ASSEMBLY


2009年1月17日(土)「戦場のレクイエム」

集結號・2007・香/中・2時間04分

日本語字幕:手書き風書体下、税田春介/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル

(香IIB指定)

公式サイト
http://requiem-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

1948年、中国。新中国建国の主導権をめぐって、蒋介石率いる国民党軍と、毛沢東率いる共産党の人民解放軍は激しい内線を繰り広げていた。人民解放軍中原野戦軍第2師団139団3営第9連隊の連隊長グー・ズーティ(チャン・ハンユー)は、市街戦で国民党軍を打ち破ったものの、降伏してきた敵を射殺し、衣服を奪って部下に分け与えたことから軍法会議により、第9連隊47名の兵士とともに最も危険な最前線でのもっとも危険な任務を与えられる。第9連隊は本隊が撤退する時間を稼ぐため、旧炭坑に陣取り、集合ラッパの合図があるまで陽動作戦を展開することになる。砲兵と戦車の援護を受けた大軍の国民党軍が波状攻撃を仕掛けてくる内、隊員はどんどん戦死して減っていく。ジアオ小隊長(リャオ・ファン)がラッパを聞いたと言うが、意見が分かれ、グーは結局とどまることを選択する。その後敵の総攻撃があり、グー以外の全員が戦士、彼は野戦病院で意識を取り戻す。

80点

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 実話の映画化。原作はヤン・ジンジュアンの短編「訴訟」(なんと3ページ)なんだとか。歴史書と関係者への取材で物語をふくらませていったらしい。前半は残酷なまでのリアリムズで描いた迫力の戦闘シーン、後半は失踪者扱いとなっている第9連隊47名の戦友の名誉回復への旅という構成。記念碑から始まり、記念碑で終わる。

 戦闘シーンはまさに熾烈で、フォン・シャオガン監督が韓国の、これまた熾烈な戦争映画「ブラザーフッド」(Brotherhood・2004・韓)を高く評価していたことから、それを手がけた韓国のMKピクチャーズに共同製作をもちかけ、韓国のSFXスタッフが参加し実現したという。スピルバーグ監督作品の傑作戦争映画「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)のようにウォッシュした感じのカラーは色が浅くモノトーン風で、しかもシャッター速度が速いようで、爆発で飛ぶ破片がつぶつぶになって見える。そして、手が飛び、足が飛び、ヘルメットに「カン!」と甲高い音がして穴があき血が飛ぶ。胴体がちぎれることさえも……。まるで観客が戦場に放り込まれたような錯覚を起こすほど。だからこそ、コレを生き抜いた主人公グーの怒りや悲しみが良く伝わってくる。

 戦場で名誉の戦死を遂げれば「烈士」と呼ばれそれは名誉であり、残された家族には相応の米が配給される。ところが戦場から逃げ出したなど言われれば正反対の扱いを受けるし、失踪扱いでも敬意さえ払われない。

 まったく戦争とは愚かな行いで、人間性を失わせてしまう地獄だと改めて気付かせてくれるが、いかんせん中国という縛りは存在するようだ。なぜ国民党軍と人民解放軍ではありながら、同胞同士殺し合わなければならないのかは一切触れられていない。戦士たちがそれに関して口にすることもないし悩むこともない。単なる敵としてしか存在しない。中盤、戦場は中国国内から朝鮮半島にかわるが、なぜ中国軍が朝鮮半島で国連軍および大韓民国と戦っているのかは一切触れられていない。自分たちが命をかけていることは何なのか、それを問うことはない。しかも、主人公は軍でしか生きていけない感じになっているし……。

 国民党軍も人民解放軍も、基本的に米軍のものを中心に世界各国の銃器を使っている(コピーかもしれない)。第二次世界大戦で国内に大量の米軍武器があったからだろう。M1903ライフル、モーゼル・ライフル、ブローニングM1919マシンガン、BAR、スナイパーがジョンソン・ライフル、マキシム重機関銃、M2ブローニング、ブレン・ガンもしくはZB26、ステン・サブマシンガンガバメントなど。それがベースで、国民党軍には米軍の戦車もある。映画ではM4シャーマン風、M26パーシング風が登場。一方、人民解放軍には旧ソ連系の武器も混じっていて、PPSh43サブマシンガンとS&W・M76を合わせたようなタイプのサブマシンガンも使われていた。

 グー・ズーティ連隊長を熱演したのはチャン・ハンユーという人。同じフォン・シャオガン監督のコメディ、ドナルド・サザーランドが出た「ハッピー・フューネラル」(Big Shot's Funeral・2001・中/米)に出ていたらしいが、IMDbにも載っていなかったのでエキストラなどかもしれない。なんと元は声優だったらしい。フォン・シャオガン監督に見出されたのだとか。実に良い味を出していた。他の役も見てみたい気がした。

 同郷出身の上官、リウを演じたのはゲスト出演のような感じだったフー・ジュン。どこかで見たと思ったらハリウッドでリメイクされたアクション「インファナル・アフェア 無間序曲」(Infernal Affairs II・2003・香)に出ていたらしい。最近ではジョン・ウー版三国志「レッドクリフ Part I」(Red Clif・2008・中ほか)で趙雲を演じている。

 監督は「ハッピー・フューネラル」のフォン・シャオガン。つい最近チャン・ツィイーが出ていた美しい皆殺し映画「女帝エンペラー」(The Banquet・2006・中)の監督・脚本を担当。「ハッピー……」はあまり笑えないコメディだったが、「女帝」のすごさは本作につながっている。中国には凄い監督がたくさんいるようだ。

 脚本はリュウ・ホンという人。1970年代に小説家としてデビューし、1990年代からは脚本家としても活躍し、チャン・イーモー監督の「菊豆」(菊豆・1990・中スラッシュ日)や「秋菊の物語」(秋菊打官司・1992・中/香)の脚本を担当してるらしい。

 「プライベート・ライアン」のような絵を作り出したカメラマンは、リュイ・ユエという人。アメリカのアカデミー賞撮影賞ノミネート経験もある実力派。絵に力がある。チャン・イーモーの「活きる」(活着・1994・中)や「キープ・クール」(有話好好説・1997・中)なども手がけている。「趙先生」(Mr. Zhao・1998・中)という作品では監督もやっている。

 公開初日の初回、新宿の劇場は初回のみ全席自由ながら前売り券も当日券との交換が必要。40分前くらいに着いたらボックス・オフィスには4人の人。30分くらい前に窓口が開いた時で6〜7人。当日券に交換してエスカレーター前に移動して待つ。開場したのは17〜18分ほど前。この時点で30人弱くらい。中年カップルが2組ほどいたが、ほとんどは白髪の高齢者。女性は1/3ほど。

 最終的に305席に3割くらいの入り。まあこんなものだろうか。下は父親に連れられた中学生くらいからいた。

 スクリーンはシネスコで開いていて、チャイムが鳴って暗くなりビスタになって始まった予告編では……キアヌー・リーブスがすぐに発砲する刑事を演じる上下マスクの「フェイクシティ」がおもしろそう。公式サイトではS&Wオートを持っているが、予告ではグロックと1911カスタムを使っている。

 上下マスクのアニメの実写版「ヤッターマン」はたぶん初めての予告編。なかなか良い感じだが、ドロンジョが出て顔を写る寸前でカット。ティーザーか。

 ウィル・スミスの上下マウス「7つの贈り物」は、なんだか「幸せのちから」(The Pursuit of Happyness・2006・米)のような雰囲気。面白いかも。


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