Yatter Man


2009年3月8日(日)「ヤッターマン」

2009・日活/日本テレビ/タカラトミー/松竹/バップ/読売テレビ/文化放送/ジェイ・ストーム/ホリプロ/オー・エム・エル/竜の子プロダクション/STV/MMT/SDT/CTV/HTV/FBS・1時間51分

シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル



公式サイト
http://www.yatterman-movie.com/
(重い。ポップアップウィンドーをOKにしないと表示不可。全国の劇場案内もあり)

4つに分かれて世界中に散らばってしまった伝説のドクロストーン。すべてを集めると願いが叶うという。泥棒の神様ドクロベエ(声:滝田順平)は、手下のドロンジョ(深田恭子)とボヤッキー(生瀬勝久)、トンズラー(ケンドーコバヤシ)を使い、それらを集めさせていた。しかし、高田玩具店の一人息子ガンちゃん(櫻井翔)とガールフレンドの愛ちゃん(福田沙紀)は、1週間に1度、正義のヒーロー、ヤッターマン1号、ヤッターマン2号に変身し、父が残してくれた犬型大型ロボットのヤッターワンを使って、ドロンジョたちの陰謀を打ち砕いてきた。そんなある日、ドクロストーンの1つをに入れ、二つ目を探しに行って行方不明になった海江田博士(阿部サダヲ)の娘、翔子(岡本杏理)が、父を捜して欲しいと高田玩具店にやってくる。

73点

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 一言でいえば、実写版のアニメ。まちがいなく「タイムボカン」だ。荒唐無稽、大げさ、おふざけ、やり放題、ドタバタ、ナンセンス、H(エッチ)……でも、それが面白い。とにかく良かったのは深田恭子。素晴らしい。色っぽくて、かわいくて、一生懸命やっていて健気。全体にばかばかといことを、いい年をした大人たちが一生懸命にきちんと作った感じ。特にその苦労が垣間見えてしまうわけではないけれど、手を抜いたり、いい加減に作ったお手軽ものではないと。

 次に良かったのは3D-CG。合成も見事で、あり得ない映像がごく自然に作られている。これはお金がかかっただろう。そして、その他にもセットが良くできていて、CGと 自然につながって融合している。実物大のヤッターワンも作られているようだし。新橋駅前のSLが移動してその下から犬型ロボットのヤッターワンが飛び出していくのは笑った。街もすべてキチンと作り込まれている。渋谷なんか地面は砂利道(みたい)だし、オジプトのスフィンクスは招き猫だし。(DVDというかブルーレイが楽しみ)

 しかも、構成がTVと同じで、ファンの期待を裏切らない。「毎週」というセリフもあるし、ちょうど30分番組が3つくっついたような感じ。ラストには感動も用意され、おちがあって、来週の予告までが……。かなり下ネタというか、エログロなので、子供にはどうかという気がしないでもないが、オリジナルも結構Hなところはあったし、子供もこのくらいはかえって面白がるというもの。しっかり作っているから大人でも楽しめる。

 ボク的には「ヤッターマン」よりも「タイムボカン」で、構成は同じだが、マージョとワルサーと、グロッキーだなあ。そしてダイナモンド。ポチッとなとか、お仕置きだべえ、やっておしまい、それと必ず失敗する「今週のハイライト」。この辺は共通。でもタイムマシンというのも面白かった。「タイムトンネル」みたいにいつも違う時代に行き、ちょっと勉強にもなった。

 アニメではあまり存在感のないヤッターマンの1号と2号。1号の櫻井翔は嵐のメンバーで、ニュース・キャスターも務めるアイドル。2号の福田沙紀は「クイズ!ヘキサゴンII」で注目されるが、最近は女優に絞っている模様。ただ2人とも本作のメインではなく、衣装もそれほど目立つものではないので、地味な印象。

 とにかく目立っていたのはドロンジョの深田恭子。声も甲高めで、心なしかアニメの小原乃梨子に似ていた。露出の多い革のボンデージ風ファッションがなかなかエロティックで、アニメのようにこの人が主人公と言っても過言ではない感じ。TV 中心の活動だが、ロリータ・ファッションで登場した「下妻物語」(2004・日)や「犬神家の一族」(2006・日)など劇場作品にも出ている。歌と踊りもイケてる。

 ボヤッキーの生瀬勝久はどうしてもTVの「トリック」の刑事役のイメージが強いが、本作のボヤッキーにぴったり。非常に良い感じ。「20世紀少年」(2008・日)にも出ているが、あれはオールスター・キャストのようなものなので……。

 トンズラーのケンドーコバヤシは、悪くはないけれど、もっとゴツゴツして野暮ったい感じの人がいたような気がする。アニメのイメージとはちょっと違うか。やっぱり井筒和幸監督の「パッチギ!」(2005・日)が良かった。

 海江田博士は阿部サダヲ。TVの他に多くの劇場作品に出ている。強烈だったのは「舞妓Haaaan!!!」(2007・日)で、本作はそのイメージに近い。

 その娘、翔子は岡本杏理。ファッション・モデルで女優としても活躍しているが、なんと1994年生まれの15歳。結構アブない格好をさせられているので、ファンは必見かも。

 「どくろ鮨」のシーンのゲスト出演で、アニメ版のドロンジョの声優、小原乃梨子とトンズラーのたてかべ和也、アニメ・シリーズ総合監督の笹川ひろしが出演している。これもビックリ。

 監督は「ゼブラーマン」(2003・日)の三池崇史。極道系が多いイメージがあるが、いろんな作品を撮れる職人監督。サイコ・スリラーの「オーディション」(2000・日)、ホラーの「着信アリ」(2004・日)、少年アドベンチャー「妖怪大戦争」(2005・日)、西部劇の「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(2007・日)、SFの「神様のパズル」(2008・日)などなど、実に多彩だ。しかも、どれも面白いのだからスゴイ。この人に撮れないものなどないのだろう。それにしても、年間3本くらい撮っていて、撮りすぎではないかと思うほど。才能はとどまるところを知らない。

 脚本はこれまでTVアニメが多かった十川誠志。実写の劇場映画では「交渉人 真下正義」(2005・日)や「少林少女」(2008・日)を手がけている。「少林少女」は不安材料だったが、本作はTVアニメの経験が生かされたのではないだろうか。

 素晴らしい美術は林田裕至。上戸彩の「あずみ」(2003・日)や滝田洋二郎監督の「阿修羅城の瞳」(2005・日)などの時代物で素晴らしいセットを提供してきた。CGアニメのような「CASSHERN」(2004・日)や「GOEMON」(2008・日)はいいのかどうかよくわからないが、普通の映画での活躍は期待できそう。

 CGIディレクターは太田垣香織。「ゼブラーマン」、「妖怪大戦争」「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」で三池崇史監督と仕事をしている。合成したことをあまり感じさせないのが素晴らしい。「神様のパズル」のCGも良かったなあと思ったら、そのCGIプロデューサー坂美佐子は本作にもCGIプロデューサーとして参加していた。

 公開2日目の初回、前日に座席予約しておいて、20分前くらいに着いたら銀座の劇場はちょうど開場したところ。下は幼稚園児くらいから、高齢者まで、かなり幅広い客層。ただ、意外にも中高年がメインだった。やはりアニメの「タイムボカン」をリアルタイムで見ていた世代か。男女比はだいたい半々くらい。

 スクリーンはビスタで開いていて、6〜7分前から案内を上映。最終的に2F席は5.5割くらいが埋まった。朝がちょっと早いので、こんなものだろうか。

 気になった予告編は……上下マスクの「ハリー・ポッターと謎のプリンス」は、新バージョンというか、メイキングを含めた予告に。これもなかなか面白い。

 上下マスクの「お買い物中毒な私!」は、ちょっと自分の優柔不断なところも見ているようで、不快さを覚えた。笑えると言うより、あるよなあという共感もあって情けなくなった。公式サイトはない模様。

 CG劇画といった感じの上下マスク「GOEMON」は新バージョンの予告になったが、ますます「CASSHERN」(2004・日)に似ている気がしてきた。ローマ字表記というのもなあ……無国籍、無時代ということか。だったら実在のものとかをベースにしなければいいのにとも思う。

 上下マスクの「ベッドタイム・ストーリー」は日本語吹替での予告。評判は良かったが、予告を見るに付け期待が持てなくなってきた。

 スクリーンがシネスコになって、左右マスクの「鴨川ホルモー」は、おふざけ映画のようだが、予告を見ると面白そう。「カムイ外伝」はさすがにシネスコの予告は迫力があった。


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