Seven Pounds


2009年2月22日(日)「7つの贈り物」

SEVEN POUNDS・2008・米・2時間03分

日本語字幕:手書き書体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/sevenpounds/
(音に注意。入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

ベン・トーマス(ウイル・スミス)は、あるリストに従って電話をし調査していた。盲目のピアニストや、家のない母子……やがてベンは家を出てモーテルに移り、心臓の弱い女性エミリー・ポーザ(ロザリオ・ドーソン)のことを調べ始める。さらに親友のダン(バリー・ペッパー)を呼び、必要になったら必ずやってくれと頼む。同じ頃、ベンの弟(マイケル・イーリー)は兄の後を追っていた。一方、自分のことを調べているベンに気付いたエミリーは彼と直接話をし、国税庁の税金徴収係であることを知り、やがて心を開いていくが、心臓の発作が起き入院してしまう。

73点

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 クライマックス・シーンから始まって、そこへ収斂していく物語。良くあるパターン。さっぱりわけがわからないが、ラストにそれがわかるようになっている。非常に感動的で、ショックでもある。やられた。

 ただ、長い。1つのネタで2時間は長い。ヒネリが1つでは90分がせいぜいだろう。途中はほとんど新しい進展が何もなく、退屈。ちょっと気を失いそうになった。しかも救急車を呼ぶシーンから始まるわけで、このオチは予想が付く。

 しかし、なぜなのかという理由がわからず、2時間掛けてそれが明らかにされる。そして、その理由に納得できるかというと、これは異論もあるだろう。とくにキリスト教では自殺を禁じているわけで、アメリカなどではなおのことだと思う。究極の選択ではあるけれど。

 結果論かもしれないが、つねに主人公のベンが悲しい顔をしているのは、良かったのだろうか。そういう心境であることは間違いないが、逆にいつも朗らかで明るい人だったらどうだっただろうか。たとえば妻のことを思い出す時は笑顔を失うが、人といる時はいつも笑顔だったら、より悲しみが伝わってきたのでは。最初から悲劇の顔をして、悲劇を語られても……。

 ちなみに原題の7ポンドは、監督のインタビューによるとシェークスピアの「ベニスの商人」のペナルティの1ポンドの肉から取っているらしい。7人だから7ポンドか。

 使っていたパソコンはソニー/コロムビアなので当然バイオ・ノート。アメリカの国税庁はIRSというらしい。さらに主人公が飼っているハブクラゲは沖縄や奄美に生息する有毒のクラゲで、刺されると死亡することもあるのだとか。大型犬はダレート・デーン。2人での食事の後、エミリーがかけたレコードの曲は……シャルル・アズナヴールの“フォー・ミー・フォーミダーブル”(For Me Formidable)。

 主演は、本当は明るいキャラのウィル・スミス。「ハンコック」(Hancock・2008・米)は残念だったが、「幸せのちから」(The Pursuit of Happyness・2006・米)は感動的だった。当たりもあれば外れもある。

 エミリーはロザリオ・ドーソン。「メインイン・ブラック2」(Men in Black II・2002・米)でヒロインを演じていた人。これでウィル・スミスと共演している。その後ミュージカルの「RENTレント」(Rent・2005・米)でヤク中のダンサー、ハード・アクションの「シン・シティ」(Sin City・2005・米)でも怪しげな役で、タランティーノのB級ムービー「デス・プルーフinグラインドハウス」(Quentin Tarantino's Death Proof・2007・米)でもヘンな役だった。やっと本作でまともな役に。

 盲目のピアニストはウディ・ハレルソン。オリバー・スチーンの「ナチュラル・ボーン・キラーズ」(Natural Born Killers・1994・米)の大量殺人鬼を鬼気迫る感じで好演した人。つい最近も「ノーカントリー」(No Country for Odl Man・2007・米)で殺し屋を演じていた。本作では真反対の気の弱そうな良い人。うまい。

 ベンの親友を演じたのはバリー・ペッパー。スピルバーグの「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)でサウスポーのスナイパーを演じていた人。感動作「グリーンマイル」(The Green Mile・1999・米)では再びトム・ハンクスと共演し若い看守を演じていた。トミー・リー・ジョーンズが監督した「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」(The Three Burials of Melquiades Estrada・2005・米/仏)では、あやまって人を殺してしまう国境警備隊員を演じていた。この人もうまい。

 脚本はグラント・ニーポート。2001年頃からTVの脚本を手がけ、本作が劇場映画初作品らしい。

 監督はイタリア生まれのガブリエレ・ムッチーノ。「幸せのちから」の監督だ。この人は暗い人なんだろうか。本作はもちろん、「幸せのちから」も底に悲しみが流れているような気がする。

 公開2日目の2回目、前日に席を確保しておいて、20分前くらいに着いたら、新宿の劇場はまだ開場していなかった。10分前くらいに開場。ビスタで案内を上映中。若い人がやや多い感じ。男女比はほぼ半々。最終的には232席の7割くらいが埋まった。遅れてくる人が多く、暗くなっているので、どのくらい入ったのか確認しづらい。

 ほぼ暗くなって始まった予告は……ジム・キャリーの新作、上下マスクの「イエスマン」は、何にでもイエスといえば人生が変わるというコメディらしい。ジム・キャリーの明るさで、なかなか面白そう。

 間もなく公開のトム・クルーズの「ワルキューレ」は、とにかく子役がめちゃくちゃカワイイ。遺族がトム・クルーズはちっとも似ていないとか言っているんだとか。別に物まねじゃないんだから、関係ないと思うが……。

 上下マスクの「ベッドタイム・ストーリー」は、日本語吹替での予告。どうにもTVのような感じがして、オジサンはなじめない。要するに父親が話して聞かせる寝物語なのだが、子供たちに話に参加させたことでめちゃくちゃな展開になって、というお話らしい。最大の心配点は、主演がアダム・サンドラーだということ。残念ながらこの人は日本では受けない。本作はどうなのか。楽しそうではあった。

 スクリーンがシネスコになって、いよいよ「ターミネーター4」の予告。今度は戦争映画のよう。主演のクリスチャン・ベールが良い感じ。ちょっと「マッドマックス」(Mad Max・1979・豪)のような感じと、ラストの「トランスフォーマー」(Transformers・2007・米)ような感じが気になるが、「チャーリーズ・エンジェル」(Charlie's Angels・2000・米)の監督なので、ツボは押さえるかなと。

 「ダ・ヴィンチ・コード」(The Da Vinci Code・2006・米)の続編らしい「天使と悪魔」はさっぱり内容がわからない。「ザ・バンク 落ちた虚像」は、ハードなアクションもののようだが、クライヴ・オーウェンが撃っているところが、あり得ない仰天アクションの「シューテム・アップ」(・2007・米)とそっくりでイヤな感じだが、ナオミ・ワッツが出ているし、監督も「ラン・ローラ・ラン」(Lola Rennt・1998・独)や「パフューム ある人殺しの物語」(Perfume: The Story ・2006・独ほか)のトム・ティクヴァなので、酷いことにはならないと思うが……。


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