Australia


2009年2月28日(土)「オーストラリア」

AUSTRALIA・2008・豪/米・2時間46分(IMDbでは165分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー、dts(IMDbではドルビーデジタル、dts、SDDS)

(豪M指定、米PG-13指定)

公式サイト
http://movies.foxjapan.com/australia/
(全国の劇場案内もあり)

1939年、ロンドンにいた貴婦人のレディ・アシュレイ(ニコール・キッドマン)は、オーストラリアの農場へ行ったままもどらない夫を連れ戻すため、単身オーストラリアの領地“ファラウイ・タウンズ”へ乗り込む。しかし、到着してみると屋敷は荒れ果て、夫の他殺死体が発見されたところだった。町を牛耳っているカーニー(ブライアン・ブラウン)とつながっていた使用人の牧童頭フレッチャー(デヴィッド・ウェンハム)が、牧場の無印の牛を密かに対岸のカーニーの牧場へ移していたことが判明する。さらに夫殺ろしの犯人は、白人に怨みを持つ原住民のアボリジニまじない師キング・ジョージ(デヴィッド・ガルピリル)だということだった。しかし、黒人の使用人デージー(ウルスラ・ヨヴィッチ)にフレッチャーが生ませたハーフの息子、ナラ(ブランドン・ウォルターズ)は、夫を殺した槍の秘密を知っていた。そしてナラはキング・ジョージの孫でもあった。レディ・アシュレイは牧場をカーニーに売り渡すか、1,500頭の牛を遠く離れた港町のダーウィンまで運んで売るかの選択を迫られる。

76点

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 いかにも作った物語という感じがする展開だが、素晴らしいオーストラリアの大自然と、美男美女、そしてカワイイ少年、名曲にやられた。出会いと別れ、そして旅立ち。感動して、ちょっと涙が……。

 素晴らしいのは、キャトル・ドライブ(牛追いの旅)のパート。それをやらなければならなくなる前振りの部分と、妨害を受けながら旅を続けていく部分と、最後に出し抜いて牛を納品する部分が、それぞれに面白い。実際にはもっと困難が多いのだろうけれど、なんだか登場人物と一緒に旅をしているような気分になった。

 ほとんど西部劇。カウボーイ、ガン・ベルト、銃、荒馬、美女、酒、ケンカ、荒野、牛、スタンピード、投げ縄、悪党、原住民……。舞台が1939〜1941年で、オーストラリアというだけ。2時間46分、その世界を堪能できる。悪いやつは徹底的に悪い。

 たしかオーストラリアはわりと最近まで白人しか永住権を取れないとかいろいろあって、原住民のアボリジニを不当に差別してきたわけで、それはほんのちょっとしか描かれていない。一説には30万人いたアボリジニが6万人までに減少したともいわれており、映画でも「白人同化政策で『盗まれた世代』と呼ばれる人々がいて、2008年に政府は誤った政策を認め正式に謝罪した」と出る。ただ、リアルには描けなかったのだろう。

 同様に日本軍の侵略も描かれているが、ほとんど嵐や地震のような天災的扱い。日本人観客の目を意識したのかもしれない。ただアボリジニの問題とも考え合わせると、やはり、オーストラリアを舞台とした西部劇を作りたかったのではないかという気が強くする。

 しかし、それらについても触れたという点で、この作品はオーストラリア映画として新たな第一歩を踏み出したと言ってもいいのかもしれない。ここからオーストラリア映画は変わっていくかもしれない。ただ、タイトルを「オーストラリア」と大きくしてしまったことが、見る側にも構えさせることになってしまったのではないだろうか。もう少し卑近なタイトルにすれば良かったのに。

 ニコール・キッドマンとドローヴァー(牛追い)役のヒュー・ジャックマンは、みごとなオーストラリア出身の世界的スター。ほかに有名なオーストラリア人俳優というと「クロコダイル・ダンディー」("Crocodile" Dundee・1986・豪)のポール・ホーガン、「マッドマックス」(Mad Max・1979・豪)のメル・ギブソン(生まれは米だが豪で育つ)、「ベンジャミン・バトン数奇な人生」(The Curious Case of Benjamin Button・2008・米)のケイト・ブランシェット、「シャイン」(Shine・1995・豪)のジェフリー・ラッシュ、「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米)のエリック・バナあたりだろうか。

 敵役のフレッチャーを演じたのは、オーストラリア出身のデヴィッド・ウェンハム。「ムーラン・ルージュ」(Moulin Rouge!・2001・米)で、バス・ラーマン監督とニコール・ギッドマンとも仕事をしている。ヒュー・ジャックマンとは「ヴァン・ヘルシング」(Van Helsing・2004・米)で共演している。他に有名な作品では「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」(The Lord of the Rings: The Two Towers・2002・米ニュージーランド)シリーズ、「300〈スリーハンドリッド〉」(300・2007・米)などがある。コミカルで軽い役から、本作のような憎たらしい役までうまくこなすあたり、ただ者ではない。

 実力者カーニーを演じたのもオーストラリア出身のブライアン・ブラウン。特殊効果の舞台裏を描いた「F/X引き裂かれたトリック」(F/X: Murder by Illusion・1986・米)で特殊効果係を演じていた人。最近はTVの仕事が多かったようだが、久々の大作だったのでは。

 アボリジニのまじない師キング・ジョージを演じたデヴィッド・ガルピリルは、結構前から映画に出ているようで、「クロコダイル・ダンディー」ではポール・ホーガンと共演している。ハーフの息子、ナラを演じたブランドン・ウォルターズは、オーディションで1,000人くらいから選ばれたらしい。本作がデビュー作になる。本編上映前、オーストラリアへおいでよのCMに出ていたような。

 監督も、もちろんオーストラリア出身のバス・ラーマン。長編劇場映画デビュー作「ダンシング・ヒーロー」(Strictly Ballroom・1992・豪)が高く評価され、次作でハリウッド・デビュー。それがボクはあまり好きではないが「ロミオ&ジュリエット」(Romeo + Juliet・1996・米)。その後により芝居がかった感動作「ムーラン・ルージュ」(Moulin Rouge!・2001・米)を撮っている。元は舞台の人らしく、舞台的な演出がこの人の味なのだろう。そんな中にあって、本作はあまり舞台を感じさせない作品だった気はする。

 ちなみに、カウボーイたちは腰にガンベルトで、リボルバーを携えアメリカの西部劇スタイル。ドローヴァーが使っていたライフルはウインチェスターのハイパワー・レバー・アクション、M1895。これはなかなか珍しい。日本軍は三八式歩兵銃と、ジャムしていたのは十四年式拳銃。オーストラリア軍はもちろんリー・エンフィールド・ライフル。武器係はなんとジョン・ブローニングという名の人。有名な銃器発明家ジョン・M・ブローニングの名前に似ている。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由ということで、45分ほど前に着いたら窓口には17〜18人の行列。女性は5〜6人。ほぼ中高年。35分前くらいに窓口が開いて、前売り券を当日券と交換して、地下へ。25分前くらいに開場。スクリーンはフルに開いていた。

 最終的に654席に4割くらいの入り。意外に少なかった。若い女性が増えて、男女比は逆転して4対6くらいに。ただ女性が多いと、おしゃべりがうるさい。予告が始まってもしゃべっていることが多い。

 予鈴のあとアナウンスがあって、本鈴。やや暗くなって、ビスタ・サイズで予告。気になったのは……「ドラゴンボール」は新バージョンに。ただネクスト・イヤーって言っていたが。ケイト・ウィンスレットがアカデミー賞を獲得した「愛を読む人」は内容がよくわからなかった。ただ、暗く沈んだ感じはわかった。

 CIA vs MI6というジュリア・ロバーツの「デュプリシティ」はコメディなのかシリアスなのかもわからなかった。ただクライヴ・オーウェンとポール・ジアマッティという組み合わせは、あのあり得ない銃撃戦の「シューテム・アップ」(Shoot'em Up・2007・米)を彷彿とさせて、どうもイヤだなあと。でも前売りを買うと電卓付きボールペンがもらえるらしい。

 予告のあと、マナーを歌で訴求するのはアリだなあと。受け入れやすい。スクリーンがフルに広がってドルビーの機関車デモのあと、左右マスクで「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」。どうしてもオーウェン・ウィルソンがコメディに出ていると痛々しくて……。


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