Defiance


2009年2月15日(日)「ディファイアンス」

DEFIANCE・2008・米・2時間16分(IMDbでは137分)

日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(Arriflex 435・235)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定)

公式サイト
http://www.defiance-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

1941年、ナチス・ドイツはソビエト連邦への侵略戦を開始した。そしてユダヤ人のゲットーに閉じ込め、徐々に収容所送りにしていった。抵抗する者は容赦なく射殺された。そして、ベラルーシで難を逃れた者たちはリピクザンスカの森に逃げ込んでいった。トヴィア(ダニエル・クレイグ)、ズシュ(リーヴ・シュレイバー)、アザエル(ジェイミー・ベル)の兄弟はそんな人々を率いてユダヤ人狩りから逃れていたが、やがて彼らを頼る人々が増えて、より森の深くへ移動し、家を建て共同社会を作っていく。

86点

1つ前へ一覧へ次へ
 実話の映画化。「シンドラーのリスト」(Schindler's List・1993・米)になぞらえて、1,200人のユダヤ人を逃がした兄弟の話などと書かれることもあるようだが、実際には自分もユダヤ人で、まるでモーゼのように1,200人ものユダヤ人を率いて迫害の地を逃れつづけ、終戦まで守り続けたという話。かつて長男の教師だった男が、最後に語るセリフが泣かせる。「私は自分の信仰を失いかけていた。しかし神は君を使わして下さった」。その前に別の男の葬式で「神よ、なぜ我々なのです。もう別の民にしてください」というようなセリフがあるだけに、これは強烈だ。

 兄弟を頼って来ていながら、やはり人数が増えれば不平を言う者もいるし、和を乱す者もいるし、悪事に走る者、怠けようとする者、いろんな者が出て苦労をする。しかも、食料はなくなるし、病人は出るし、妊娠する者はいるし、喧嘩もする。リーダーたる兄弟たちも本気で喧嘩し分かれてしまう。この辺がまたリアルで、人間くささを感じさせる部分。これを良くまとめて逃がし続けたなと。貧しい者もいれば、上流階級の人間もいる。靴屋も会計士も、教師もいる。子供も老人もいる。この人間模様。特にユダヤ人は商売上手で裕福だったため、力仕事ができない人も多い。

 ドイツ軍やドイツ軍に協力する警察を襲い、武器だけを奪い、女にも銃の撃ち方を教える。壮絶な殺し合いが描かれている。惨殺だ。女が仲間たちのためにマシンガンを撃ちながら死ぬ……。悲惨さの極みなのに、最後には希望を感じさせてくれる。ここがこの映画の凄いところ。エンディング・ロールで実際の人物の写真が出て、どうなったか知らせてくれる。彼らのおかげで生き残った人の子孫は数万人になるという。

 ところどころロシア語も交えながら長男トヴィアを演じたのは、ダニエル・クレイグ。007が合わないわけではないが、こんな感じの方が合っている気がする。TVムービーだが、「アークエンジェル」(2005・英)も舞台がロシアで、素晴らしいサスペンスだった。

 ビエルスキ家の次男ズシュを演じたのは、リーヴ・シュレイバー。ダニエル・クレイグよりロシア語が多かったと思うが、うまくこなしていたようだ。それらしく聞こえた。ボク的にはどうしても「スクリーム」(Scream・1996・米)シリーズのイメージが強くて、大作のイメージがないのだけれど、実際にはSFホラー大作「スフィア」(Sphere・1998・米)とか、シェークスピアを現代劇にはめ込んだ「ハムレット」(Hamlet・2000・米)などにも出ている。

 三男アザエルはジェイミー・ベル。傑作バレエ青春映画「リトル・ダンサー」(Billy Eliot・2000・英)でブレイクした若手俳優。1986年生まれだからまだ23歳。ハリウッド大作にも出ているが小さな役が多く、むしろ戦争ホラーの「デス・フロント」(Deathwatch・2002・英)が良かった。最近作は残念だった「ジャンパー」(Jumper・2008・米)。

 恩師ハレッツを演じたのはアラン・コーデュナー。コール・ポーターの半生を描いたミュージカル「五線譜のラブレターDE-LOVELY」(De-Lovely・2004・米)や、アル・パチーノの「ヴェニスの商人」(The Merchant of Venice・2004・米ほか)に出ていた人。TVの仕事が多いようだ。

 上流階級のお嬢様リルカを演じた美女は、アレクサ・タヴァロスというモデル出身の人。面白かったSFスリラーの続編「リディック」(The Chlonicles of Ridick・2004・米)で、リディックにあこがれている少女を演じていた。そしてバッド・エンディングのSFホラー「ミスト」(The Mist・2007・米)では虫に刺されてとんでもない顔になるレジ係役。美女はどこにいても目立つと言うことか。

 アザエルが恋する少女ハイアを演じたのは、1990年オーストラリア生まれのミア・ワシコウスカという人。バレリーナからの転身だそうで、スレンダーな感じが素晴らしい。日本公開作はほとんどないようで、公開を控えている作品が3作もあり、今後の活躍に期待したい。

 ゲットーの長老を演じていたのは、ゲスト出演的なマーク・マーゴリス。ちょっとB級ホラー的な匂いのする人で、最近は見ていないが「ファウンテン 永遠に続く愛」(The Fountain・2006・米)に出ていたらしい。ちょっと前だとイーストウッドの「目撃」(Absolute Power・1997・米)、数字にとりつかれた男を描いた「π」(Pi・1997・米)にも出ていたと。もっとよく見る気がするんだけど……。

 原作はネハマ・テクの1993年の「DEFIANCE: The Bielski Partisans」。兄弟と一緒に戦った人々にインタビューしてまとめたものらしい。それを脚本家のクレイトン・フローマンが監督のエドワード・ズウィックに話して映画化が実現することになったと、公式ページにあった。

 で、脚本はクレイトン・フローマンとエドワード・ズウィック。クレイトン・フローマンは過去に戦場カメラマンを描いた傑作「アンダー・ファイア」(Under Fire・1983・米)の原作と脚本を書いている。

 監督のエドワード・ズウィックは、プロデューサーでもあり、脚本も手がけている。特に「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米)は良かったし、その後のディカプリオの「ブラッド・ダイヤモンド」(Blood Diamond・2006・米)も良かった。しっかりとした芯のある作品。本作もそうだが、ストレートに感情が伝わってくる。

 公開2日目の2回目、銀座の劇場は前日に座席を確保しておいて、20分前くらいに着いたら、ちょうど終わるくらいで人が出てくるところ。ロビーで待って10分前くらいに開場となった。

 若い人も少しいたが、ほとんど中高年というか高齢者が多く、男女比は半々くらい。最終的に224席ほぼ満席となった。

 スクリーンはビスタで開いていて、入って間もなくちょっと暗くなって案内が上映されたが、明るくてよく見えない。さらにちょっと暗くなってCM・予告。遅れたヤツが前方の入り口から入ってくるとスクリーンに光が入って酷いことに。後ろから入れさせた方が良いのでは?

 同じ系列の劇場なので、「三国志」と同じ予告。同様にドルビー・デジタルの水のデモがあって本編へ。


1つ前へ一覧へ次へ