Mamma Mia!


2009年2月1日(日)「マンマ・ミーア!」

MAMMA MIA!・2008・英/米/独・1時間48分

日本語字幕:手書き書体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(英PG指定、米PG-13指定)

公式サイト
http://mamma-mia-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

ギリシャの小さな島カロカイリ島で古びたヴィラを経営するドナ(メリル・ストリープ)のひとり娘、ソフィ(アマンダ・セイフライド)は、まもなく婚約者のスカイ(ドミニク・クーパー)と結婚することになっていた。ソフィは母の手で育てられ、誰が父か知らなかったが、母の日記を読んで父の可能性がある3人の男性がいたことを知る。そして、会えばわかるはずだと、母に内緒で3人に結婚式の招待状を出す。

76点

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 ハッピーになれる映画。楽しい。元気をもらえる。こんな風に何でも前向きにできれば、たぶん人生は楽しいはず、と思わせてくれる。悪いヤツは1人として出てこない。真っ青な空、真っ青なエーゲ海。素朴で陽気な人々。上げ上げな歌とダンス。優しさに感動すら覚える。

 ストーリー自体はシリアスで重大な問題を扱っている。ただ、これは基本的にミュージカルのパターン。大変なことを明るく楽しく歌い飛ばしてしまう。ラテン系の血なのか何なのかよくわからないが、歌や曲で自然と体が動き出す人と、そうでない人とがいいて、動き出す人はミュージカルを受け入れられるし、そうでない人は全く受け入れられない。歌自体は好きでも、芝居から突然歌い出すのが不自然だと拒否反応を起こす人もいる。そういう人にはミュージカルは無理だろう。国民性もあるのかもしれない。ボクはオペラはよくわからないけれど、ミュージカルはOK。

 しかもABBA(アバ)の曲が満載。ABBAは活動期間がだいたい1972〜1982年だから、ボクの世代はまさに的中。すべての曲を一緒に歌いたいくらい。若い人には古くさく感じられるかもしれないが、サントラは買った方が良いかも。すでに懐メロ! とにかく、オヤジ世代以上はハマル人が結構いるはず。

 描かれていることと反対に、絵はキレイだし、コミカルな要素満載で、楽しい。つい足や手で拍子を取ってしまいたくなるほど。主人公の子はなんて幸せなんだろう。こんなうまい話があるわけないジャン、と思いながらも、ミュージカルなんだから全然問題なし、いいんじゃないの、という気持ちに。ここも許せないと厳しい評価となるかも。

 なんと言っても豪華なのはキャスティング。ひとり娘のソフィをかわいく演じたのは、アマンダ・セイフライド。アメリカの人気TV、女子高生探偵物語「ヴェロニカ・マーズ」(2004〜2005)で主人公ヴェロニカの謎の死を遂げた親友を演じていた人。問題ありのあやしげな雰囲気の役だったが、本作では全く違った印象。9編のオムニバス「美しい人」(Nine Lives・2005・米)にも出ていたようだが、映画での大きな役はこれが初めての模様。今後の活躍にも期待したい。

 明るく陽気で前向きなシングル・マザー、ドナを演じたのは名女優メリル・ストリープ。こんな役もできるんだ。とても「プラダを着た悪魔」(The Devil wears Prada・2006・米)の悪魔とは思えない。しかも歌がうまい。演技しながら感情を込めた歌い方は、さすが役者。娘を思う気持ちが良く出ていた。そういえば感動作「ミュージック・オブ・ハート」(Music of the Heart・1999・米)では臨時音楽教師をやっていたっけ。1970年代からずっと映画に出続けている。すごいなあ。

 そのドナの女友達がまた素晴らしい。仲良し3人組という感じがよく出ていた。1人はベスト・セラー料理本ライターで独身のロージーを演じたジュリー・ウォーターズ。「ハリー・ポッター」シリーズでミセス・ウィーズリーを演じているオバサンだ。本作では、はじけていて、とても普通のオバサンには見えない。もうまさにコメディエンヌ。すごい。

 もう1人は整形を重ねた人造美女でお金持ちのプレイ・ガールという設定のターニャを演じたクリスティーン・バランスキー。整形美女の設定が本当に思えるほど美しく、若々しいが、実際には57歳。とてもそうは見えない。最近日本公開された映画はないようだが、レニー・ゼルウィガーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズが出たミュージカル「シカゴ」(Chicago・2002・米)の怪しげな狐目の女記者役は存在感があった。お上品な美人なのに、本作ではお下劣なダンスも難なくこなす余裕。本作が今までで一番美しく魅力的に撮れているのではないだろうか。惚れた。

 3人の父親は、本作でラジー賞候補になってしまったピアース「007」ブロスナン、コリン・ファース「ブリジット・ジョーンズの日記」(Bridget Jones's Diary・2001・米/英)、ステラン・スカルスガルド「宮廷画家ゴヤは見た」(Goya's Ghosts・2006・米/西)の3人。確かにピアース・ブロスナンは3人の内で一番歌が多いのに、あまりうまくなかった。しかも踊りに乗り切れていないというか、リズムに乗り遅れていた感はあった。最初の歌はキーが妙に高かったし。カッコいのになあ。

 ソフィのフィアンセを演じたハンサム・ガイは、ドミニク・クーパー。イギリス生まれで、TVでの活躍が多いよう。映画ではジョニー・デップの「フロム・ヘル」(From Hell・2001・米)に小さな役で出ているようだ。30歳には見えない若さ。今後の活躍に期待したい。

 原作は舞台のミュージカルで、本作の脚本も手がけたキャサリン・ジョンソン。舞台やTVの脚本がほとんどで、本作は初の劇場映画になるらしい。

 監督はフィリダ・ロイドという女性。舞台が多いようで、TVも少し手がけているが、やはり劇場映画は初めての模様。役者を乗せてその気にさせるのがうまいような気がした。

 公開3日目の初回、前日に座席を確保しておいて、25分前くらいに着いたら、まだ開場していなかった。ロビーは10スクリーンもあるため、人でごった返していた。イスに座ることも出来ない。20分前くらいに開場となりエスカレーターへ。スクリーンはビスタで開いていて、10分前くらいから案内を上映。

 客層は、下は小学生連れのファミリーから、白髪の高齢者まで幅広いが、メインは中年層。男女比は3.5対6.5くらいで女性が多かった。ミュージカルはやっぱり女性か。

 スクリーン近くが暗くなり、客席も少し暗くなってCM・予告。スクリーンが明るいので見やすい。まだ客席の2.5割くらいしか埋まっていない。前日座席予約したときには8割くらいが埋まっていたのに……。とにかく座席を確保して安心しているのか、来るのが遅い。驚いたことに、本編が始まってからも入ってくるヤツがいた。ジャマになるからやめて欲しい。

 最終的には301席、ほぼ満席。たまにはこういうハッピーな映画もいいのではないだろうか。むしろ不景気な時にはこんな元気な映画がいい気がする。

 気になった予告編は、上下マスクの「カムイ外伝」はついに絵付きの予告へ。内容はよくわからないが、抜け忍の話らしい。9月19日公開。

 リチャード・ギア主演らしい「HACHI 約束の犬」はハリウッド版忠犬ハチ公物語。リチャード・ギア主が「ハチ」と日本名で呼びかけていた。秋田犬ってなんてかわいいんだろう。もう泣けそうな雰囲気。ハチだけに8月8日公開だとか。

 上下マスクの「レッドクリフ」パート2の予告も始まった。早くに前売りを買っていながら特典をもらえなかったのは腹が立つが、予告を見ると面白そう。とにかく凄い絵。

 上映中、何回か映写室の灯りが点けられたようで、客席に光が漏れてきて気になった。やめて欲しい。懐中電灯などを使えば良いではないか。明るいシーンでは気にならないが、暗いシーンで映写室の灯りを点けられると気になってしまう。シネコンでは映写が自動化されているのではないのだろうか。灯りを点ける必要もないと思うが。もうプロの映写技師もいなくなり、そんなことに気を使う人もいなくなったということか。


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