Street Kings


2009年2月15日(日)「フェイクシティ ある男のルール」

STREET KINGS・2008・米・1時間49分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arriflex)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://movies.foxjapan.com/fakecity/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

LAPDのラドロー刑事(キアヌ・リーブス)は、単独でおとり捜査を行い、警察と名乗らずに突入し、犯人を全員射殺すると相手に銃を持たせ正当防衛の証拠を作ってから、行方不明になっていた双子の少女を救出する。単独で行動することから、同僚たちからは嫌われ、内務調査班も動いていた。妻を失ってから、酒にも手を出すようになっていた彼の理解者は、上司のワンダー警部(フォレスト・ウィティカー)だけだった。そんな時、かつての同僚の制服警官のワシントン(テリー・クルーズ)が内務調査班にチクッたという情報がもたらされ、ラドローが尾行しているとコンビニでの覆面強盗事件に巻き込まれ目の前で射殺されてしまう。犯人を割り出すため、ラドローは事件を担当するディスカント刑事(クリス・エヴァンス)に協力し捜査を始めるが、意外な事実が判明する。

78点

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 強烈な刑事ドラマ。前半は単なる悪徳警官か、よくありがちなスティーヴン・セガール・タイプの一匹狼の強引刑事の話かと思ったら、後半から様子が変わってくる。小さな手がかりを追ううち、意外な事実が判明し、しかもそれが大きな陰謀につながってくるという、いかにも映画的な展開。やっぱり悪いやつを野放しにしておくことはできない。不正を許さないという決然とした姿勢が、観客をスッキリとさせてくる。

 ただ、冒頭、観客を別な方向へわざと導くための設定がやりすぎの感じで、ラドロー刑事が一線を越えてしまっているのはどうかと思う。チクった証拠もないのに、尾行して、店の中まで追いかけていって、ベルトを巻いた拳で殴ろうとするのは問題外でしょ。ちょっと短気すぎるし、暴力的すぎる。主人公が問題を抱えていることも徐々にわかるし、相手の男にも問題があったことはわかるが、それが観客にもわかる前に手を出してしまっては、犯罪者と変わらない。

 それさえなければ、良くできた刑事ドラマだと思う。謎解きも面白いし、アクションもたっぷり。しかもガン・アクションの設定がリアル。ちょっとだけだが、ちゃんとお約束の美女も登場する。

 主人公のラドロー刑事を演じたのはキアヌ・リーブス。この前に出た「地球が静止する日」(The Day the Earth Stood Still・2008・米)は残念だったが、本作は良い。 仕事では官給品のS&Wの45オートにノバック・サイトを載せて使っているが、プライベートでは同じ45オートでもボ・マー・サイトを載せたかなり高級な1911カスタムを使っている。ホルスターはパンケーキ・タイプ。ちゃんとマグ・ポーチも付けている。足首のアンクル・ホルスターに入れているのはセンチニアルかと思ったら、チャーター・アームズのオフ・デューティ・リボルバー。ちゃんとウィーバー・スタンスで構えているし、むやみに銃を顔の横に持ってくるハリウッド・レディの構えをしないところが良い。ただ、冒頭、1911カスタムのチャンバー内を確認する時に、スライドを引く手がスリング・ショットになっているのは残念。プロはこういう引き方をしない。銃口を敵じゃない人に向けてしまうシーンもあったし、惜しい。

 パートナーとなる若い刑事ディスカントはクリス・エヴァンス。キム・ベイシンガーのアクション「セルラー」(Celluar・2004・米)でがんばっていたが、やっぱりイメージが強いのはちょっと残念なSFアクションの「ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]」(Fantastic Four・2005・米)のヒューマン・トーチだろう。作品がパッとせず目立っていないが。使っていたのは一般的な官給品のグロック。

 上司のワンダー警部はフォレスト・ウィテカー。まあ怖い役で、さすがにうまい。「パニック・ルーム」(Panic Room・2002・米)ではちょいと人のいい感じだったが、一転して「ラストキング・オブ・スコットランド」(The Last King of Scotland・2006・英/米)では恐ろしい人食いアミンを演じていた。つい最近は時間逆転ミステリー・アクション「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)で事件を撮影してしまう気の良いアメリカ人旅行者を演じていた。

 内務調査班のビッグスを演じたのは、ヒュー・ローリー。実写+3Dアニメの「スチュアート・リトル」(Stuart Little・1999・米)のお父さんを演じていた人。どこかコミカルな感じがするのだが、本作ではそれを小ずるい感じに変えて、なかなか怖い役。使っていたのはベレッタM92F。

 同僚のサントスとデミルを演じたのは、TV「プリズンブレイク」のスクレことアマウリー・ノラスコと、「ゴースト・ハウス」(The Messengers・2007・米/加)で流れ者を演じていたジョン・コーベット。特にジョン・コーベットが怖いが、この人はひげがないと結構優男。2人が使っていたのは予備弾をレシーバーの左側に装着したベネリM3ショットガン。そしてオフ・デューティ・ガンとしてキンバー・カスタムにフラッシュライトを装着したもの。

 恋人の看護師グレイスを演じた美人は、メキシコ出身のマーサ・ヒガレダという人。これまではほとんどメキシコの映画やTVに出ていたようで、ハリウッド作品はこれが初めて、デビュー作品のよう。いきなりキアヌ・リーブスの恋人役なんてラッキーなのでは。

 ほかに、もと相棒の制服警官ワシントンが使っていたのはベレッタM92Fのシルバー・タイプ。襲撃犯が使うサブマシンガンはS&W・M76とM3A1グリスガン。字幕でワシントンの遺体から3種類の弾が出たといっているが、なぜかそれに7mmという奇妙な口径がある。冒頭の韓国人ギャングが持っているポケット・ピストルはKahr。撃たないが彫刻入りの豪華なガバメント(正確にはコマンダーらしい)なんてものも出てくる。詳しくはhttp://www.imfdb.org/index.php?title=Street_Kingsをチェックして欲しい。

 血糊の飛ばし方などもリアルだし、弾着もリアルだ。銃弾はソファーに隠れてもほとんど貫通してしまう。そして体にダブル・タップして、次に顔(頭)や喉を撃つ。特に主人公のキアヌ・リーブスはすべてダブル・タップで撃つ。撃ち方もまたリアルなのだ。ヤクのディーラーに乗り込んでの撃ち合いでは、キアヌーはフラッシュライトを左手に持ち、クロスド・テクニックを見せてくれる。元LAPDの警察官がテクニカル・アドバイザーとして参加しているおかげのようだ。

 脚本とストーリーはジェームズ・エルロイ。ジェームズ・ウッズが主演したポリス・アクション「ザ・コップ」(Cop・1987・米)の原作、大ヒットとなったミステリー「L.A.コンフィデンシャル」(L.A. Confidential・1997・米)の原作、実話を基にしたミステリーの「ブラック・ダリヤ」(The Black Dahlia・2006・米)の原作などを手がけている。だいたい警察がらみのダークな話というのが多い。

 ほかに脚本はカート・ウィマーとジェイミー・モスの2人。カート・ウィマーは面白かったクライム・アクション「トーマス・クラウン・アフェアー」(The Thomas Crown Affair・1999・米)の脚本、SFアクション、ガンカタの「リベリオン」(Equilibrium・2002・米)の監督・脚本、アル・パチーノのCAIもの「リクルート」(The Recruit・2003・米)の脚本などを手がけている。まあ「ウルトラヴァイオレット」(Ultraviolet・2006・米)はなかったということで。ジェイミー・モスは本作が初の劇場用映画ということになるらしいが、押井守監督の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(1995・日)の実写版を手がけるらしい。

 監督はデヴィッド・エアー。もとは脚本家だったようで、ちょっと残念だった潜水艦映画「U-571」(U-571・2000・米)の脚本、デンゼル・ワシントンが悪徳警官を演じた「トレーニングデイ」(Trainning Day・2001・米)の脚本、面白かった「ワイルド・スピード」(The Fast and the Furious・2001・米)の脚本、かつての人気TVの映画化「S.W.A.T.」(S.W.A.T.・2003・米)の脚本、などを手がけている。監督としては2本目ながら、日本劇場公開は初。このアクションの感じなど、なかなか良いのではないだろうか。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、55分前くらいに着いたら窓口には3人。35分前くらいに12人ほどになって、30分前くらいに窓口が開いた。ほとんど中高年で、女性は3人。さらに階段で並んで20分前くらいに開場。この時で30〜40人くらい。

 スクリーンはシネスコで開いていて、最終的に183席の7割ほどが埋まった。

 予鈴の後、本鈴、半暗になってビスタで始まった予告は……「ドラゴンボール」はちょっと長い新バージョンか。トランスフォーマーみたいなバイクを見ると不安がよぎるが……。「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」は、監督が「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米)のデヴィッド・フランケルとはいえ、オーウェン・ウィルソンだからどうなのか。

 ケイト・ウィンスレットとレイフ・ファインズの「愛を読む人」はなんだか重い感じで< ちょっとなあ。上下マスクの「オーストラリア」は新バージョンの予告。監督のメッセージ付き。

 暗くなってシネスコで再び「ドラゴンボール」の新バージョンの予告。やっぱり鳥山明のメッセージが引っかかる。


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