RocknRolla


2009年2月21日(土)「ロックンローラ」

ROCK N ROLLA・2008・英・1時間54分

日本語字幕:手書き書体下、松岡葉子/シネスコ・サイズ(デジタルビデオHDTV、Arriflex)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(英15指定、米R指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/rocknrolla/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

ギャングのボス、レニー(トム・ウィルキンソン)は、市議会議員まで抱き込み、あくどい地上げで大きな利益を得ていた。そしてロシア人の富豪ユーリ(カレル・ローデン)と新しい話を進めていた。そのころ、ホモの弁護士と結婚した会計士のステラ(タンディ・ニュートン)は、ユーリの会計を請け負い、入出金の情報が手に入ることから、浮気相手であるチンピラのワンツー(ジェラルド・バトラー)に強奪を持ちかける。ワンツーは相棒のマンブルズ(イドリス・エルバ)とドライバーのハンサム・ボブ(トム・ハーディ)に声を掛け、まんまと現金を奪う。さらに同じ頃、レニーの義理の息子、ロック・ミュージシャンでジャンキーのジョニー・クイード(トビー・ケベル)は、レニーがユーリから預かっていた名画を盗み出し、ドラッグを買う資金にしようとしていた。そんな時、ユーリはあらたに資金を用意すると、強力なガードマンを雇い、さらにレニーに絵を返してくれと迫る。レニーは絵を取り戻すよう、右腕のアーチー(マーク・ストロング)に命令を下す。

71点

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 暴力、流血、汚い言葉、だまし、裏切り、ドラッグ、ホモ……などでできている映画。こまかなエピソードが次第につながっていく感じや、最後のどんでん返しなどは見事だが、見ていてどうにも気分がよろしくない。汚い汚れた部屋に閉じ込められていたような感じ。誰が主人公と言うよりは、男たちの群像劇に近く、女性はどうにもSEXの対象として以外は認められていないようで、存在感が薄い。そして全体の印象はほとんど「ロック、ストック&トゥー・スモーキン・バレルズ」(Lock, Stock and Two Smoking Barrels・1998・英)と同じ。

 それにしても、このリアル感。本当の裏社会というのがどうなのか知らないが、こうなのではないかと思わせる説得力がある。ジャンキーなんて、ヤクでハイになったり、前後も考えず感情のままに人を鉛筆でめった刺しにしたり、禁断症状なのか突然えづいてよだれを流してけいれんしたり……あまりにリアル(な感じ)。この監督の経験のような気がする。そしてこの暴力、汚い言葉遣い、それもイギリスなまりというかイギリス式発音の独特の雰囲気。怖い。この監督も怖い。

 冒頭、出演者がカメラに向かって話すのは、わざとらしく、ミュージカルのような印象でどうかと思うが、同じガイ・リッチー監督の暴力映画「リボルバー」(Revolver・2005・仏/英)よりは何倍も良い。音楽がロックになるとやたら大きくなるのは、不快さを感じさせるための演出なのか。確かに不快だったけど。そして突然スロー・モーションになったり、スピード・アップしたりもガイ・リッチーらしいと言えばらしい。ブラックな笑いを所々にまぶしているのもらしい。スゴイ絵は、カメラが車の中にあって、横からトラックにぶつけられるシーン。本当にカメラごとぶつけられている感じ。リアルだ。どうやって撮ったんだろう。そして小型カメラを銃や体の近くに固定してのショットも、きわめてテレビっぽいが、面白い。暗いシーンでの画質も良く、ひょっとして思ったら、案の定、HDTVだった。

 タイトルはイラスト風でなかなか良い感じ。タイトル・デザイナーはダニー・ユントという人。ニコール・キッドマンのホラーSF「インベーション」(The Invation・2007・米)のエンド・クレジットも手がけているらしい。

 ジャンキーのロックンローラーはリボルバーを持っているが、1挺は実銃ソックリのライター。ロシアの元軍人らしいターミネーターのような2人の用心棒はAKS-74Uと大きなサバイバル・ナイフで武装。しかも防弾チョッキ着用。アーチーはFNハイパワーを持っている。アーチーの部下はベレッタのM84にサイレンサーを付けていると思ったら、imfdbによると22口径のM87らしい。

 監督と脚本はマドンナと離婚したガイ・リッチー。裏社会と暴力をテーマとした作品しか作っていない気がする。作風なのか、興味がないのかもしれないが、それ以外は撮れないとか……でも「シャーロック・ホームズ」が待機中というから、お手並み拝見というところか。

 チンピラのワンツーを演じたのはジェラルド・バトラー。「幸せの1ページ」(Nim's Island・2008・米)はガッカリだったが、「300〈スリーハンドレッド〉」(300・2007・米)は同一人物とは思えないほど良かった。注目されたのは「オペラ座の怪人」(The Phantom of the Opera・2004・米/英)からだったろうか。

 ボスのレニーを演じたのはトム・ウィルキンソン。以前は会社の重役とか神父の役なんかが多かった気がするが、最近はどうも悪い役が増えてきたようだ。実際には本作のようにはげ上がっていないと思うが、役作りだろうか。ちょっと前に男性スリップ映画「フル・モンティ」(The Full Monty・1997・英)に出ていたし、最近は「エミリー・ローズ」(The Exorcism of Emily Rose・2005・米)で悪魔払いをする神父、そしてジョージ・クルーニーの「フィクサー」(Michael Clayton ・2007・米)では突然、クライアントの前で突然服を脱ぎ出す弁護士を演じていた。しかし、今回のように根っからのワルで、怖い役は初めてでは。かなり怖かった。さすがベテラン俳優、うまい。

 その右腕アーチーを演じたのはマーク・ストロング。イギリスの俳優さんなので、ガイ・リッチーの残念な「リボルバー」にも出ている。最近は「ワールド・オブ・ライズ」(Body of Lies・2008・)でキレものの恐ろしいヨルダン情報庁GIDの長、ハニ・サラームを演じていた。もっと痩せている印象があったが、そうでもなかったんだ。うまい。

 女性会計士ステラを演じたのはタンディ・ニュートン。トム・クルーズの「M:I-2」(Mission: Impossible II・2000・米)で相手役に抜擢された人。傑作群像劇「クラッシュ」(Crash・2004・米)でTVディレクターの妻を演じていた。

 音楽プロモーター2人組みの1人ローマンを演じていたのは、ジェレミー・ピヴェン。「スモーキン・エース暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2006・米)の悪党マジシャンを演じていた人。「キングダム/見えざる敵」(The Kingdom・2007・米)で大使館の主席公使もやっていた。

 ロシア人の富豪ユーリはカレル・ローデン。ロバート・デ・ニーロの傑作アクション「15ミニッツ」(15 Minutes・2001・米)でアブナイ外国人を演じた人。半端ではない怖さ。本作でもそれが生きている。ロシアの富豪という設定だが、マフィアのように怖い。

 ジャンキーのロックンローラー、ジョニー・クイードはトビー・ケベル。とにかくクスリでイってしまった感じが素晴らしい。インチキ臭い感じも抜群。この人は凄い。イギリス生まれで、なんと27歳。TVの活躍が多かったようだが、今後の活躍に期待したい。要マーク。

 公開初日の3回目、20分前くらいに着いたら、ロビーには10人くらいの人。15分前に入れ替え入場となって、受付番号順での入場。全席自由席。最終的に232席の3割くらいが埋まった。まあ、こんなもんでしょ。8割くらいは20〜30代の若い人。カップルも多かった。男女比は半々。

 何回かのアナウンス後、徐々に暗くなり、はじまった予告で気になったものは……キーラ・ナイトレイが王室に嫁ぐ18世紀の貴婦人を演じる「ある公爵夫人の生涯」は、ほとんどダイアナ妃と同じような話。コピーに「歴史は繰り返す」と出る。うむむ、これは見てみたいかも……劇場がちょっと……。

 ユマ・サーマンの「ダイアナの選択」は、予告では内容がほとんどわからなかったが、高校で男がMP5を乱射、親友同士の女の子2人も標的になるが、犯人が「どっちを殺す?」と聞いたことから人生が狂ってしまうらしい。ただ、劇場がなあ……。

 日本のコミック「西洋骨董洋菓子店」を映画化した韓国映画「アンティーク」は韓国で大ヒットしたらしい。日本では、劇場が……。


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