Che: Part Two


2009年2月1日(日)「チェ 39歳別れの手紙」

CHE: PART TWO・2008・西/仏/米・2時間13分(IMDbでは131分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、石田泰子(英語)、多島千恵子(スペイン語)/ビスタ・サイズ(デジタルビデオ、Red One Camera)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定)

公式サイト
http://che.gyao.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

1965年3月、チェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)は「サトウキビ畑の視察に行く」と言ってキューバから姿を消した。1年後、変装して“ラモン”という名でボリビアに入国、諜報活動をしていたタニア(フランカ・ポテンテ)から情報を得て、軍事独裁政権下で苦しむ民衆を助けるため、兵士を募り革命闘争を始める。一方政府はアメリカに助けを求め、元特殊部隊の男たちによって対ゲリラ特殊部隊を育成することにする。さらに、革命軍を分断し包囲する作戦に出る。

71点

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 うーん、長い。何気ないシーンでもカメラが微妙に動くため軽いめまいもして、何度も気を失いそうになった。前半はほとんど単調に行軍が続くし、戦闘もほとんどなく、退屈さえ感じる。後半は戦闘になるが、結末がわかっているので、いつ最期が訪れるのかと不安が募る。

 ラストは裁判も何もなし。銃声が3発。それで終わり(実際とはちょっと違うらしい)。見終わって暗い気持ちになった。元気がない時は見ない方が良い思う。歌が1曲あって、あとは無音で延々エンド・ロールが流れる。キレイゴトにしたくなかったのだろうか。たたそれを見せられる方は苦痛だ。嫌なら出ればいいのだが、カメラや音声のクレジットを見たいので、そうもいかない。

 ラストの戦闘から処刑まではハラハラドキドキだが、気分は良くない。嫌な感じのドキドキ。2時間以上という長丁場のほとんどが行軍で、史実に忠実に描けばこうなるのだろうが、ドキュメンタリーじゃないわけだし、ドキュメンタリーならわかりやすい状況説明や現在位置、政府や政府軍の状況などを解説できるわけだが、革命軍視点のドキュメンタリー風ドラマではそれもない。淡々として、わかりにくく、ラストだけ盛り上がって終わる。これじゃ、前半いらないじゃん、というのは映画の構成としてどうなんだろう。まあ、前作もクライマックスになるべき首都陥落もなく、直前で終わってしまったが。

 直前でといえば、テーマを絞るためなのか、助手として入ってきた女性闘士、アレイダ・マルチは、何の説明もなく本作では突然奥さんとなっていて、子供も5人もいる。知っていて当然ということなのか。たしかこの女性の前に奥さんがいたはずでは? つまりその問題にも触れなければならなくなるから省略したか。

 省略と言えば、旧ソ連を痛烈に批判してソ連の圧力でキューバを去ることにした話や、コンゴに渡って革命を試みるが失敗してもどった話、ボリビア軍の後ろにはアメリカのCIAだけでなく元ナチス親衛隊中尉がいたことも、ほとんど触れられていない。

 ちなみにキューバと日本に国交があるのは、チェ・ゲバラが1959年に日本を訪れ、翌年に通商協定を結んだかららしい。それと、ボリビアは「明日に向って撃て!」(Butch Cassidy and the Sundance Kid・1969・米)で主人公の2人が銀行強盗の新天地を求めて向かう国だったっけ。

 つらかったのは、敵・味方とも軍服が似ていて、装備もアメリカ式で似ていて、顔かたちも似ていること。どちらが政府軍でどちらが革命軍なのかわからない。せめて嘘にならない程度の映像的な工夫があっても良かったのではないだろうか。

 有名な俳優は……紅一点ともいうべきタニアを演じたのはフランカ・ポテンテ。「ラン・ローラ・ラン(Lola Rennt・1998・独)」で注目され、ハリウッド傑作アクション「ボーン・アイデンティティー」(The Bourne Identity・2002・米)で世界的に知られるようになった。本作では存在感薄い。

 いったんはゲバラを支援することにするが後で撤回するボリビア共産党の書記長マリオ・モンヘを演じたのは、ルー・ダイヤモンド・フィリップス。リアルな西部劇「ヤングガン」(Young Guns・1998・米)、「ラ★バンバ」(La Bamba・1987・米)で注目を集めた人。最近はTVばかりで見かけないなあと思っていたら、ここにいた。顔見せ程度だけど。

 ボリビアの独裁者、バリエントス大統領を演じたのは、悪役と言えばこの人というようなヨアキム・デ・アルメイダ。つい最近はポール・ウォーカーの痛快アクション「ボビーZ」(The Death and Life of Bobby Z・2007・米/独)で嫌らしいボスを好演していた。さすがに短い出演ながら存在感はあった。

 マット・デイモンは1シーンだけ。たしかドイツ人神父役。友情出演なんだとか。

 登場した武器はキューバ戦とほとんど同じ。M1ガーランド、M1カービン、M2カービン、FALなど。FALを持っている部下がチェに寄ってきて、チェがなにげなくその銃口を手で逸らすのがリアルだった。ボリビア政府軍もアメリカ軍のお古で、ほかにウージー、M1919マシンガンなど。ラストでチェが2カービンをフルオートで撃つと、派手にマズル・フラッシュが発生していた。ジャムか不発でM2を捨て手にするのはガバメントのようだった。ちょっと「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)のトム・ハンクスの雰囲気があったかも。

 ラストにようやくタイトルが出る。

 公開2日目の2回目、前日に新宿の劇場の座席予約をしておいて、20分前くらいに着いたらまだ開場していなかった。15分前くらいに開場し、場内へ。すぐに案内が上映された。最終的には157席ほぼ満席。若い人と中高年の割合は半々くらいで、男女比も半々くらい。

 予告は同じ劇場なので「マンマ・ミーア!」とほとんど同じ。ほぼ暗くなって予告が始まっても続々と人が入ってくるのも同じ。

 「花の生涯―梅蘭芳」はこの劇場で先行独占公開されるらしい。コーエン兄弟の「バーン・アフター・リーディング」はオール・スター・キャストで描く、CIAの極秘ファイルを拾ってしまった男のコメディらしい。よくわからないが、何だか凄そう。

 座席数は少ないがスクリーンも大きめで見やすい。音質も素晴らしいし、スクリーンも明るい。200席ほどあってもこれよりずっとスクリーンが小さく、音質も悪く、客席がフラットでよく見えない劇場はたくさんある。同じ料金なのだから、古い劇場は改装するなどしないと生き残っていけなくなると思う。


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