビッチ」(Erin Brockovich・2000・米)が面白かった。

 脚本は、なかなか面白かった「ジュラシック・パークIII」(Jurassic Park III・2001・米)や、最弱ファンタジーという印象だったガッカリの「エラゴン 遺志を継ぐ者」(Eragon・2006・米)の脚本も手がけたピーター・バックマンという人。うまいんだか、下手なんだか。

 撮影はデジタルカメラで、非常に注目を集めているRed One Cameraが使われている。そして現代に近い時間帯のものをあえてモノクロにし、当時の実写と違和感がないようにして、メインとなるより古い革命当時の時間帯のものを鮮明なカラーにするという演出。ただ、シネスコであんまりカメラを手持ちで動かすなと言いたい。

 公開2日目の初回、全席指定なので前日に確保しておいて、10分前くらいに着いたらちょうど開場するところ。最終的には607席に40人ほどの入りはちょっと少なすぎるが、朝一だからか。中高年がメインで、若い人は1/4くらいいただろうか。男女比は5.5対4.5くらいでやや男性の方が多かった。

 スクリーンはビスタで開いており、開場と同時に案内を上映。半暗になって始まった予告で気になったものは……チャン・ツイィー、レオン・ライ共演、チェン・カイコー監督の天才女形の生涯を描く「花の生涯――梅蘭芳」は、やっぱり面白そう。

 クリント・イーストウッドの上下マスク「チェンジリング」は、音のいい劇場で見ると予告編とは言え印象が違う。低音が効いている。重厚さが増していた。

 3D-CGも使ったアニメ、「装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ 劇場版」もなかなかの迫力。見たいところだが、マニアックな方々がたくさん来るだろうからなあ……。

 スクリーンが左右に広がりシネスコになって、わざわざ左右マスクでコーエン兄弟のクライム・コメディ「バーン・アフター・リーディング」は凄いキャスト。ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチとは。

 ニュースというかドキュメンタリーで、日本オリジナルなのか数分の短編「チェ・ゲバラとは」の上映があった後、暗くなって飽きてきた盗撮禁止があって本編へ。


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